人形

 「僕の声、聴こえる?」

 少年は人形に話し掛ける。

「ねぇ」

「ダメだ。聴こえてない……お母さん、この子は周りの音が聴こえないの?」

 少年が、そばに居た彼の母に問う。

「そうだよ」

「いつまで?」

「……死ぬまでずぅっと」

「この子は目も見えないの?」

「うん。そうだよ」

「……死ぬまで?」

「うん」

「喋れる?」

「喋ることもできない」

「へぇ」

 そして少年は、目の前に置いてある人形をじっと見つめた。

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