第12話この声が嫌い
私「さっきの子」
さっきは気づかなかったが、横に並ぶと私より背が高い。180cmはあるのではないか。両手にはキノコのペンライトを持ってオレンジ色に光らせていた。
推しはオレンジだから岩手県産の桜ひなの。ファンからはひなもん、もんちゃんと呼ばれている。力強い歌声が特徴的な東北産の絶対的美少女だ。
私「あ、あのさっきはありが、」ブーーー!
ペンライトのお礼を言おうとするとライブ開始のブザーが鳴り響いた。
橘「声出していくぞ!」
リーダー橘花怜の掛け声と共にライブが幕を開けた。
ライブはとても楽しいが、私は隣のハスキーが気になり、ちらちら横目で見ていた。
私「あれ、さっきより背が低くなってないか?」
よく見ると、後ろの人が自分の身長のせいでライブが見えなくなるのを気にしてか中腰の姿勢で見ていたのだ。
私「ほぼ電気椅子だよ。ライブ2時間この姿勢でいくのか」
ペンライトを振る時も隣に当たらないように小さく小刻みに振っていた。
私「どこまで謙虚な子なんだ」
私はライブとハスキーどちらも気になり、ライブ、ハスキー、ライブ、ハスキーと交互に見ながらあっという間に2時間のライブは終わりを迎えた。
ライブが終わるとハスキーは大きく背伸びをして、その場で軽く2回ジャンプをした。
私「2時間あの姿勢でよく耐えたな」
私は帰ろうとするハスキーに改めて声を掛けた。
私「あ、あのさっきはありがとう。助かりました」
ペンライトを見せながらお礼を言うと少し驚いた表情で
ハスキー「い、いえ」と言うと、小さく会釈をされた。
何か喋ろうと思い「良い声だね」と言葉が出た。
するとハスキーの顔が急に暗くなり顔をうつむかせ
ハスキー「この声、嫌いなんです」
「ライブ楽しかったね」とか「ひなもん推しですか?」で良かったのに私は咄嗟に出た言葉で彼女の地雷を踏んでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます