三十三話 WSS(観月)
あまりの衝撃が私の胸を締め付ける。
どうしてこんな事になってしまったのか……
もしあの時、彼の告白を受け入れていたらこんな事にはならなかったのかもしれない……
自分の愚かさが招いたそれが、私の胸を締め付ける。
好きな人が私の目の前であんなことをしているのを見て頭がおかしくなりそう。
一昨日に槍坂先輩とヨリを戻さなかったのは、一瞬だけあの人が見せた眼差しがあまりにも怖かったからだ。悪寒を感じ、鳥肌が立った。
あの人が女性のことを ''そういう目'' でしか見ていないことを 一瞬とはいえ忘れてしまっていて 絆されてしまうとこだった。
私が今 誰を想っているのか、そしてどうしたいのかを彼の目を見て思い出し、あの提案を受け入れてはいけないと思った。
もちろん麻緒ちゃんにもそれは伝えたし、きっと彼女も分かってくれただろう。
しかし次の日、樹くんから拒絶されどうすればいいのかと途方に暮れていた。
そして今日 七瀬さんから呼び出しがあり、放課後に指定された場所へ向かった。
その時に見せられたのがアレだ。
激しく互いを求め合う二人を見て身が
どうして?樹くんは私のことを好きだったんじゃないの?
どうしてそんなポッと出の女の子なんかに…どうしてそんなに情熱的に……
そんな疑問と後悔が胸中を巡る。
自分でその可能性を捨てたクセに、その事実から目を背け彼を心の中で責める事でなんとか正気を保っていた。
自分が気付いていないだけで、私はとっくに樹くんの事が好きだったのだ。
それなのに愚かな先入観と自分の
勝手な思い込みで槍坂先輩を誠実だと勘違いして付き合って、果てには嫌がらせのようにそれを樹くんに見せつけた。そんなことをしたなら今日のアレは当然の結果だった。
突き放した挙句彼のことを悪く言う人を目の前に連れてきて、その人と付き合っていますだなんて言えば誰だって好意を失うだろう。
それどころが軽蔑したっておかしくない。
その事を理解しているからこそ認められない、認めたくない。自分のせいで叶う恋が叶わなくなってしまったことを。
自業自得……それに尽きる。
二人は私たちのことなど眼中になく、互いの気持ちをぶつけ合うように口付けを交わしていた。
本当なら私がその相手だったのに……哀しくて悔しくて、涙を流すことしか出来ない。
今の樹くんは私に対する好意を完全に失っていることがハッキリ伝わってくる。
四回も告白してくれたのに……本当は嬉しかったのに、気付かなかったことがあまりにもやるせない。
ただ離れて、彼が他の人……七瀬さんと仲良くしてるところを見ることしか出来ない。
「樹くんは 先に私のことを好きだと言ってくれたのに……
私が……私の方が先に好きだったのに!」
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