第7話
風花と僕は新幹線を一度大阪で降りた。ここで、乗り換えをする必要があるのだが、今日中に長野まで行くことは不可能であるのでここで一泊することに二人で話し合って決めた。
「今日は、どこに泊まるのよ」
風花はそうつぶやく
それが、一番の問題なのだ。僕たちは、中学生であるためビジネスホテルなどには泊まれない。かといって、その辺で野宿というわけにも風花が一緒であるためにできないし、僕一人でも確実に補導され、実家に連れ戻されてしまう。
僕たち二人はただ茫然と駅前にあるロータリーで立ち尽くすことしかできなかった。
そんなとき、風花のスマホから電話の呼び鈴が鳴り響く
「ママからだわ」
風花は顔を青くして、全身が震え、その場にうずくまってしまう
「大丈夫か」
僕はすぐさま、風花に駆け寄る。その間も風花のスマホは鳴ったままだ。
「ママ、たぶんすごく怒っているわ」
風花の震えがさらにひどくなる
「ママね、怒ったらすごく怖いの。そして、私のことを殴るの、いつも自分の気が収まるまで」
風花はいつも長袖の服を着ている。僕はそれを日焼けをしたくないからやエアコンの風が寒いからなどの理由によるものだと考えていた。ただ、服の袖をめくるとたくさんの痣や何かで引掻かれたような傷跡がたくさんあった。それらの傷は必ず服を着ると隠れる位置につけられていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
風花は震え、泣きながらただそうつぶやきつづける。その姿は、いつも学校での様子からは想像できないほど痛々しく見るのを拒みたくなるようなものだった。
「大丈夫、大丈夫、、、」
僕は、風花の背中をさすりながらなんとか落ち着かせようと試みる
「今、君のそばに君にひどいことをする人は誰もいないよ。それに、何があっても僕が守るから。僕たちは、今は何も背負っていない。」
風花にそう言い聞かせると少し落ち着きを取り戻し始める
「そうだ、私の近くに今ママはいない、私は今何も背負っていない、、、、、、」
風花は自分にそう言い聞かせる
しばらく、時間がたち風花は完全に落ち着きを取り戻した。僕は、風花を近くのベンチに座らせ、何か飲み物を飲ませようと思い立ち、自販機に行こうとした。
「ちょっと、自販機に行ってくるから待ってて」
僕はそう言い、立ち上がる。
そんなとき、20代半ばの大学生と思わしき女の人が僕たちの方へ近づいてくる。
「あなたたち、さっきから見てたけど大丈夫?女の子の方なんてとても具合が悪そうだけど」
僕は、警戒して風花を守るように女の人の前に立ちはだかる。
「なんでもないです、関わらないでください」
僕は、女の人を拒絶する
「なんでもないようには見えないけど、、、。もしかして、家出でもしてきた?」
僕は、この人に警察にでも通報され、家に連れ戻されてしまうのではないかという考えがよぎった。このまま、連れ戻されてしまっては大変だと思い、僕は風花の手を引きかけ出した。
「風花、逃げるぞ」
僕たちは必死に走り続けた、あの女の人をまくために。途中まで、あの人もついてきていたが400メートルくらいで姿が見えなくなった。
「巻けたか」
僕はそうつぶやいて立ち止まり、風花の様子を見る。
「大丈夫か」
「いきなり走らないでよ、、、」
風花は息を切らしながら僕に非難の目を向ける
「連れ戻されるなって思ってつい、、、」
僕たちは、気まずくなりとりあえず近くのファミリーレストランに入って今後のことを話し合うことにした。
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