合宿施設に出発
都立図書センターの前には、夜の帳が静かに降りていた。参加者たちは合宿の出発に向けて、次々とセンター前に集まってくる。夜の涼しさが心地よく、皆の顔には期待と少しの緊張が漂っていた。合宿の行き先は、軽井沢付近の避暑地にある施設。そこには勉強に集中できる環境と、リラックスできる設備が整っているという。
冬と稲は大きなバックパックを肩にかけ、センターの玄関前でバスの到着を待っていた。参加者たちの中には友達同士で話している人や、スマホをいじりながら時間をつぶしている人もいる。冬は少し興奮気味で、「楽しみだね、稲」と目を輝かせながら話しかける。
「うん。勉強だけじゃなくて、温泉やプールもあるからね」と稲も微笑んで答える。バスが到着し、参加者たちは荷物を積み込んで乗り込む。大型バスは静かなエンジン音を響かせながら、ゆっくりと出発した。
バスの中では、すぐに夜の静けさが訪れる。しかし、冬と稲はまだ眠る気にはなれず、持参したお菓子を取り出しておしゃべりを始めた。冬はチョコレートを開けながら、「ねえ、稲。大学に行ったら、もっといろんなことを学べるんだよね」と夢見るように話す。稲はポテトチップスを口にしながら、「そうだね。でも、その前に合宿でしっかり勉強しておかないと」と少し真面目な顔をする。
話が弾む中、バスは都内を抜けて高速道路に入った。街の灯りがだんだんと遠ざかり、車窓から見える景色も徐々に暗くなっていく。冬と稲は、少しずつお菓子を食べながら、笑ったり、将来の話をしたりして過ごす。やがて、バスの揺れが心地よくなり、二人は眠気に襲われ始めた。
「ちょっと仮眠しようか」と冬が言い、稲も頷く。「うん、そうしよう。到着するまでまだ時間があるから」と、二人はシートを少し倒して目を閉じた。バスの揺れと静かなエンジン音が、子守唄のように二人を包み込み、冬と稲は軽い眠りに落ちていった。
バスは深夜の高速道路を静かに走り続け、朝方には目的地の合宿施設に到着した。空は少しずつ明るくなり始め、鳥のさえずりが聞こえる。冬と稲は、まだ少し眠たげな顔をしながらも、新しい一日の始まりに胸を躍らせていた。これから始まる勉強会に、期待と少しの緊張を抱えながら。
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