第5話試練

「やった…!」

 リョウが息を切らしながら言った。私たちは勝利を確信し、仲間たちと共にその場を見渡した。

 しかし、戦士が倒れた瞬間、周囲の空気が変わった。敵の士気が一気に崩れ、彼らは逃げ出そうとした。

「追いかけるぞ!」

 私は叫び、仲間たちと共に敵を追いかけ始めた。

 その時、ふと振り返ると、倒れた戦士の体から青白い光が再びほとばしり出し、周囲を包み込んでいくのが見えた。

「リョウ、あれを見て!」

 私は叫び、仲間たちに注意を促した。

 光は次第に強くなり、まるで生きているかのようにうねり始めた。倒れた戦士の周囲に集まった光は、彼の意志を受け継ぐかのように、形を変えながら私たちに迫ってきた。

「これは…何だ?」

 リョウが不安そうに呟いた。

「分からない。でも、警戒しよう!」

私は答え、仲間たちに周囲を警戒するよう指示した。

 その瞬間、光が一気に爆発し、周囲の空気が震えた。私たちは思わず後ろに飛び退き、光の中から新たな存在が現れるのを見た。

 それは、先ほどの戦士とは異なる、より大きく、威圧感のある姿をしていた。青白い光をまとったその存在は、まるで神々しい力を持つかのように輝いていた。

「お前たち…よくも私を倒したな。」

 その存在は低い声で言った。

「誰だ…お前は?」

 私は恐れを抱きながら尋ねた。

「私はこの地を守る者。お前たちの力を試すために現れたのだ。」

 その言葉に、私たちは一瞬言葉を失った。「試す?それなら、私たちは負けない!」

 リョウが勇気を振り絞って叫んだ。

「そうだ、私たちは仲間だ。どんな試練でも乗り越えてみせる!」

私は続けて言った。

 その存在は微笑み、青白い光がさらに強くなり、周囲の空気が震えた。私たちはその光に圧倒されながらも、決して後退することはなかった。


「お前たちの勇気、そして絆は素晴らしい。しかし、試練はまだ終わっていない。」

 その存在は言葉を続けた。

「私が与える試練を乗り越えられれば、お前たちの力を認めよう。」


「試練?どんなものでも受けて立つ!」

 リョウが力強く答えた。


「では、始めよう。」

 その存在が手をかざすと、周囲の景色が変わり始めた。私たちは一瞬、目を閉じ、次に目を開けると、見知らぬ場所に立っていた。そこは、暗い森の中で、霧が立ち込めていた。


「ここは…どこだ?」

 私は周囲を見回しながら言った。


「試練の場だ。お前たちがこの森を抜け出すことができれば、次のステップへ進むことができる。」

 その存在の声が森の中に響いた。


「どうやって抜け出せばいいんだ?」

 リョウが不安そうに尋ねた。


「道はお前たちの心の中にある。恐れず、進むべき道を見つけるのだ。」

 その存在はそう言い残し、姿を消した。


「心の中に…道がある?」

 私は考え込んだ。

「どういうことだろう?」


「おそらく、私たちの内面と向き合う必要があるのかもしれない。」

 リョウが言った。

「それぞれの恐れや不安を克服しなければならないのかも。」


「そうだね。私たちが直面しているものを理解し、受け入れなければならない。」

 私は頷いた。

「まずは、進んでみよう。」


 私たちは森の中を進み始めた。霧が濃く、視界が悪く、周囲の音が不気味に響いていた。私たちは互いに目を合わせ、無言のまま進んでいく。

「何か感じるか?」

 リョウが小声で尋ねた。

「うん、なんだか心の奥に不安が広がっていくのを感じる。」

私は答えた。

「この森は、私たちの恐れを具現化しているのかもしれない。」

「それなら、私たちが直面するべきは、自分自身の恐れだ。」

リョウが言った。

「一緒に乗り越えよう。」

 その言葉に勇気をもらい、私たちはさらに進んだ。すると、突然、霧の中から影が現れた。それは、私たちの過去の失敗や恐れを象徴するような姿だった。

「お前たちは、過去の自分から逃げている。」

 影が低い声で囁いた。

「本当にそれを克服できるのか?」

「逃げない!私たちは前に進む!」

 私は叫び、影に向かって突進した。

「お前の恐れは、決して消えない!」

 影は笑いながら言った。

「それでも、私は立ち向かう!」

 私は心の中で決意を固め、影に向かって力を込めた。

 リョウも私の横で構えを取り、共に影に立ち向かう。

「私たちは仲間だ。どんな恐れも一緒に乗り越える!」

 その瞬間、私たちの心の中から力が湧き上がり、影に向かって放った。青白い光が私たちの周囲を包み込み、影は次第に薄れていった。

「やった…!」

 リョウが息を切らしながら言った。

「でも、まだ終わっていない。」

 私は周囲を見回しながら言った。

霧が少しずつ晴れ、前方に新たな道が見えてきた。


------------------------------------------------------------------------

脱字が合ったら報告して下さると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る