俺の初陣!! その相手は2本差しをご所望!?

武 頼庵(藤谷 K介)

俺の初陣!!



「なぁ知ってるか?」


からん

 からん


 繁華街の中にある小さな喫茶店。

 俺は、もう少しで飲み干してしまいそうなアイスコーヒーの中の氷をストローでかき回しながら、向かいの席に座る幼馴染の女の子、まことに話しかけた。


「何を?」

 すずず

 ずずずずほっ


 話しかけられた真が勢いよく吸い上げると、途中で吸い込んだアイスによってちょっと詰まる。


「クリームソーダって日本生まれなんだぜ?」

 ちょっと自慢するように真へと話を振ると、ニコッと微笑みが返って来る。


「へぇ~」

「そもそもだな――」

「1924年に生まれたんでしょ? 確か……初めて出したのは名古屋の店だったはず……」

「え?」

 真が人差し指を立てながらうんうんと頷きながら話す。


「本物のメロン果汁入りの飲み物が高くて庶民に手が出せないから『味』の付いたシロップとソーダ水を組み合わせたのよね? 因みにメロンクリームソーダはソーダ水とアイスクリームを組み合わせたモノに、メロン味のシロップを混ぜたモノなんだよ?」

「へぇ~……良く知ってるな?」

「まぁねぇ。メロンソーダって味はメロン味なんだけど、透明なものもあるって知ってる?」

「え?」

「実はメロンソーダって、ソーダ水を緑色にしたことが由来なんだよ? メロン味だからじゃないんだよ」

「…………」

 俺は何も言えなくなってしまった。


 そんな俺を見ながらニコッと笑う真。


「ねぇ和巳かずみ

「な、何だよ」

「はい」

「ん?」

「飲んで!!」

 俺の前にクリームソーダを寄せてくる。


「え? いいよ。アイスコーヒー飲んでるし」

「えぇ~いいじゃん!! 飲みたそうだったし。飲みなよぉ~」

「いいってば」

「ふぅ~ん……」

「な、なんだよ」

 すすすっと俺の方へテーブル越しに顔を近づけてくる真。


「それとも、ストロー2本差して二人で飲む方がいい?」

「お、おま!! ば、ばっかじゃねぇ!?」

「あははははははは」

「か、からかうなよ」

「ん~ん。からかってなんかないよ? だって初デートだもん。そういう事しても別に不思議じゃないでしょ?」

 

 俺の近くに有った真の顔が――いや、顔だけじゃなくて首元までもが真っ赤に染まっていく。


「わ、私だって……恥ずかしいんだからね!?」

 ちょっと拗ねたように頬を膨らます真。


からん……。


 俺の目の前のグラスから、氷が踊る音がする。


「飲む」

「ほえぇ?」


 俺は手を上げて、もう1本ストローを持ってきてもらうために声を掛けた。


「そうだな。俺達付き合ってるんだもんな」

「う、うん……」


 俺と真の初めてのデートで、二人で初めて喫茶店に入った時のお話し。



※あとがき※

御読み頂いた皆様に感謝を!!


 珍しく短い!!(>_<)

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俺の初陣!! その相手は2本差しをご所望!? 武 頼庵(藤谷 K介) @bu-laian

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