異世界転生妖怪譚~美少女妖怪たちが御馳走(オレ)を食べようとヨダレ垂らしておしかけてきます!!って、そこ!耳をはむはむするな!!~

ハチシゲヨシイエ

第1話 俺を舐めるな!

「俺を舐めんじゃねえ!!!!!!」


高校生の貴家与一(さすがよいち)は怒鳴った。


つまり俺だ。俺はブチギレた。


朝目が覚めると、俺の服を脱がして全身を舐め回している女がいたからだ。


女、正確には女妖怪である。


「あかなめ!!いい加減にしてくれ!毎朝毎朝!人の身体をなんだと思ってるんだ!」


「えへへへへ、もちろん御馳走ですよ」


あかなめと呼ばれた女妖怪は、天使のような笑顔で答えた。真っ赤な舌をぺろんと出して。


ババババババババアーーン!!!!


ーーーー《垢嘗(あかなめ)》ーーーー


垢舐(あかねぶり)とも呼ばれている。文字通り人間の「垢」を舐めまくる妖怪。目は丸く、舌を伸ばすことができる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「誰が御馳走だ!!俺は貴家与一、普通の男子高校生なんだよ!普通の男子高校生を朝から舐めるな!俺の性癖こじらせる気か!?」


「ご謙遜を!普通どころか、最高の男子高校生です!」


「よだれ垂らしながら言うな!」


そう。



俺はどうやら、妖怪たちにとって、最高の存在らしい。



この異世界最高の高僧、鸞海寺・天澄上人の末裔に転生した俺の身体は、前の世界で言うところの、A5ランクの黒毛和牛の希少部位、流れる血は、10億に値する希少ワイン、ロマネ・コンティに匹敵するんだとか。


しかも食べたら、空腹時に食べるカレー並みに美味いらしい。価値も桁外れで味もバツグン。


みんな俺のことを食おうとしている。




本来なら俺はとっくのとうに、妖怪どもの胃袋のなかで暮らしていただろう。


しかしそこは異世界。


転生した俺が手に入れたスキル『鋼鉄の処女(アイアン・メイデン)』のおかげで俺は今も平和に暮らせている。



常時スキルは発動しており、俺の身体は、他人による、肉体への一切の攻撃を寄せ付けない。


難攻不落、鉄壁ボディなのだ!!!



「毎朝毎朝、俺を舐めに来ないでくれ本当に!」

「そんなひどいこと言わないでください!こちとら1日だって我慢できません!」

「勝手なこと言うな!」


妖怪にとって、人間は、徳の高いものほど美味いらしく、聖人の末裔である俺は、舐めるだけでも最高に美味いらしい。


ギィイイイ。


「あ、おまえたち」



扉の方を見ると、あかなめと同じ妖怪たちがずらりと立っていた。



「あかなめ、毎朝毎朝抜けがけしおって。ろくでもない奴だなお主は」


そういって、狐耳の黒髪美女が俺の部屋に入ってきた。


彼女の名前は、九尾の狐・玉藻。


「せやで。与一はみんなのモンなんやから。ルール破るなら殺すで?ハッハッハッ」


そう笑顔で脅迫する鬼女は、酒呑童子。


「いや、次はないと昨日言った。殺そう」


殺気を漂わせている虎柄の女妖怪は、鵺。



「おまえらさ」



俺のこめかみがぴくつきだして、美少女妖怪たちはおののいた。


「人んちに勝手に入ってくるんじゃねえええ!!!!!!!!!」



ーーーこれは、平凡に暮らしたい俺と、俺を食べたくてせまってくる美少女妖怪たちとの、奇妙な毎日の物語である。

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