営業研修の録画
覚書
・ 研修の様子を撮影した動画
・ 研修担当者から「この鉛筆を100万円で売るにはどうしたらいいか考えてください」というワークのテーマが伝えられ、10分後。各自の発表の様子が記録されている
・ 映像に写っている山本陽平氏と同姓同名の社員は弊社に在籍するものの、現在休職中
営業二課所属、山本陽平です。よろしくお願いします!
(画面にはスーツを来た笑顔の男性が一人映し出されている。画面外から複数名による拍手)
さて、この何の変哲もない鉛筆を100万円で売る方法ですが、私はやはり、付加価値をつけることだと思います。
(山本氏は手に持った鉛筆を他の学生達に見えるように持ち上げる。何の変哲もない鉛筆はよく削られており先が鋭利に尖っている)
また……課題にはありませんでしたが、「私」から買っていただかないと意味がありません。でないと私の営業成績になりませんから(笑)
(画面外からは控えめな笑い声)
さて、そうなると。この鉛筆を100万円の価値にできる、私にしかつけられない付加価値をつける、が答えになるのかな、と思いました。
では具体的にどういう付加価値をつけるのか?100万円は大金です。かなりの価値じゃないと払ってもらうのは難しいでしょう。
一方で、万人受けする価値である必要はないと思います。ニッチでも、買ってもいい、と思う人が必ずいる付加価値。そこで私が考えたのが、こんな内容です。
この鉛筆を100万円で買っていただくと――なんと!
(山本氏はA3サイズの模造紙を取り出し、カメラに移るように掲げる。そこには以下で山本氏が読み上げた内容と同一の文章がマジックペンで書かれている)
「この鉛筆で、私の体を自由にする権利を得られる」です!
(ざわつく会場)
――あ、もちろん、自由にっていうのは、この鉛筆を使ってできる範囲のことですよ(笑)じゃないと鉛筆を売る、ということと関連性がなくなってしまいますから(笑)
これだけではよくわからないと思いますので……少し、実演してみますね。買った鉛筆でやっていただけるのは、こんな感じのことです
(山本氏は、鉛筆を持ち上げると、鋭利な先端を自らの左目に突然突き刺した。ぐちゅり、という音とともに会場内から悲鳴が上がる。山本氏は鉛筆を目に刺したまま、笑顔で話し続ける)
――皆さんは、考えたことないですか?
私はあります。子供の頃から、削ってぴんぴんに尖らせた鉛筆を見るたびに、考えていました。
これを目に突き刺したらどうなるんだろう?血が出るのか、出ないのか? 刺した感触ってどんな感じなのか?
鼻の穴には、喉にはどこまで入っていってしまうのか!?
胸を本気で刺したら心臓まで届くのか!?
――誰でも考えたことありますよね?
そんな素朴な疑問を解消できる権利! そんな貴重な機会が得られる鉛筆、一本100万円です!
(山本氏は鉛筆を目から引き抜き、再び同じ場所へと勢いよく突き刺す。ぐちゃりという音が録音されている。目からは血が流れ出すが山本氏は笑顔のままである。
数回、先端を目に突き刺した後、赤く染まった鉛筆を鼻の穴に突っ込む。鉛筆の先端が鼻翼を突き破った。
画面外からは悲鳴と、ガタガタと椅子?が倒れる音、逃げ出す足音などの音声)
大丈夫です。大丈夫です。私はぜんぜんだいじょうぶです――私の発表は、以上です。
(映像はここでとぎれている)
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