立てました。
「どしたの? 青い顔しちゃって」
放課後、ふらふらとイマジナリー文芸の部室に入るなり、イマジナリー部長に声をかけられる。
部長はイマジナリーノートを開いて、イマジナリー文化祭にて制作する、イマジナリー部誌の草案を書いているところだった。
「イマジナリー自主企画、立ててきました」
「ふふっ、イマジナリーばっかじゃん」
心配をよそに、部長はとても楽しげで、良い。
部誌を作る、などと大見栄を張ったはいいが内心、不安はつきまとう。参加者が集まらなかったら、いや、そもそもこの企画がスベったら。
そうやって思うと仕事も、じゃなくて授業も手がつかず放課後。青い顔のまま机に伏せていると、その横で、部長が自主企画のページを閲覧している。
【イマジナリー部誌掲載作品募集】
https://kakuyomu.jp/works/16818093083469966727/episodes/16818093084149317543
「わ、早速参加の希望来てるよ」
「本当ですか?」
伏せていた顔を上げ、部長のスマホを覗き込むと「ち、近いよ?」と言われ、気づけば目の前には紅い頬。赤く染まった部長の頬は、まるで秋に色づく葉のようだ。
夏の間はあんなにも、青々繁ったケヤキの枝葉も、今はすっかり色づいて。秋の陽射しに透かして見れば、赤琥珀のように淡く燃える。
9月のケヤキ通りでは、小粋なジャズが奏でられ、横目で眺めるポリリズム。遊歩道に建てられた、『夏の思い出』を始めとする三体のブロンズ像も、スウィングしてるみたいに見える。
「秋来ぬと、目にはさやかに見えねども?」
「風の音にぞおどろかれぬる」
そんなふたりの、コール&レスポンス。
よし良い。リズムにノッて来た。
「全然、集まらなかったらどうしようかと」
「その時はイマジナリー幽霊部員にも声をかけるしね」
え、それってつまり、結局ひとりで全部書くという事では······なんて不粋な事は言わない。
部長から「書いて?」と言われれば、例えひとりで10本書くことになってもその覚悟だ。とは言え、参加を希望してくれるイマジナリー部員の方の応援は、本当にありがたい。
そんな事を考えていると、部長が鞄から一冊の冊子を取り出し「じゃん♪」と言う。
その表紙には『空、想ふ』と手描きのレタリング。初めての、そして部長と一緒に作るのは最後になるだろう、イマジナリー文芸部の部誌だ。
「こうして形になると、否が応でも気分が上がりますね」
「あ、まだ中は見ちゃだめっ」
白紙の冊子をペラペラと捲ると、ぱっとそれが手の中から消えた。一瞬だけ見えたのは「イメージしてみて下さい。」の書き出し文。とても良い。あとはタイミングを見て公開し、イマジナリー自主企画期間内にはページが、物語が追加される。
部誌の方は、取り敢えずイメージ出来たとして、もうひとつ、部長発案の出し物について。
「体験型脱出ゲームみたいなのを考えてて。文芸部的に言うと」
「ゲームブック?」
「そうそう。と言うわけでキミにその雛形を作って貰います」
まあ、そうなるだろうな。腕組みし苦い顔をしていると、部長がこくん、と首を傾げる。眼鏡の奥にはいたずらな上弦の月。
「書いて?」
全く、部長はずるい。そして良い。入部当初は飄々としていた印象の部長も、最近富に愛らしい。キャラクターが自由に動き出す、連載モノによくある現象だろうか。
さて······。
A.部長のお願いを聞くなら······
https://kakuyomu.jp/works/16818093083469966727/episodes/16818093084241222567
B.部長のお願いを断るなら······
https://kakuyomu.jp/works/16818093083469966727/episodes/16818093083470363009
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