十八話 元より純情ではない

「へぇ、そんなこと言ってたのかアイツ」


「うん…まぁそんなこと通用しないと思うけどね」


 麻緒まおとの話を終えた紗奈さなさんがアイツの言っていたことを伝えてくれた。

 要するにアイツはいじめをさせるように仕組んだわけじゃなくて、周りが勝手に暴走したらしい。

 それを止めなかったのは自分にその矛先が向くことを危惧したから…か。

 どっちにしろ他のやつらとイチャイチャしてた時点で話にならないな。俺の誘いも断ったわけだし。


 なんにせよアイツの言い分を知ることができたのは良かった、紗奈さんに感謝だ。


「ありがとね紗奈さん」


「いいよぉ♪だって樹くんの為だもん♪」


 お礼を言うと彼女は笑ってそう言った。

 繋いだ手に少しだけ力を入れると、彼女は少しだけ目を開く。


「っ…んふふ♪ぎゅー♪」


 そう言って抱きついてくる彼女はとても可愛い、お持ち帰りしても良いですか?

 たぶん大変なことになるけど。


「今度お父さんお母さんがいない時にウチに来てよ♪」


「えっ…」


 俺だって無知でも純情でもない、年頃の男女…しかもカップル、それが親のいない家に上がるなどその行為が何を意味するかくらいは分かる。

 つまりはそういうことだろう。


「あっ、でも勘違いしないでね」


「おっおう…」


 いけないいけない、下半身で物事を考えてた…。

 危うくヤリたい盛りの槍坂やりさか先輩のようになるところだった…。心の中でホッと胸を撫で下ろす。


「エッチする為に来てもらうんだから間違えないでね?勉強とか冷めちゃうし」


「へ?」


 いや間違ってなかったわ、勘違いしてると勘違いしてたわその気満々だったよ。

 というかストレートが過ぎるだろ破壊力抜群か?


「だから、私は樹くんと''そういうこと''がしたいの、下心 以外にないからね?ちゃんと気合い入れとくから♪」


「……そういうことはあまり言うべきじゃないと思うけど…」


 恥じらいはないんですか!とそんなこと思って紗奈さんにそう言ったのだが、彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべる。


「おやおやぁ?もしかして樹くんは女の子がみんな清純だと思ってない?」


「えっと…」


 どこか艶っぽさを孕んだ雰囲気に圧倒され言葉に詰まる。今までに感じたことのないオーラだ。


「他の子は知らないけど、少なくとも私は樹くんを''そういう目''で見てるし、それに性欲だってちゃんとあるからね?まぁこんなこと言えるのはキミだけだけど♪」


 そう言ってキスをしてくる彼女がとても大人っぽく見えた。どうやら俺は未だに子供だったのかもしれない。


「つまりしも物事を考えてもいいのか… 」


「私だけにね♪」


 彼女は笑顔でそう言った。せめてツッコミか欲しかったな。


 ー翌日ー


「今日ウチくる?」


「あまりにも唐突すぎる」


 確かに昨日遊びに行くという話をしたけどこんなに早いとは聞いていない。え、マジで?


「思い立ったらってやつだよ、ね?来てよぉ♪」


 俺もかなりチョロい男なのでこんな風に誘惑にも似たお願いをされたら断れるわけが無い。

 しかも '' そういうつもり '' で呼んでいるときた。

 無理です普通に断れません、喜んで行かせていただきます


「もちろん喜んで!」


「やった♪」


 快諾すると彼女は喜んでくれ、抱き着いてきた。


「いやぁ良かった、もしラノベみたいに''そういうのは大人になってから''とか言われちゃったらどうしようかと思っちゃった」


「さすがにそれはないよ」


 まぁあるあるだよなぁ…そうやってお清い付き合いを望みすぎた結果 彼女が寝取られるんだろ?

 最終的に寝取られた女はざまぁされるまでがテンプレ。

 まぁ元より '' 清い付き合い '' など望んでいないのでそうはならんが。


「そうだね、もしそんなことになったら私 寝取られちゃうもんね」


「同じこと考えてるね」


 そう言って二人で笑いながら今日も学校へ向かった。





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