プロローグ 出会いと呪い

「あのっ誰か呪いたい人とかいませんか?」

少し高くて可愛らしい声。腰まで流れるツヤツヤの黒髪。透き通る肌。パッチリした二重にクルリとカールしたまつ毛。そして小顔。灰色がかった大きな瞳が煌めいていて申し分ない美少女だ。

問題があるとしたら物騒すぎる発言の内容と

どう見ても魔女にしか思えない黒いワンピースにホウキに帽子。そして何よりも俺の部屋にいる事だ。悲しい事に俺はこんな美少女と知り合いになった事がない。

「すいません、まずあなたは誰ですか?」

俺が尋ねると彼女は微笑んで答える。

「えっと私はですね、クロユリと申します。

あなたの家の窓が開いていたのでそこから

入って来ました。それで呪いたい人の名前

教えてくれませんか?」

今度から窓を開けっぱなしにするのはやめようと俺は誓う。美少女は嬉しいが彼女は怪しすぎる。

「俺は、浪越久作なみこしきゅうさく

 って言います。高校一年生です。呪いたい

 人は特にいないので出ていってくれると

 ありがたいんですが。」

俺がそういうと彼女は上目遣いで俺を見つめてきた。正直言ってかなり可愛いけど同時に

少し嫌な感じがして俺は戸惑う。しばしの沈黙の後フッと彼女が笑って俯くき何か呟くと俺を再び見つめて微笑んだ。

「好きです。」 

「はっ!?」

自分の体温が急激に上昇し顔が真っ赤になったのを俺は感じる。ニヤっと彼女が笑った。

「意外と分かりやすいですね。あなたを呪わせていただきました。成功条件は私に少しでも恋心がある事、久作さんは警戒心が強そうだったのでかかるか心配だったんですけど、

杞憂でした!」

そう言うと彼女いや、クロユリさんは満面の

笑みを浮かべたのだった。どうやら俺はとんでもない人に一目惚れしてしまったらしい。


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