第12話

僕との約束を果たせるかどうかによって、この国の未来が大きく変わると言う事が決まる悪夢のフィナーレ。

その後についてちょっと話をするね。


ホテルに戻ったら僕は若干のイライラを感じながらもベットに寝転んだ。


やっぱり殺しとけば良かったかな?

でもネズカンの言うのも一理ある。


ハヌルもヒナタも王位継承争いに巻き込まれる事は望んで無いはずだ。

仕方ない。

ここはネズカンを信用してみるとしよう。


とにかく眠たいし寝よう。

なんたって僕は寝不足だからね。

……あれ?

なんか忘れてる様な気が……


そんな事を思った矢先には眠りについていた。


久しぶりにゆっくり寝てたと思う。

もう外は夕日が沈みかけていた頃、部屋の扉が開いた。

リリーナが帰って来たみたいだ。


だからと言って僕は気持ちよく寝てたるから、気にせず睡眠を続ける。

そのままリリーナはシャワー室に入って行った。


「ぐへっ」


それからしばらくして僕は腹に強烈な痛みを感じて目を覚ました。


「なんだよ。

せっかく気持ちよく寝てたのに殴るなんて酷いじゃないか」


僕の上で馬乗りになってボディーブローをして来たリリーナに文句を言う。


「ってなんて格好してるんだよ」


なんとリリーナはシャワー上がりでバスタオル一枚巻いてるだけの格好だった。


「うるさい!

なんで病院に来ないのよ!

後で来るって言ってたわよね?

私、ずっと待ってたのよ!」

「あー……

そう言えばそんな事言ったような……」


僕の腹に強烈な一撃が追加された。


「なによ!なによ!なによ!

あんたは私に素直にお礼を言われると死ぬ病気なの?

そうなのよね?

そうじゃないと辻褄が合わないわ!」

「まあまあ、落ち着きなよリリーナ。

そんな病気は存在しないよ」

「知ってるわよ!」


知ってるのかよ。

知ってて殴るとはなんて理不尽なんだ。


「さあ、答えなさい。

なんで来なかったのかしら?

さぞ立派な理由があるのでしょうね?

私を病院で1人待たせてるのにも関わらず、1人でホテルに帰って呑気に寝てる理由が」

「えーと……

それはだね……」

「さっさと答えろ!」


リリーナの拳が再び腹に突き刺さる。

とても痛いから辞めて欲しい。


「リリーナわかってる?

マウントポジションからボディーブローはもはや殺人レベルだよ」

「うるさい!うるさい!うるさい!」


リリーナが両手を使って連続で拳を振り下ろして来た。

もはやサンドバッグだ。

いや、サンドバッグの方がもっと丁寧に扱って貰えてそう。


「痛い痛い痛い。

辞めてよ。

痛いってば」

「じゃあさっさと答えなさい!」


リリーナが拳を止める。

でも拳は振りかぶったままだ。


これは答えを間違ったら再開しそうだ。

仕方ない。

ここは男らしく本当の事を言おう。


「忘れてた」

「死ね!」


結局連続ボディーブローは再開された。

しかもさっきよりも一発一発が重たい。


「ストップストップ。

本当に死んじゃうよ。

ちょっとリリーナ聞いてる?

本気で痛いんだってば」


僕は堪らずリリーナの両手を掴んで止める。

それを振り払おうとするリリーナと逃すまいと両手で掴んでいる僕との攻防が始まる。


リリーナは睨んでいるが気にしない。

だって本当に痛いんだもん。


ふとリリーナの顔が近づいて来た。

そしておでこに頭突きされた。

まさかのここに来ての新技だ。


「いった〜」


痛いけど両手は放さない。

放したらまたボディーブローが来るに決まってる。


次の瞬間、思わず声が出て開いた僕の口をリリーナの口で塞がれた。

そのまま舌を絡める激しいキスが続く。

いつまで経ってもリリーナは離れてくれない。


なんでこうなってるの?

さっきまで怒ってめちゃくちゃ殴ってたじゃん。

意味わかんない。

ああ、なんか気持ち良くて頭がボーっとして来た〜

……ってダメダメ。


僕は両手で肩を掴んで優しく引き剥がす。

トロンとしたやたらとエロスを感じるリリーナの顔が僕を見つめる。


「ヒカゲ。

ありがとう。

助けてくれて。

愛してるわ」

「偶々近くを通っただけだよ」

「結局病院に来なかったって事は検査して無いんでしょ?

大丈夫なの?」

「今君に殴られたお腹が痛い」

「私が診てあげるわ」


そう言ってリリーナは僕の上着のボタンを外し始めた。

僕は止めようとリリーナの肩から手を放そうとしたけど、リリーナが全体重を僕の両手に乗せているから放せない。


「ちょっとリリーナ。

何やってるの?」


リリーナは僕の声を気にせず僕の上半身をはだけさせた。


「問題無いみたいね」

「大丈夫だよ。

僕はなんとも無いって」

「そう。

良かったわ。

本当に良かった。

病院に来ないから来れないように何かあったのかと……」


リリーナの目から涙が落ちた。


「え?なんで泣いてるの?

泣かないでよリリーナ」

「私、心配したのよ」

「何も無いに決まってるじゃないか」

「本当に?」

「本当になんとも無いよ」

「そう……

なら今朝の続きしても大丈夫ね」


リリーナの涙がスッと消えて悪そうな笑みに変わった。

そして自分のバスタオルを剥ぎ取って放り投げる。

当然下は何も着ていない。


「今朝の続きって……

まさか」

「じっくりお礼するわね」

「いらない」

「また、そんな事言って。

いいのよ我慢しなくて。

だって私はヒカゲの物だから」

「何言ってるの?

リリーナが僕の物なわけ無いじゃないか」

「ヒカゲが言ったのよ」

「へ?

僕が?」

「そうよ。

僕の大切なリリーナって言ったじゃない」

「そうやってまた記憶を捏造する気だな」

「いいえ。

絶対言ったわ。

証人だっていっぱい居るわよ」

「嘘だ嘘だ嘘だ」

「じっくり私を堪能してね。

なんたって私はヒカゲの物なんだから」

「本当にいらないから。

ね。

今日はゆっくり寝ようよ」

「今日は寝かさないから」

「いや今日はって、僕はここ最近寝かせてもらって――」


僕の抗議は唇で防がれて止められた。


おかしいぞ。

絶対言ってないはずだ。

確かにリリーナは大切な身内だ。

でも思ってても絶対に言わないようにしてる。

だって、それを言ってしまったら……

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世界を越える悪党の美学 横切カラス @yokogiru

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