クラスが資格に全落ちした話。

ひよ🐣

クラスが資格に全落ちした話。

「ねぇ、受かった?」

「ダメだった〜。そっちは?」

「落ちたよ〜。難しすぎるってあんなの」


「お前の番号無かったぞ」

「まじか……」


ザワザワとクラスが合否を報告し合う。そう、今日は危険物取扱者乙種第4類の合格発表日。

私の学校は就職進路者が大半のため資格を取る授業があり、クラス全員で試験を受ける。今回は危険物取扱者試験の中でポピュラーでもある乙種第4類を受けた。


合格者は、いなかった。


この学校は創立してから100年と少し経っているが、クラス全員が落ちるのは初めてだった。

「2〜3人しか受からなかった」という先輩の伝説を超えてしまった。なんてこったい。

今後、後輩たちにこの伝説が受け継がれていくのだと思うと複雑な気分である。ちなみに、今は「就職が年末までに決まらなかった学年」としてまた新たな伝説が誕生する噂がある。なんでだよ。


全落ちの原因は皆分かっていた。私は特に分かっていた。

それは授業を担当する先生のことだった。


その先生の授業はあまりにも分かりづらく、ただただ生徒を指名し物質なんかの表を黒板へ書かせて終わっていた。

なぜ火災の危険があるのか、どうして物質が変化するのかといったことは教えてくれなかった。先生はこう言って済ませていた。


「覚えなさい」「暗記しなさい」と。


確かに資格試験は暗記がメインかもしれない。しかしそれは、あくまで「受かるため」だ。

資格を取る理由は何だ?資格を取ることでその専門の知識を身に付けたい、仕事といった日常生活などに活かしたいからではないのだろうか?

ならば何故、先生は知識を身に付けるための「理解」をさせてくれないのだろうか?


「これはこういう理由でこうなってしまうからこうなるんだよ」と説明さえしてくれれば「なるほど!だからこれはこうなるんだね!」と理解できるだろう。理解ができるからこそ、試験が出来るのではないだろうか。

でも、もしかしたら先生はいちいち細かく説明するのが大変かもしれない。細かく話すのが苦手かもしれない。人には苦手得意があって当然だ。責めはしない。私だって苦手なものを無理やりやれと言われたらストレスでしかない。出来なかった自分を責め、そのことで頭がいっぱいになり、やがて鬱状態へと変化し果てには「生きる価値などない」と希死念慮に追い詰められる。私がそうだ。人にそんな思いなどさせたくない。


……しかし、先生はそんな人ではないと思った。

私の場合、自分を責めたりといったことは自分への攻撃、つまり内側にぶつけている。だから鬱状態になる。だが先生はすぐに怒る。怒鳴る。大声で叱る。先生は結構高齢だ、いわゆる「昭和の体育会系」みたいな……イメージなので差別とかではないことを言っておく。

だからハッキリと言える。先生は外側にぶつける、発散することができる人。40年以上勤務しているから今まで鬱などとは関わりがなさそうに見える。

ただ「そう見える」だけで人の心など分からない。実際は苦しいのかもしれない。決めつけは出来ない。


いやだったら授業を少しは改善してほしかった。

クラス全員が不合格となった時、先生は言った。


「まさか全員落ちるとは思わなかった。俺もようやく分かった。」


ここでクラス皆が「お?ようやく授業改善か?」と思ったのが間違いであった。


「君らが相当頭悪いことが分かった。」


いやいやいやいや!!!!!!!なんで!?!?!?!?!?

全員が落ちたんだから貴方にも少しは原因があるでしょうよ!!!!!!!!!!

全員だぞ全員!!!!!なんで自分の非を考えないんだよ!!!!!!!!!!


私はその瞬間、「あぁ、この人は何を言っても変われないのか」と机に突っ伏すように崩れ落ちた。スライディングツッコミのつもりだった。

その後の先生の授業はあまり変わらなかった。ただ、覚えさせるだけ。

だから私は諦めた。そして授業を寝て過ごした。いや、あまりのつまらなさにどう足掻いても寝落ちてしまった。興味を無くした瞬間スマホの電源が切れるように脳がシャットダウンしてしまうADHDの特性が入っているかもしれない。原因はさておき、とにかく毎回寝てしまい、名前を呼んでも何回呼んでも起きなかったと怒鳴られたことがあった。

そりゃ脳が電源切れてんだから1回電源ボタン押したところで起きないですって。授業に動きを付けてスリープモードを回避しないと……と謝りながら考えたが、言っても通じないなと思い「すみません」を繰り返すことしか出来なかった。「帰れ!」と怒鳴られた時は「あ、分かりました帰ります」と言いたかった。しかし私は不登校なのもあり、出席単位はギリギリを極めていて帰れなかった。帰りたかった……今でも思い出しては「帰りたかったなぁ」と思う。あの時そのまま帰っていれば、担任の先生に報告せず帰ることで学校は騒然、「先生に『帰れ』って言われたので許可になりますよね?」と意味不明に押し付けることで仕返しになったのに、と……怖いというかやばい奴だった。良かったぁ帰らなくて。


ちなみにそんな態度のせいか、テスト順位が学年4位だったのにも関わらず赤点となった。しかも先生が担当していた2教科も。

補習試験はほぼ文章記述で「この語句を使って自分の考えを書け」というものでしっかり書いたのに「こういう答えは求めてない」と自分の考えを否定された挙句、先生がほしい言葉ではないというだけで0点になった。

理不尽すぎないか、と私は学校で泣いてしまった。授業改善を理解しないどころか卒業や進路がかかった成績を理不尽に落とす。寝てるとか私にももちろん非があるが、それならば授業も補習テストももう少し考えてやってほしかった。それが何よりも悲しく、先生を信じられなくなった。


ここまでつらつらと先生への愚痴みたいに執筆して申し訳なかった。

しかしこんな先生がいるのは事実で、今も大学受験と卒業にあの赤点が引っかかっている。先生とは顔を合わせるだけで動悸がするほどの身体面にも影響が出ている。これを読んで共感が生まれたり、一人でも心の救いになれたら幸いである。

そしてもし教員の方が読んでいたら何とまぁ気分が悪くなったと思う。申し訳ない。しかしこれだけは覚えてほしい。

赤点だったり授業態度がとても悪かったりといった子がいたら、必ず原因があると思う。言い方が矛盾しているのは先程も言った通り人の心など分からない。優等生ほど鬱になりやすいことが証明されている以上、問題児だけが悩んでいるわけではない、だから決めつけることなど出来ない。本当に先生という職業は大変だなと心から尊敬している。あの先生には尊敬したくない気持ちもあるが。

私のように特性といった見えない原因かもしれない。悩みなく過ごしているかもしれない。けれど、周りから外れてしまうのは必ず原因がある。私は隊列だったり人が全く同じ動きをしているのに少し怖くなってしまう時がある。だから苦手で、でもそんな気持ちを必死に抑えて体育などの整列はなんとかやっている。

前置きが長くなってしまったが、とにかく言いたいのは「必要なのは怒るではなく理解」ということだ。しかし相手するのも人間だ、無理に理解しようとしなくていい。疲れているのを見るとこちらは申し訳なさでいっぱいになり、サポートも拒否するようになる。だから「せっかく理解してやろうと思ったのに」という地割れが生まれてしまう。

纏めれば「距離感が大事」ということにもなるのではないかと思う。全てを理解しなくていい、たぶん無理。「ここがこういう理由で困っている」、「じゃあこの時はこうしよう」、それだけでいい。理解するために無理しないでほしい、ストレスを抱え込まないでほしい。規則などで難しかったら遠慮せず相談してほしい、こちらだって出来るところは頑張りたい。周りに特別扱いの冷ややかな眼差しを集中攻撃されて痛かったりする。


「目が悪いから眼鏡を貸し出してやる」「目が悪くなる仕組みは知らない」、そんなイメージでいてくれたらいい。




ここまで読んで頂きありがとうございました。

私個人の意見であることを記しておきます。十人十色、隅から隅まで全く同じ考えの人なんていないのですから。

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