「あかつきづくよ」
コロ······。
紫檀か黒檀か、とても硬い樹木同士が触れ合う音に似ている。小学生の時の音楽発表会で少し憧れたあの木琴の、鍵盤と鍵盤の間の隙間をマレットで撫でた様な。
窓を開けても無風、音だけが暗い部屋に飛び込んで来る。寝苦しくて体を返すと、枕元で充電していたスマホに手が触れた。無意識に、誘われるように電源を入れ検索。
夏、夜、鳴き声。
暗い部屋ではスマホの光は眩しすぎる。片目でさらに目を細めているものだから、文字入力ボタンを押し損なう。なちゅよるなきほえ。
ジィッ。
あれは蝉、寝ていたところを何かに起こされたらしい。暗い中でも目が利くのか、心配になるがそういえば街灯も今では無駄に明るいLEDだ。
コロ······コロロ。
いくつかスマホで聴き比べると、どうやらカエル。庭のどこかいつも同じ場所、毎晩聞くのに姿を見たことがない。スマホの電源を落とすと部屋は思いの外明るく、天井の張りや木目が薄っすら見える。
明日も早いのだから、と自分の眠気に言い聞かすがなかなか言う事を聞かない。もう少しもう少しと駄々をこねる幼子みたいだ。
落ちては浮かんでを繰り返し、目を薄っすら開ける度に部屋の輪郭がくっきり描き込まれる。
もう諦めて小説サイトでも覗こうか、ひとつ話でも捏ねてみようか。
5時、ブラインドの隙間から見える空はもう明るい。月はまだ白く光っているのか。
一際、大きな鳥の鳴き声がした。あの鳥は調べなくても耳馴染みだ。今年の夏もよく鳴いている。
欠けたか?
大丈夫。そう答えて安心して目を閉じた。
あと一時間は眠る事が出来る。
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