第18話

騎士でありながらも麻薬と言う欲望に呑まれて悪党と成り果てた結果、僕と言う悪党に散々遊ばれて消え行くと言う悪夢のフィナーレ。

その後について少し話をするね。


クラネット南都騎士団長は勇敢にもナイトメアと戦い名誉の戦死となった。

所謂二階級特進ってやつだ。


実際には僕に散々おもちゃにされた挙句、イキ狂って絶頂の中で死んだんだけどね。


まあ、これでもうクラネットの悪事が表に出る事は無い。

レイナの中では憧れの友達のまま死んだ。

そしてそれを殺した僕だけを恨む。

そう、これでいい。

知らない方が幸せな事なんて沢山ある。


レイナはトレインの大切な人だからね。

これでちょっとは前に助けて貰った恩返しになったかな?


ルリは洞窟の調査結果の共有をする為、秘密基地に帰って行った。

僕はクラネットでの女嬲りとクリファとの戦いで少し欲求不満を解消出来て満足だ。

南都は楽しい所だ。


僕は気分上々にホテルに帰る。


「おかえりなさいダーリン」


部屋に入るやいなやリリーナが出迎えて来た。

なんだか妙に機嫌がいい。


「ご飯にする?

お風呂にする?

それとも――」

「お風呂にする」

「私にする?」

「お風呂にするって」

「そう、私にするのね」

「お風呂にするって言ったよね?」

「もう仕方ないわね〜

でもいいわよ」

「僕の話聞いてる?

お風呂にするって言ったでしょ?」

「お風呂で私にするの?

今日はそう言うプレイなのね」

「違うわ」

「私とお風呂に入ったら困る理由があるわけ?」

「そりゃあ困るだろ」

「なによ。

エミリーにはちょっかいかけたくせに」

「は?

何の話?」

「惚けても無駄よ。

エミリーに全部聞いたから。

後ろから抱きついて耳を舐めようとしたそうね。

更には胸の谷間を凝視して超絶景とか言ったそうじゃない」

「そんな事……」


したわ。

間違い無くしてたわ。


「で、でもね。

それには事情があってだね」

「女の子にそんな事する事情なんてあるわけ無いでしょ」


まったくの正論である。

もうぐうの音も出ない。


「そんなに絶景がいいなら私が見せてあげるわ」


リリーナがそう言って服を脱ぎだした。


「ストップストップ。

見せなくていいから」

「なんでよ。

エミリーよりは小さいかもしれないけど、私のも一般的には大きい方よ。

それに形だって自信があるわ」

「そう言う話じゃないの」

「もちろん触ってもいいのよ。

感度にも自信があるから。

あっ、それはもう知ってるわよね。

だってヒカゲには私の感じる所全部触らせて教えたものね」


僕は毎晩の事を思い出して思わず生唾を飲み込んだ。

あの時のリリーナの動きと甘い声を思い出してしまった。


顔に出てしまったのか、リリーナが悪い顔をして僕に近づいて来る。


「もしかして思い出して興奮して来た?」

「そ、そんな事無い」

「嘘ね。

だって顔に書いてるもの」


リリーナはもう下着姿になっている。


「そうだ、ご飯にしよう。

外食行って来るね」


逃げようとしたら腕を掴まれて止められた。


「私をこの格好で外に出す気?」

「いや、服着たらいいじゃん」

「いやよ」

「なら僕はご飯食べに行ってくるよ」

「ご飯なら用意してるわよ」

「え?

そうなの?」

「ええ。

だからこっちにいらっしゃい」


僕はリリーナに連れられて部屋の奥に行く。

だけどご飯らしき物は何も無い。


「何処にあるの?」

「えいっ」


リリーナが僕をベットに押し倒した。

すぐにリリーナが僕を抑えつけて来る。


「ちょっとリリーナ」

「私を食べさせてあげるわね」

「違う。

それだとお腹いっぱいにならない」

「エミリーが言ってたわ。

空腹や寝不足の方が性欲への抵抗が弱くなるって」

「それは脳が正常な判断が出来なくなってるだけ」

「ヒカゲに絶景を見せるのにどうしたらいいかお母様に聞きに行って来たのよ」

「実の母になんて事聞きに行ってるんだよ」

「とても凄い絶景の見せ方教えてくれたわ」

「実の娘になんて事教えてるんだよ」

「じっくり楽しんでね」


それはもう絶景を通り越して刺激的過ぎた。

リリーナの母親って一回しか会って無いけど、相当ヤバイ奴だと理解した。



残りの旅行中もリリーナの誘惑は本当に凄かった。

昼も夜も隙あらば誘惑してくる。

何度流されそうになったか。

特にホテルの部屋では……


だけど僕は耐え切った。

帰る日まで耐え切ったよ。


馬車に乗り込んだリリーナはちょっと不機嫌そうだ。


「あーあ。

私結構頑張ったのに結局ヒカゲは手を出して来なかったわね」


まだ諦めて無いのか、胸を押し当てながら言って来る。

僕は冷静を装っているが、これしきのスキンシップでも行っちゃいそうになるぐらいまでは来ている。


「この夏休み中にヒカゲで卒業するつもりなんだけど」

「そんな事しなくていい」

「まだ夏休みは少しあるし、まだ諦めるのは早いわね」

「素直に諦めてください」

「覚悟しといてね」


嘘だろ?

王都に帰ってからも続くの?

勘弁してよ。


僕が王都に帰ったら逃げる事を決意した時、馬車のドアがノックされた。


「ちょっといいかな?」


ゆっくりとドアが開かれ、軍服姿のトレインが見えた。


「出発前に申し訳ないね。

ちょっとそいつをお借りしてもいいですか?」


トレインが丁寧にリリーナに聞く。


「いやよ。

これからイチャイチャする予定なの」

「そこを頼みますよ。

少しで終わるので」


ムッとした顔でトレインを見るも、いつもと違うトレインの真剣な顔に結局リリーナが折れた。


「10分だけよ」


そう言って僕は解放されてトレインと共に馬車から離れた位置に移動する。


「クラネットの事?」

「やっぱりお前は勘がいい」


トレインは真剣な顔で僕を見る。


「大変な事になったみたいだね」

「何故クラネットが死なないといけなかったんだろう?」

「変な事考えてるんだね。

人が死なないといけない理由なんて無いよ」


ただ悪党として生きた彼女は、同じ悪党である偶々僕によって消された。

それだけの話だ。


「ダイナの時とは違ってクラネットはナイトメアに殺された。

クラネットを慕っていた者は多い。

これから騎士団はナイトメア討伐に更に本気になる」

「むしろ今まで本気じゃなかったんだね」

「俺の知っている限りナイトメアが殺す相手には一定の疑惑があった。

だから今回も調べた。

クラネットにはイースバーンと繋がってる疑惑がある」

「凄いね。

どうやって調べたの?」

「ああ言う奴は飲み屋のお姉ちゃんには口が軽くなる」


トレインは僕に手のひらを見せる。


なるほどね。

トレインにしか出来ない芸当だ。

流石にそこまでは証拠隠滅出来なかった。


「だが疑惑止まりだ。

決定的な証拠は何も無い」

「いいじゃん。

どうせもう罪には問えない。

別に死人の名誉を傷つける必要も無いし」

「なあ、教えてくれよ。

何でナイトメアはこんなやり方をする?

もっと上手くやる方法はいくらでもあるはずだ」

「なんで僕に聞くの?」

「それはお前が――」


トレインは何か言葉を呑み込んだ。

それから苦虫を噛み潰したような顔になる。


「お前が勘がいいからだ」

「勘で答えていいの?

それは彼自信も悪党だからじゃないかな?

悪党が何を言っても言い訳にしかならない」

「そんな事は――」

「あるよ。

だって現にトレインはクラネットの疑惑を死なないといけない理由にしようとしてるじゃん。

人は99.9%の正義よりも、たった0.1%の悪を叩くんだ」


トレインは何か言いたそうだけど、言葉が見つからないって顔をしていた。


「そろそろ10分経つね。

じゃあねトレイン。

また今度ね」


僕はそんなトレインを放って馬車に戻る。


さあ急いで戻らないと。

早く戻らないとまた殴られちゃうよ。

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