三十四話 WST(私が 先に 付き合っていたのに)
最悪なものを見せられた気分だ、
おかしいな、中学の頃はウチが樹の彼女だったのに、どうしてこんなことになったんだろう?
確かに中学の時に起きた出来事はウチの失言によって起こったことだ、でも実際に手を出したのは周りの連中。
あれだけの人間が暴走して、そんな人数を止めようとすればウチまで酷い目にあうかもしれなかった。
でも……ウチだけは樹に寄り添わないとダメだったことは自覚してる。
だからなんだろうね、こういう結果になったのは。
でも、
ウチが樹を好きになったのは、あの話しやすい雰囲気。がっつかず、話を引き出すようにしてくれるし、彼自身のこともちゃんと話してくれる。
他の男の子たちはどうしても自分の事ばかり話したがるし、逆に自分のことを話さないで質問攻めばかり。
樹はその塩梅がちょうど良くて、話しててすごく心地良いんだ。
だから思い切って告白したし、それを受け入れてくれたのは物凄く嬉しかった。
付き合うことになったその日は一緒に帰ったんだけど、その時に彼から手を繋いでくれた時は天にも登る心地だった。
意識してるのかチラチラと胸を見てきたりして可愛かったなぁ……
でもそれも遠く取り返せない思い出。自分で捨ててしまった未来。
樹と付き合えたことで調子に乗っていたウチは友達にあんなことを言って、それが樹へのいじめに繋がった。
そこからが間違いの連続で、ウチの犯した間違いは結果的に彼との関係を決定的に破壊した。
結局樹に最悪な印象を持たせたままウチは親の都合で転校して、また親の都合で今の高校に転校したんだ。
もし樹と再会することがなければ諦めはついたかもしれない、でも再会してしまった。
どうにかもう一度一緒になれないかと思って声をかけたけど にべもなかった。
彼から見えたソレはもはや嫌悪のそれであり、相当嫌われていることは想像に難くなかった。
聞けばウチが転校したあと、激化していったいじめに耐えられなかった樹が手を出してきた相手にやり返して先生に取り押さえられたらしい。
その後はいじめが収まったと聞いて''最悪の事態''にならなかったことに対する安堵と、優しい樹がそうなってしまったということに罪悪感を抱いた。
それでももう一度 樹と仲良くなりたくて、まずは謝罪からだと思い近付いた。
彼と仲の良い
それでもダメだったけどね……
どうしようかと迷っているウチは、中学の時の男の子たちに身を委ねそうになったり あの先輩の付き合うという言葉に乗りそうになったりと、いつまでも成長していないことを思い知った。
あれだけ大きな間違いをしておいて、似たようなことで間違えるなんて道理で樹から嫌われるわけだ。
つまりは、そういうことだろう。樹が七瀬さんとあれだけ情熱的なキスをウチに見せつけてきたのは……
本当ならあそこにいたのはウチだった、それを自分で捨てた。やるせない気持ち。
ただウチの望むモノを見せつけられ、悔しさが胸を締め付ける。
羨ましくて悔しくて…それなのに疼いてしまう身体が憎い。
まだウチは何一つ初めてをしてない、だって樹にもらって欲しかったから……
どれだけ他の男の子たちと遊んでも、その一線だけは守ったんだ、それなのに……
樹の初めてはウチのものだったのに……
ウチの初めてだって、樹のものだったのに……
ウチが先に付き合ってたのに…!
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