残念ヒロインとギルドシェア爆上げ旅〜スキル【コールセンター】では知識無双もできません〜

マルジン

第1ー1話 勇者コールセンターよ去れ!

「この王城から去れ!コールセンター!」


死ね!

誰がコールセンターだ。

好きで謎スキルを得たわけじゃないやい!


と言えれば良かった。

だが俺は、権力に媚びるスタイルで生きてきた。


「……あ、ハハハ。そっすよねー。お金だけ貰えたりとかしませんよね?王様」


「コールセンターよ。働きもせず金をせびるか?コールセンターよ。ああ、コールセンターよ」


んな、ご無体な話あるかね。

金もなくどうしろと。

この清い体でも売れってのかよ。


「ブフォッ」

「笑っちゃあ失礼よ」

「コールセンターて」


一緒に召喚された、見知らぬ誰かにも笑われるし。

何もかも酷い。

酷すぎるよ王様。


「コールセンターを追放せよッ!この王都には、二度と足を踏み入れるでないぞッ!」


俺の名前はコールセンターこと、佐藤純一さとうじゅんいち

サトジュンとか、ジュンとか、さとうとか、ジュニチとか。

それはもう、いろんなアダ名をもらったものだ。


コールセンターって……。


「コールセンター殿。参ろうか」


「……あ、はい」


ガシッ――。


抵抗すると思われたのだろう。

両脇を騎士に抱えられ、王城から引きずり出された。

捕獲されたエイリアン気分だ。


召喚されて30分も経ってないのに、どうして追放されるのか。


理由はひとつ。


俺のスキルが、【コールセンター】だったからだ。





所変わって。


「……ぐすん」


「……」


俺は今、一世一代の演技をかましている。

だって仕方ないじゃないかッ!


王都から一步出たら、もう人の住む場所じゃないんだもん!


まず臭い。

地面はボコボコ。

歩いてる人も、目つきが怖い。

襲われそうで怖い。


それにこの看板だ。

王都と、この肥溜めみたいな場所の境に立ってる看板!


【入ってみろ。殺すぞ】


いやおかしいだろッ!

案内標識みたく矢印までしてさ?

ドクロマークとバッテンまでつけて?


殺すと?


「死にだぐないんでずぅぅぅぅぅ」


「……これは、騎士や貴族に向けたメッセージだ。君はきっと、うん。大丈夫。君は大丈夫だコールセンター殿」


嘘つけよ!

死ぬほど目が泳いでやがる。


せっかく異世界に来たってのに、臭いおっさんに掘られる未来しか見えない……。

チラチラと俺のケツを見てるに違いない。


嫌だ!

エロいヒロインとイチャイチャするんだ!

やっぱり嘘です、諦めてもいいから、ここには捨てないで……。


神様仏様……。



「騎士様!お願いしますッ!童貞のまま死ねと?ねえ!死んでもいいんですか?あなたには人の心ってもんがないんですかッ!」


「……いや、はあ」


俺はすがりついた。

土下座からの組み付きは、並のファイターでも反応できない速度だ。

甲冑に鼻をぶつけて血が出たけど、それが逆にいい味を出してくれる。


この必死さ。

この情けなさ。

人として、捨て置けないだろう。


「では、冒険者になればいい」


「ぼ、冒険者ですか?」


「うむ。すぐそこにギルドがある。ほれ、あの男がギルドマスターだ」


鼻血を拭って、騎士の指差す場所を振り返る。


パンパンに張った腹を、ボリボリ掻いてるおっさんしかいない。

まさか、アレがギルドマスターなわけないしな。


どこだ?

あのおっさん以外には……。


アレか?

枯れた鉢植えに水をあげている、あの……おっさん?おばはんかな?どっちか知らんがアイツなのか?


どっちもギルドマスターって感じじゃないんだが。


「そういう事だから、頑張りたまえ」


「いやいや。ちょっと待ってくださいよぉぉぉ!誰がギルドマスターなんです?どこにもいないじゃないですか!」


「いやいるじゃないか!腹を掻いて、鼻くそをほじってる……あ、今ピンッて。ピンッて飛ばした人。あれだ」


「……嘘だ!嫌だ!掘られたくない!助けて騎士様ぁぁぁ」


俺を振り払おうともがく騎士。

こちとら命と貞操が掛かってるんだ、負けるわけにはいかん!

あのおっさんの毒牙に掛かってたまるか!


「おーい。うるせえぞー。いい加減にしねえと怒るぞー」


近所のおっさんか!

おめえが怖いから騒いでんだよ!


「冒険者志望だ!置いてくから後は任せた……さらばッ!」


ガツンッ――。


騎士の拳が、脳天を直撃。

目をチカチカさせながらも、腕を引き絞って耐えていたが……とうとう腕を放してしまった。

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