第45話 ド田舎論争

 食事当番のチノとニックの作った夕飯を皆で食べている。今日のおかずは、スーパーのタイムセールで手に入れた、本物のお肉だ。


「やっぱり、本物のお肉は最高だね」

 ニックは口に肉を放り込むと、次にご飯を口にした。

「やはり人工肉とは一味違うね。お肉とお米がすすんで危険だわ」

 チノも美味しそうに肉をほおばっていた。

「なんかこの米、昨日までの米と違わないか?」

 ニックがお米の違いに気が付いた。

「今朝まで食べてたお米は、アタシの村から持ってきた自然の五分づき米なのよ。鉄の都で買ってきた真っ白なお米とはちょっと違うの」

 五分づき米というのは玄米に近いお米で、白米と違って見た目が悪く甘味が遠いが、食物繊維が豊富で栄養価が高く体を丈夫にする。

 チノに言わせると、白米はお米としては邪道だという。抵抗力が上がるのに、どうして栄養たっぷりの糠層をわざわざ削り取るのか理解できないと言っていた。


「なんか、ド田舎の人の方は健康になるものばかり食べてる気がするな。オイラもいつかド田舎に住もうかなあ。ド田舎に」

 ニックは夕日に染まる段々畑を眺める自分を想像していた。ニックの発言は、田舎を褒めてるのか、貶してるのか、さっぱりわからなかったが、本心は田舎が大好きなようだ。

「ド田舎、ド田舎ってね。そんなこと言われなくたってわかってるわよ。あんたの街だって、ド田舎に毛が生えたようなものじゃないのよ」

「そりゃそうだけどさ」

「チノ。そんなことより、せっかくだから歌姫、押しのクレープでも一緒に食べない? ちょうど三つ入っているから」

 クラヴィスは段ボールの中から紙に包まれたクレープを取り出すと、チノとツァローニに手渡した。

「あ! 推しのクレープ!」

 チノはニックの方へチラッと目をやった。

「ニックも、いいとこあるわよねえ。ああ見えて気を使ってるのよね」

 クラヴィスはクスっと笑って言った。

「やっぱりド田舎論争よりも、押しのクレープよね」

 チノは急に笑顔になった。

 女性陣は嬉しそうにクレープを頬張り虜になっている。どの世界でも女性は甘いものには目がないようだ。砂糖には心を満たす不思議な効果があるし、特に本物の砂糖というのは、古代の世界では薬として扱われていた国もあったらしい。

 口の中でチョコレートの甘い匂いと生クリームが絡み合っていく。そこにイチゴとバナナの味が入り込んでくる。さすが『BOSAYOI』押しのクレープだ。

「こんな美味しい肉が食べられるなら、アタシもレイスシーカーになろうかしら」

「チノは、シーカーには向いてないと思うけど」

ニックが笑いながら言った。

「そういえば、シーカー登録しなきゃ」

ルキアはそう言いながら、端末を取り出した。

「あ、もしかして、今日で十八歳?」

「うん。レイスシーカー続ける気でいるから、正式なシーカー登録しておかないとさ」

「これでいろいろ便利になるよな」

「ああ」

 シーカー登録のメリットとしては、ギルドでのコアストーンよ戦利品の取引。狩猟地の制限解除、狩猟に関する情報の入手、保険の適応などがあげられる。


「ところでクラヴィスはさ、攻撃魔法は学んだの?」

 クレープを食べ終えたクラヴィスは、口の周りをていねいに紙ナプキンで拭きながら、ルキアの質問を聞いていた。

「攻撃と呼べるのは、雷を落とすことと、石を飛ばすことくらいかな。あとは、役に立つかは分からないけど、雲を呼びよせることくらいかな」

 魔女というと魔法使いを想像してしまうが、アニミズムを信仰するアニミストという方が正解だろうか。

「それだけできれば十分だろうね」

「なあ、ルキア。何か良い作戦あるのか? グレネードは全部使っちゃったし」

 グレネードの残弾がないニックは詰まらなさそうに言った。

「作戦としては、まず紅色の霧の中心部までビークルで接近する。それからビークルから降りたらクラヴィスとツァローニが魔法で石を飛ばして敵の注意を引く。そして、ニックが安全な位置から援護射撃をして、チノとオレが斬り込む。クラヴィスとツァローニは石の雨を降らせながら敵を牽制する。あとは、それぞれの判断で動くって感じでどう?」

「いいね。その作戦でいこう」

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