三十七話 無関心

 激しい夜を過ごした俺たちだが、今日も普通に学校である。あの二人?知らねぇよ。

 それより気になったのは燈璃あかりだ、昨日はいきなり電話してきたけどなんだったんだろう。

 電話をしている途中で紗奈さなさんは口でしてくるし、アイツは様子が変だし色々と困惑している。

 学校に着いたが何となくソワソワしてしまう、なんて事ないはずなんだが。

 ちなみに麻緒まおは俺を見つけるなりチラチラと見てきている。その表情は悲しげだが、彼女にはそれを乗り越えて新しい恋でもしてもらいたいものだ。勝手にしてくれ。


「ようたつき


「おはよ」


 そんな中、俺に軽快な挨拶をしてくるのは壱斗いちとである。平常運転で落ち着くぜ。

 呑気なようにも見えるがこっちがおかしいだけである。いい加減落ち着きたいもんだ。


「ようたつきぃ!」


 そんなことを考えている俺の後ろから不意打ち気味に抱きついて来た燈璃である。どした?

 いつもそんなノリじゃなかったのにどういう風の吹き回しだろう?


「おいおい、樹にゃ七瀬ななせが いんだからあんまりベタベタするのはダメだろ」


「あっ、そうだよな……」


 壱斗にそう言われた彼女はしょんぼりとしながら俺から離れた。かわいいなおい。

 いつもの感じからは想像出来ないその姿にギャップを感じ思わずキュンとしてしまった。いかんいかん……

 それはそうとなんか視線が……そう思いそちらの方を向いてみると紗奈さんがジト目でこちらを見ていた。可愛いなおい。

 あっ、プイッってされた。え、マジ可愛いんだけどやば。


 そうして一限目が終わり休み時間、気付けば俺は紗奈さんの目の前にいた。HR前髪のアレがあんまりにも可愛かったのでつい……


「どうしたの樹くん」


「いや、別になんて事ないんだけど紗奈さんに会いたくて」


 少しばかり硬い声でそう言った紗奈さんにそう返す。ホント可愛いな。

 すると彼女は嬉しそうな顔をしてギュッと抱き着いてきた。最高か。


「んもー樹くんってばしょうがないなぁえへへぇ……♪」


「えっ、ちょっと紗奈ったら可愛い…」


 デレデレな表情をしている彼女を見た紗奈さんの友人がそう言って絶句している。

 俺は俺で紗奈さんの頭をそっと撫でているが、彼女は嬉しそうに俺に頬ずりしている。

 その甘え方、あまりにも可愛すぎて もはやダメージを負うほどだ。目が焼かれそうである。


「もうすっかりラブラブだね、二人とも」


 俺たちを見た紗奈さんの友人がそう言って笑っている。ちなみにいつぞやバカなことを言ってた男はこの状況を見て悔しそうな顔をしている。

 まぁ最初からアプローチしなかったあなたが悪いでしょという話である。した上でそれなら…まぁご愁傷さまということで。

 ちなみに壱斗はニヤニヤしてる、楽しそうだなお前。


 ちなみに俺は眼中になかったが、麻緒は俺たちを見て酷く悲しそうな顔をしていた。恨むなら過去の自分を恨め。


 それから学校終わりまでなんとか俺に話しかけようとした麻緒だが、当然そのタイミングなどなくそのまま俺たちは教室を後にした。

 下校する時間なので、当然家に帰る生徒たちがいる。その中に観月みづきもいてこちらに気付く。


「あの、樹くん……」


 普段から落ち着きのある態度であるが、今はもう落ち込んでいるという方が正しい様子の彼女である。しょぼくれた様子で話しかけてきた。


「えっ、あのさ観月さん。昨日のアレ見てもまだ樹くんに声掛けれるんだね、もっと見せつけられたい?」


「っ……」


 そんな彼女に対して紗奈さんはそう返した。敵意を隠すことのないその雰囲気に気圧された観月であるが、それでも引こうとしない。なんで?


「そういう訳ではないですっ。ただ…また前みたいに話がしたいって思って……」


「そう言われても」


 彼女は自分のした事を分かっているのだろうか?これといって用もなく話すというのも変な話だ。そもそも槍坂やりさかと付き合って……あっそうか断ったんだっけ。

 そして、俺の中で素朴な疑問が生まれた。


「そもそも、俺たちってそんなに喋ってたっけ?」


 話をしていたのは本の話題が殆どだ。時には世間話やら彼女の愚痴やらを聞いてはいたが、それくらいだ。特別喋っていたという訳ではないと思うけど?


「っ…!」


 俺の言葉に彼女は酷く悲しそうな顔をして走り去っていった。一体何がそこまで嫌だったんだろう?

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