次回作品案
天宮終夜
プロローグ その①
異能者と呼ばれる不思議な力を持った人類がいる世界で隼人が異能者+吸血鬼。アリシアが異能者だが固有能力を持たない設定のお話。
下記から本編です。
海の見えるコテージ。
夜明け前になるとベランダに出て日の出を見ることがこの島に来てからの日課になっていた。
いつもと変わらない朝の光景。
今日は休みだから好きなだけ本を読むか。
それとも昼まで惰眠を貪るか。
そんな悩みはベランダの窓の開けて近づいてくる足音にかき消される。
いつもの朝が少し違う朝になったことを喜びながら甘いココアの香りに惹かれて後ろを振り返る。
「悪い、起こしたか?」
大判のストールを羽織り、片手には湯気が立ったマグカップ。
美しい銀色の髪は朝日に照らされてより神々しさを増し、淡い青の瞳はキラキラと輝いていた。
彼女の名前はアリシア=オルレアン。
この島を統治する七大貴族の一角。
オルレアン家の息女様は半覚醒状態なのか足取りが危なっかしい。
「いえ、そろそろ起きる時間でしたから。それに……たまには一緒に見るのもよいかと」
最近良く見るはにかんだ表情と無防備な姿を直視できず視線をもとに戻す。
「心配しなくてもどこにも行かねえよ」
「勝手に何処かへ行くのは隼人さんの専売特許ですから信じられませんね」
傍らまで来たアリシアはマグカップに口をつけた。
何気ない時間。
会話がないせいか波音がよく聞こえる。
普通なら微妙な空気になるかもしれない。
他人からすれば理解に苦しむだろうが俺達からすればこれが通常運転であり、居心地のいい空間で。
そしてこれ以上ない幸福な時間だ。
「ん……」
預けられた体重によって現実に引き戻される。
無意識でもマグカップを落とさない姿に苦笑しながら手早く回収する。
空いている方の腕でアリシアを抱きかかえた。
「隼人さ……ん?」
「嫌だったか?」
「いえ……大満足です」
限界だったのかアリシアはすぐに夢の中に戻る。
きっと、次起きた時には赤面してしばらく目を合わせてくれないんだろうな。
「もう少し警戒してほしいもんだ」
これが満月の夜ならば非人道的な行動に出ていただろう。
理性が本能を凌駕したことを自分で褒めながらアリシアをベッドまで運び布団をかける。
幸せそうな顔で寝ていることを確認し、早々に彼女の部屋を出た。
気分がいいので読書も二度寝もキャンセルしよう。
たまには時間をかけて朝食を作るかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます