「事象の地平に赤く輝く家族愛」
★★★ Excellent!!
家族というのはある意味、ひとつのブラックホールなのかも知れません。
その中心に向かう毎にまるでスパゲッティの様に引き伸ばされ、永遠に抜け出す事のできない「黒い愛」は、外側から観測すると時間が止まったように見える。
しかし、この物語の家族はあえて、その黒い穴に向かって旅立ちました。
物語の中心はその道中、宇宙船内のコールドスリープ装置の中で眠る家族それぞれの夢です。
視点を変えながら語られる(または騙られる)家族のそれぞれの想いは、小惑星帯の様に入り組み、銀河の彼方の未知の星の様に、なかなか真相には辿り尽きません。
ひとつひとつの夢の中、母星での回想シーンはレイ・ブラッドベリの「火星年代記」を思わせ、叙情的な文章により郷愁を誘い、故郷との何千万光年という距離を強調します。
そんな中、突如特異点の様に明らかにされた真実は正にシンギュラリティ。古今東西で語られる超新星の様なボーイミーツガール。
──林檎の中身が空洞だったなんて、彼もきっと気が付かなかったんだろうね。
クライマックス、父親のこの言葉に心を打たれる読者は、胸の内にそれぞれの小さなブラックホールを抱えているのかも知れません。それは現代が抱える抜け出す事の出来ない黒い穴。
しかし、この物語を読み終わった時、ブラックホールに消えた家族の、そしてわたし達の愛は光の速度を超える、そう思わせてくれた作品でした。
大切な人を失ってしまった方、日々の暮らしの中で虚しさに苛まれる方、それでも見えない未来に向けて一歩を踏み出す、そんな人達にこそ読んで欲しい。
物理法則を超えた、救いの物語だと思います。
👍️0 ・2024年9月1日 9:10
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レビュワー
ぬりや是々
@nuriyazeze
漆を塗ったり小説を書いたりします。
レビュー投稿 35件
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このレビューの作品
ホイラー家の小旅行
作者 呉区 李剛 作品情報 〉
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その他のおすすめレビュー
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★ Good!
空虚という意味のブラックホール ──みざりぃ
文章は確かに綺麗ですが物理知識に乏しくあくまでSF風という感じ。肝心のストーリーも矛盾が多く中身がない空虚な··· 続きを読む
👍️5 ・2024年9月1日 9:13
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