うざがり少年と泣き虫兄さん

猫本

第1話 「クロウ博士」と「クク」

 地球からだいぶ離れた場所にある、小さな星。

小さいと言っても、100人くらいは住めそうな星に、たった1人で暮らしている研究者が俺。


きちんと整っている黒くて短めの後ろ髪。人に目を見られるのがうざったいと思い伸ばしてもらった前髪。左腕に青いリボン。

白いシャツに黒いズボン。そして、いかにも研究者な白い白衣。


名前をクロウ博士という。

生まれた時からクロウ博士と呼ばれていたから、本当は「クロウ」が名前であるが、

「博士」とつけないとどことなく落ち着かないから、そう名乗っている。


俺はこの小さな星に、5年前に1人と1匹でやってきた。地球から作るのに長いこと時間を費やしたにロケットにのって、居候の猫、ククと共にこの星に降り立ち、毎日研究に明け暮れている。


この星は草木もなく、ただ地球と同じくらいの重量があるからと言う理由で選んだから、景色としては殺風景としか言いようがなく。

しかし、星は輝いているので、星好きにはたまらないんじゃないだろうか。

そんなロマンチックなやつには出会ったことがないけれど。

たまに流れる宇宙のちりが、研究している物たちに当たると面倒極まりないから来たばかりの頃に作った、星を覆う見えない壁紙がだいぶ役に立っている。


「に゛ああ」

「…さっき食べただろう。」

「に゛ぃぃ」


この居候の猫のククはずいぶん食いしん坊で、食べても食べても常、ご飯を催促してくる。時間の流れは地球にいた頃と変わらないようにしているし、3食きちんとあげているのだから、、俺が悪いわけではないはずだ。なので俺はククのことが苦手だ。けれど生まれた時から一緒にいるこいつを、今更地球に残してくるのも酷いことのような気がして。だからあくまで居候として最低限のことをして、共にいることを選んだ。それだけの奴。


「もう少しなんだ、完成するんだ。」

「…」

「これが終わったらたくさんおやつをやるから。…あーもう少し離れててくれよぅ。」


足に絡みつかれたら身動きすら取れないからやめろと何度も言っているけれど、多分こいつに言葉は通じてないんだろうな…と。

色が剥がれるからざりざりと舐めるのをやめてほしいと頼んだことがあるけれど、やめてくれたことがないから。

ククをぺい、っとひっぺがしていつも座ってる定位置に戻して、俺はまた作業に取り掛かる。


この研究の為に地球を離れたと言ってもいい。

だから、手を休めるわけには行かないし、ククに構うのも面倒臭いし、思っていたより早く進んだ研究も、一生かけるつもりで行っていたから。地球にはいい人と、悪い人がたくさんいたらしいけれど、俺はそんなのよくわからなくて、だから。


「もうすぐなんだ、兄さん。」


昔それを教えてくれた、いろんな知識を与えてくれた。たった1人の理解者で。

昔の昔、地球で先に生まれ、行方不明になった兄を。


呼び戻す為の装置を。


やっと完成させるのだから。
















「ふに゛ぃーーーっ!!」

「…あっご飯の袋を勝手に開けるんじゃないっ!!」

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