消しゴムバトラー!!神風SHOW!!

井ノ中 エル

第1話 吼えろ!!俺の相棒・エアロドラゴン!!! その1


 消しゴムバトル!!略して消しバト!!それは少年少女が様々な想いを乗せて、己の分身たる消しゴムを打ち出す熱き競技である!! 

 これは、そんな熱き戦いに魅せられ、消しゴムバトルの戦場にその身を投じた小学生、神風翔の激しき戦いの記録である!!

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 俺の名前は神風翔(かみかぜしょう)!小学五年生だ!

 突然だけど俺には苦手なものが三つある!

 一つは……


 「いたいた!! お~い!」

 「あ?」


 さっそくその一つが来ちまった……。なんかいやな予感がする……。


「どうしたんだよ、茜? そんな息切らして……」

「はぁ……はぁ……大変なのよ翔……!」

「大変ってなにが?」

「とにかく一緒に教室来て!!」

「あ!? ちょ!? 放せってお前!! 俺はこれから帰ってベイプレートZ見るんだから!!」

「アニメなんかより大事なの! とにかく来なさい!!」

「放せ~~~~!!! あれ~~!!」


 はい、というわけで一つ目……。下校中だった俺を今ものすごい馬鹿力で教室まで連行しようとしてるこの女「皆守茜(みなもりあかね)」

 こいつとは幼馴染なんだが、昔っから自分がこうって決めたことには意地でも従わせる滅茶苦茶気がつえぇ女で、今見たいに何か厄介ごとに首突っ込んでは俺を巻き込むんだ!

 とはいえまだ奇跡が起きて厄介事ではない可能性も0.0000001%くらいはある! 俺は教室に連行されながらもその一縷の希望に賭けて茜に聞いた!! が……

 

「で? 今日はなに? なにがあったんだよ?」

「あいつ! また権堂のバカが宙斗のやつをいじめてんのよ!」

「え~~またかよ!!!!」

「え~!! じゃない!! あんた親友でしょ!? 助けてあげないと!!」


 というワケで俺の苦手なもの二つ目!!

 厄介事に巻きまれること!なのにこいつときたらなんで俺を必ず巻き込もうとするかね!?


「ていうか! お前が止めてやりゃいいじゃんよ!!」

「え~? 権堂って身体でかいし、あたしみたいなか弱い乙女じゃ無理だもん」

「ア~ハイハイソーデスネ」


 人の身体宙に浮かせながら走れるくらいの馬鹿力にかなうやつなんてこの世にいねぇだろって言おうと思ったけど、間違いなく入院することになるからやめた……。

 とそろそろ教室が近づいてきたな……なんか言い争ってる声が聞こえてきやがる……。


「権堂くん! 返してよ! ボクの消しゴム!!」

「へへ! こんないい消しゴムお前にはもったいないぜ宙人」


 どうもまた宙斗のバカが珍しい消しゴムをガキ大将の権堂に奪われたみてぇだな……。あいつ前もこんなことがあったときに、もう持ってくんなって言ってやったのにこりねぇやつだぜ……。でも、ま……


「そこまで~!! 宙斗! 助っ人を連れて来たわよ!!!」


 毎度毎度こういう争いに首突っ込む茜のバカの方がよっぽどかぁ……。

 ほら見ろさっそくクラスの視線が俺に集まって来てやがる……。俺は助っ人するなんて言ってないのに……!

 

 「しょ、翔ちゃ~ん!!」

 

 さっそく情けねえ声で泣きべそかきながら宙斗が駆け寄ってきやがった……。一応事情を聞いてやるか……まぁだいたいわかってるんだけど……。


「どしたぁ宙斗?」

「ボクの最新型の消しゴム[ブラックナイト]が権堂君に取られちゃったんだよぉ! お願い翔ちゃん! 取り返してよ!!!」


 はぁ~やっぱこのパターンだ……。下らねぇ……消しゴムなんかに変な名前つけやがって……。


「お小遣い貯めて買った最新型なんだよ!! お願い!!!!」

「……」


 あほくさい話だが、このバカ、「畠中宙斗(はたなかちゅうと)」は生粋の消しゴムコレクターだ。

 小遣いの大半を珍しい消しゴムや最新の消しゴムにつぎ込んで、日夜それらに合うカスタマイズを研究している……らしい。

 まぁこいつの場合は度が過ぎてるが、こいつだけじゃなく消しゴムにやたらとご執心の小学生は多い……。毎日毎日学校の休み時間やら放課後やら、果ては下校途中の公園でもおっぱじめやがる……。傍から見てたら狂人の集まりだ。

 で、いま宙斗から消しゴムを奪ったガキ大将の「権堂大輔(ごんどうだいすけ)」……こいつもまぁ、例にもれずバカだ。

 消しゴムにご執心なのはいいが、そのためにこうやってクラスメイトが珍しい消しゴムをもってくると暴力に任せてそれを奪おうとしやがる……とはいえ前にこういうことがあったときは先生を呼んで現場を押さえてもらったから懲りたと思ったんだがなぁ……。

 まぁ仕方ねぇ、とりあえず強硬手段を取る前に説得だけでもしてやるかぁ……。


「おい、権堂!! 人の消しゴム取ってやるなよ? こいつ明日からの授業、消しゴム無しで過ごせってのか? そりゃいくら何でも可哀そうだろうがよ?」

「へ! こいつにこんな消しゴムはもったいねぇよ!! 確かにお前の言う通り授業中消しゴムなしってのもかわいそうだ! だからこいつをやるよ! そら!」

 

 そう言って権堂が放った消しゴムはどんなだったと思う?

 だいぶ使い込まれたために真っ黒で、かなり小さくなった……言っちまえば9割消耗されたゴミみたいな消しゴムだったんだ。

 それを拾った宙斗の顔はみるみる真っ赤になって、しまいには泣き出しちまった。


「ひ、ひどいよぉ! 返してよボクのブラックナイトォ!!」

 

 そう言って泣きじゃくる宙斗を権堂のバカは面白そうに笑ってやがる……。


「は!! お前みたいなへなちょこなんかより俺に使われた方がこいつも幸せだろうが!!」


 その瞬間、俺の中で何かが切れちまった!


「てめぇ!!!」


 こんな消しゴムごときにバカだとは俺も思うけど……でも!

 それでも宙斗にとって大事なものを奪ってヘラヘラ笑っているこいつに我慢できず、俺は殴りかかった!!がしかし……


「あ~!! 神風のやつがごんちゃんに暴力振るおうとしてる~!! 先生呼びに行こうぜ~」

「なに!!?」


 権堂の取り巻きがヘラヘラ笑いながらそう言い放ち、俺の拳は権堂の顔面すれすれで止まった……。


「どうした? 殴るんじゃねぇのかよ? え?」


 余裕の表情でそう煽る権堂をそのまま殴りつけたいが、そんなことをしたら俺のたった一人の家族であるじいちゃんに迷惑が掛かる……。それを考えたら拳をそれ以上前に動かすことができなかった……。


「卑怯よ!! 自分が最初に暴力で宙斗から消しゴム奪ったくせに!!」


 茜がそう叫ぶが権堂は余裕を崩さない……。

 

「はぁ~?そ れは誰が見たんだよ!? 証拠はあるのかぁ!? なぁ!? クラスのみんな!! 俺がそんなことしたの見てたかぁ!?」

「……」


 クラスのみんなは自分にも被害が及ぶことを恐れてか、みんなだんまりキメてやがる……。

 

「ほら!! 誰も知らねぇってよ!! お前の見間違いじゃないのかぁ!!? 適当言ってんじゃねぇよ! ウソツキ女!!」

「な! なによ!!」

「ウソツキだからウソツキって言ってるんだよ!! ある意味お似合いの3人組かもなぁ! 弱虫に! 暴力野郎に! ウソツキ女!! クズの集まりじゃねぇか!! ギャッハッハッハッハッ!!」

「……」

  

 茜は今にも泣きだしそうなのを必死にこらえてやがる……!

 それを見た瞬間もう俺は我慢ができなくなった!確かにこいつはおせっかい焼きだし、こんなことに巻き込んできやがるけどウソツキじゃねぇ!茜も宙斗もクズなんかじゃねぇ!! じいちゃんには悪いけどこいつら全員ぶん殴って意地でも訂正させてやる!!

 そう思って再び拳を振りかざしたその時だった……。


「権堂君! 神風くん!! そこまで!!!」


 突如男の声が教室に響き渡り、俺の拳は止まった。

 そして、教室にいる全員の視線が声の出どころである教卓に集中した。最初は担任の若林かと思ったんだけど、そこには若林ではなく、黒いスーツ姿に赤いマントを羽織り、顔には白い仮面という異様な姿の謎の男が立っていたんだ。

 

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