【長編】迷子の妹を送り届けた着ぐるみの中の人が俺だと知ったクラスのマドンナがぐいぐいやって来る
みっちゃん
本編
5月 2人は2人
第1話 ヒカルンは出会う、クラスのマドンナに
ゴールデンウイーク。
それは学生の中には夏休みにの次に好きな人もいるであろう長期休暇の事である。
特に高校2年生にとってのそれは共に入学した友達との仲が深まり勉強を考えずに遊んだり、はたまた彼女が居れは一緒に過ごしたりする大切な重要な時間である。
かくいう俺、
一本の電話を取るまでは。
『私たち、別れよ』
ゴールデンウイークに入った初日、幼馴染で彼女でもある
「ど、どうして?俺、なんか嫌われるようなことした?」
『いや、輝は私の嫌なことは何にもしてないよ』
「じ、じゃあどうして……」
『輝は私の嫌なこともしなかったけど、やりたいこともしてくれなかった。だからだよ』
やりたいこと、と言われて俺は回らぬ頭をめいいっぱい回して今までの彼女と過ごした思い出を思い返す。
どこかに行きたいと言われれば一緒に行ったし、その時のお金だってほとんど俺が持っていた。そのために、バイトも頑張っていたしゴールデンウイークも合間を縫って行くつもりだった。
手を繋いだり、ハグをしたりキスもした。
その先の事はまだ、早いと思ってしてこなかったがそのほかの事は全てやって来たはずだ。これ以上何をやって欲しかったというのだろうか。
そんなことを考えていると、更に彼女は言葉を重ねる。
『それに、私好きな人ができたの』
そう言うことか。
俺はその言葉を聞いて納得した。さっきまでの理由は建前だろう。
彼女は俺よりも魅力的な人を見つけたのだ。
まぁ、仕方ない。
俺は唯が幼馴染なこともあってそれに甘え、オシャレなんかにはほとんど気を遣わず、髪の毛は伸びっぱなしで目にかかるほどで、学校では陰キャをかましている。
そんな俺に唯はそのままでいいよと言ってくれていた。
しかし何度、唯の隣に俺はふさわしくないと心の中で思ったことか。
唯が新しく好きになった人は、きっとオシャレでかっこよくて明るいのだろう。
多分唯にはそっちの彼氏の方がお似合いだ。
「分かった。上手くいくといいね」
『うん。ありがと。ばいばい』
唯のその言葉が聞こえた後には、既に電話は切られていた。
俺は最後強がって、上手くいくといいねなんて言ったが、内心はとても悲しく俺はゴールデンウィーク初日から部屋を殆ど出ることなく過ごした。
心配してくれる友達も殆どおらず、一人暮らししているため親からも何も言われない。
誰とも今は関わりたくないと思う俺にとってはそう悪くない環境だった。
―――――――――――
その環境が変わったのはゴールデンウィークが始まって3日後だった。
唯と過ごす予定だったためゴールデンウィークの予定が総崩れしたが、今日は合間に入れておいたバイトのシフトが入っている日だったため俺は重い腰を上げて、3日ぶりに朝の白い太陽の下を歩いていた。
彼女もいなくなり金の使い道が無くなったが、バイトを振られたせいでドタキャンするのも悪いし、自分の中でも流石に切り替えなければいけないという感情があったのでいい機会だった。
「おはようございます」
「田原君!おはよう。久しぶりじゃない。見ない間に少し瘦せたんじゃない?」
今日のバイトの場所である近所の大きめなショッピングモールに到着すると、同じくパートとして働く
「久しぶりって、前会ったの2週間くらい前ですし、そんなに変わりませんよ」
「も~、冷たいんだから~。成長期は目を放したらすぐにおっきくなっちゃうんだから」
「もう俺の成長期は終わりましたんで心配しないでも変わりませんよ」
「そう言えば、今日は田原君が中の日だったわよね」
「はい」
中の日というのは、俺のバイトはこの地域のマスコットキャラクターのヒカルンの活動を中の人として内側から支えるというものである。
「最近は熱くなってきたから気を付けてね。私もそばで気にしておくから」
「ありがとうございます」
そんな会話をしながらバイトの準備をする。
そうこうしているうちに他のバイト仲間も続々と通勤し始めバイトの時間となった。
「「「きゃーー!」」」
「「ヒカルン!」」
着ぐるみを着てショッピングモールを少し歩くと小さな子供たちが、俺(ヒカルン)に駆け寄って来て、抱き着いてきたり、叩いたり、手を振ったりしてくる。
ヒカリンはこの辺では結構な人気を誇るのだ。
そんな光景を着ぐるみの中から見るのはなんだか有名人になった気分になれて悪くない。
俺(ヒカルン)の傍についている村岡おばちゃんを含めたバイト仲間たちが、子供たちを落ち着かせて、俺が写真撮影に応じる。
そんなやり取りをショッピングモールの一階部分を回りきるまで続け、始めてから2時間強くらいで一度休憩のために、バックヤードに戻ることになった。
が、戻る途中この着ぐるみの狭い視野の中、一人道の真ん中でしくしくと涙を流す女の子が見えた。
俺は、その女の子の元へ向かうと、その光景を見て、村岡のおばちゃんも気づいたのか、少女の前にしゃがみ込み「大丈夫?」と声をかける。
「……」
返事はしなかった。
幼稚園児くらいだろうか。花柄の可愛らしいワンピースで黒いツインテールに結ばれた髪が背中の辺りまで伸びている。
大声で泣き喚くのではなく、しくしくと肩を揺らすだけの少女を俺ことヒカルンは手でそっと頭を撫でてあげると、少女は俯いていた顔を上げた。
「お嬢ちゃん、一人で来たの?パパとママは?」
村岡おばちゃんが尋ねると、少女はふるふると首を横に振った。
「そっか~、それじゃあ誰と来たの?」
「……おねぇちゃん」
「そっか。お姉ちゃんか。じゃあ、ヒカルンと一緒にお姉ちゃん探そっか」
おばちゃんは立ち上がりながら言ったその言葉に、少女は視線をおばちゃんから俺の方へと移した。
俺はその少女の不思議そうな目の上目遣いから察して、手を伸ばすとぎゅっと俺(ヒカルン)の手を握った。
かわいい。
そうして、少し笑顔を取り戻した少女と一緒にお姉ちゃん捜索が始まった。
「おねぇーちゃん!」
しばらく、ショッピングモールの中をうろうをしていると、少女が俺(ヒカルン)の手を放してある方向へ走って行った。
その声が聞こえたのか、お姉ちゃんと呼ばれた女性がこちらを振り返る。
その不安そうな顔は、その瞬間に一気に晴れる。
きっと、とても不安だったのだろう。
っていうか、あの人……
「さきね!」
走り出した勢いのまま姉にぎゅっと抱きついたさきねちゃん(名前は今知った)は安心したのか、一度引いた涙がもう一度込み上げて来ていた。
それをなだめるように、頭をなでながら謝り続けている。
「あのっ!」
その光景を一通り眺めて、そろそろ帰ろうかと俺たちが踵と返した時後ろから声をかけられる。
「なにかお礼をさせてください」
「お礼?そんなのいいわよ~。おばちゃんたちは当たり前のことをしただけだしねぇ」
おばちゃんの言葉に声を出せないながらも賛同意を表現するために、全力で全身を縦に揺らす。
「…でも、助けられたので少しでも……」
「どうしてもって言うなら、ヒカルンにしてあげて。それに……」
おばちゃんはお姉ちゃんを手招きして、小さな声で何かを伝える。
「はい。それじゃあそう言うことで。あっ、私、松村陽菜って言います。今回は本当にありがとうございました」
俺はその名前を聞いた瞬間、記憶の中の顔と名前が完全に一致した。
松村陽菜は俺と同じクラスで男子から絶大な人気を誇るマドンナだったからだ。
――――――――――
この度は数ある作品の中から
「迷子の妹を送り届けた着ぐるみの中の人が俺だと気づいたクラスのマドンナがぐいぐいやって来る」
を読んでいただきありがとうございます!!!!
本日から毎日18時に更新予定です。
思い切って書き始めた作品のため、どうなるか分かりませんが頑張って書きたいと思いますので、続きが読みたい!など思った方はぜひ、★やコメント、♥などを付けてくれると嬉しいです。
今後こうなって欲しい、かわいいなどコメントを残してくれると嬉しいです。
みっちゃんでした( ´艸`)
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