勉強会合宿 三日目

まだ夜明け前の薄暗い広間に、参加者たちが静かに集まっていた。緊張感の漂う中、講師が登壇し、今日のスケジュールが告げられる。講師の声が広間に響く。「今日は学力強化講義、そして自主勉強とミニテストが待っています。各自、これまでの学びを振り返り、挑戦してください。」


冬と稲は、その言葉に真剣に耳を傾けた。冬の心には、今日こそ実力を試す機会だという決意が芽生える。稲は冷静に目標を見据えながら、共に過ごすこの日を最大限に活用する計画を頭の中で立てていた。




講義が始まると、講師は黒板に複雑な数式と図を描き、問題解決のテクニックを次々に紹介していく。冬は一言一句を逃さないようにメモを取り、集中力を最大限に発揮していた。しかし、時折その理解の深さに苦戦する場面もあった。稲は冬の横顔を見ながら、自分のノートにさりげなくメモを書き込み、そっと彼女の方に滑らせた。「ここの部分、少しだけ視点を変えてみたらどうかな?」


冬は稲のメモを見て、納得した様子で頷く。稲の助言が、冬の中で新たな理解の扉を開いた瞬間だった。講義が進むにつれて、冬も徐々に自信を持ち始め、講師の解説が頭の中にスムーズに入ってくるようになった。




講義が終わり、各自がそれぞれのスペースで自主勉強に取り組む時間となった。冬は集中力を維持しながら、ノートを広げ、学んだ内容を整理していく。稲は静かに自分の席で参考書を開き、黙々と問題に取り組んでいた。時折、稲は顔を上げて冬の方をちらりと見て、彼女のペースを確認していた。


「どう?困ってる?」稲がそっと声をかけると、冬は「うん、少しだけ…」と弱音を吐いた。それでも、彼女の瞳には学びに対する真摯な姿勢が伺えた。稲は微笑んで、彼女に簡単なアドバイスを送り、再び自分の勉強に戻った。





昼過ぎ、待ちに待ったミニテストが始まった。冬は緊張の中で筆を握り、問題用紙と向き合った。出題された内容は難解だったが、今朝の講義と自主勉強で身につけた知識が少しずつ頭の中でつながっていくのを感じた。隣の稲もまた、集中して解答を進めている。


テストが終わると、参加者たちは答案を提出し、フィードバックの時間を待つ間、それぞれが自分の出来を振り返っていた。冬は不安げに稲を見つめ、「難しかった…」と呟くが、稲は穏やかに笑って「大丈夫、きっと頑張った分は結果に出るよ」と彼女を励ました。




テストの結果が発表され、講師から個別のフィードバックが行われる。冬は、自分の解答を見直しながら、ミスした箇所に気づいた。講師は「ここのアプローチは悪くないが、もう少し深く掘り下げることが大事だ」と冬にアドバイスを送り、彼女はその言葉を真剣に受け止めた。


一方、稲は比較的高い評価を受けたが、それでも「まだ伸ばせる部分がある」と自己分析をしていた。「冬、次はもっと頑張るよ」と稲は自分自身と冬に向けて前向きな言葉を投げかけた。




夕食の時間が訪れ、参加者たちはリラックスした雰囲気で交流を深める時間となった。冬と稲は他の参加者と共にテーブルを囲み、今日のテストや講義について話し合った。知識を共有する中で、二人は改めて勉強の楽しさと、仲間との協力の重要性を実感した。


「こんな風にお互いに教え合うの、いいね」と冬が微笑むと、稲も「うん、一人じゃ気づかないことも多いしね」と返した。




夕食後、再び自主勉強が始まる。冬と稲は部屋に戻り、それぞれのデスクで集中を取り戻した。冬は今日の反省点を踏まえ、黙々とノートに問題を解いていく。稲もまた、自分の興味のあるテーマについてさらに深掘りしていた。


夜が更け、静まり返った部屋の中で、二人はそれぞれの未来に向けて確実に歩みを進めていた。


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