第5話

「ねえ、どこに行くつもりなの?」

僕は、彼女の手を引いて思わず駆け出していた。不安がないと言えばウソになる、でも、僕は今までにないくらい清々しい気持ちとなっていた 。


「とりあえず、駅に行こう。そこで一番遠くに行ける電車に乗ろう」

時刻は16時45分今日は、とにかく電車に乗って遠くまで行こう。財布の中には買い物に出かけている途中だったために、十分にお金がある。




駅について、切符売り場の上にある料金表を見る。僕らが住んでいるのは、地方にある中枢都市で一応新幹線も通っている。

「新幹線に乗ってとりあえず東京に行こうか」

僕は風花にそう問いかける

「東京は嫌よ。私、ここに転校してくる前は東京に住んでいたの。だから、そこに行ったって、何も変わらない気がする」

確かにそうだ、彼女は今彼女が背負っているものから解放されたいから僕の手を握って一緒に飛び出してくれたのだ。元々いた場所に帰ってしまってはなんの意味もない。

「じゃあ、北海道にでも行くか」

僕は、何気なくそうつぶやく

「私、ここに行ってみたい」

彼女は、駅校内に貼ってあるポスターのきれいな花畑を指さして彼女はそういう

「ああ、コスモスか。確かにきれいだよな、今ちょうど時期的にもちょうどいいし」

僕はそのコスモス畑がどこにあるか確かめるべく、そのポスターに何かヒントがないか凝視する。

「長野県か。君、長野にはいったことあるか」

「一度だけ、コンクールでいったことがあるは。まあ、その時は観光も何もできなかったけど」

彼女は長野に行ったことがあるみたいだが、そこにはほとんど思い出がないみたいであるため、今回の行き先としてはピッタリな場所であろう。

「よし、長野に行こう」

僕は彼女にそう宣言する

「わかったわ」

彼女は少し不安そうな瞳をしながらも、その奥には何らかの期待の念がこもっているように感じた。


行き先は決まった。あとは、そこに行くための手段を決めなければならない。


「まず、新幹線で大阪まで行って、大阪から敦賀ってところまで行く。そこで泊まって新幹線で翌日には長野に着くみたい」

彼女はスマホを見ながら僕にそう言う。

「わかった、切符買ってくるよ。少し待っていて」

僕は、彼女のことをポスターが張ってある柱の前で待たせて切符を買いに券売機に向かう。

券売機に行き先を打ち込み金額を確認すると一人当たりおおよそ2万7千円で二人で5万円オーバーだ。正直言って中学生の僕にこのような大金はきついところがある。ただ、今まで貯めたお年玉を近くのコンビニのATMでおろして何とか事なきを得た。


「お待たせ、じゃあ行こうか」

「ええ、切符ありがとう」

僕たちは今までのことすべてから解放されるために、自由を求めて17時発の新幹線に乗って長野県に旅立った。

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