case2 なりふり構わない幼馴染(2)
昨日、燈璃とイチャイチャしたあと、
しかし、それは今日の出来事を予告していただけに過ぎず、その答え合わせがやってきたのだ。
「馬門 麻緒です、よろしくお願いします」
そう言って黒板の前で頭を下げている麻緒を見て、何人かがざわざわと話をしている。かわいいだのなんだのと言っているが、内面を知ったらそうも言えなくなるぞ。
それから麻緒は関わってくることは無く、そのままずっと来ないでくれと祈っていた。
誰も彼もが彼女の元に向かって話しかけているが、いつか見た人当たりの良さはそこに無く、それとなく流していた。
チラチラとこちらを見ているものの、それでも声をかけてこなくて助かったと、放課後まではそう思っていた。
しかし、それは束の間の事であった。
「樹、今からちょっといいかな……?」
「嫌だね」
案の定、麻緒は俺に声をかけてきた。当然だがそれを断る。
昨日あれだけ燈璃に言われたのに、どうしてまた声をかけられるというのか。面の皮が厚い。
「おい、昨日言わなかったか?樹に関わるなってよ」
「それはそうだけど、せめて弁明っていうか、ちゃんと説明させて欲しくて……」
こちらに詰め寄ってくる麻緒を邪魔するように燈璃が前に立つ。どんな説明をするのか知らないが、それで罪が消える訳では無いし今は燈璃がいるのだ。
鬱陶しいのでやめて欲しい。
「知らねーよ。樹が嫌がってんだから我慢してろ」
「でも、酒匂さんには関係ないよね?ウチと樹の問題だから、邪魔しないで欲しい」
「あるぜ。樹はアタシの彼氏なんだ、嫌がってるなら守るのが当然だろ」
心強いことを言ってくれる燈璃に、麻緒は心底驚いたような、絶望したような表情をした。
まさか俺が彼女と付き合っているとは思っていなかったようだ。一生そのまま意気消沈していて欲しい。
それを無視して俺たちは帰路に着く……が、それでも麻緒は話しかけてきた。
「待って!」
「ダメだよ」
そんな麻緒を止めたのは、七瀬さんだった。
この学校に入る前にとある一件で仲良くなった女の子だ。
合格発表の日、合格を確認した俺と燈璃は二人で電車に乗っていると、痴漢されていた彼女を助けて事で燈璃と彼女が仲良くなったのだ。
「嫌がってるのに無理に近付いちゃだめだよ、話なら私が聞いてあげるから、止めてあげて」
「これはウチと樹の……」
「その
燈璃に替わり、麻緒を阻んでいる彼女に心の中で感謝しつつ、さっさと家に向かう。
後で感謝のメッセージを送ろう。
早足で学校を出て、麻緒が追いかけて来ないことを祈りながら、無事に家に帰ることが出来た。
その後、無事に帰宅出来たことを七瀬さんに伝え、感謝の気持ちを伝えておいた。
彼女も大切な、俺の友達だ。
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樹は本当に災難な目に遭うヤツだ。
まさか馬門のヤツが転校してくるなんて……
アタシと友達の
先ほど紗奈と連絡して、これからも樹を馬門から守ろうという話をした。
二人で守ればなんとかなると思うが、油断はできない。でも、本当に紗奈には感謝だ。
合格発表の日に知り合って、進学してしばらくした後に彼女から聞いたことだが、どうやら樹の事が好きらしく、しかも小学生の頃から好きだったとか。
樹はもちろんその事は知らないが、転校して離ればなれになった小学生のある日、その一年ほど前に彼から声をかけてもらったそうで、その時から好きなんだとか。
確かに樹は本当に誰とでも仲良くなるヤツだった。アタシはその時の彼を遠くからしか見ていなかったが、そのことはよく覚えてる。
人見知りが祟ってひとりぼっちだった紗奈にとって、樹から差し伸べられた手にとても救われたらしい。
その思い出を胸に抱え、ずっと離れていた間も好意は強くなるばかりで、そんな矢先に痴漢から助けられるという再会でかなり萎縮していたらしい。
だから、アタシを通じて樹と関わったらしい。
ようやくちゃんと関われるようになったと、すごく喜んでいた。
これなら、アタシが樹から離れても大丈夫だと、そう思っていつか紗奈に樹を託そうと、そう思った。
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