「とある雑貨屋における店主の日常」



 商業区画「ハビラ」

 階段の多い入り組んだ街並みに赤白の幕や旗、果ては暖簾や洗濯物がはためいて、日々迷子を量産する。

 中でも見晴らしが良い一等地には冒険者御用達の店が並んでいた。武器屋、防具屋、食料品店、大衆食堂、酒場に地図屋など20店舗くらいだろうか。一番大きな入口からそこへと続く道の途中、幾つか登る階段のうち1つにコトワリの店はある。

 階段下の秘密基地のような部屋に、所狭しと置かれた雑貨が溢れ出す。ついでのように置かれた看板は存在感がなく、一見さんが雑貨屋だと気付くことはないだろう。

 通りは多いが目立たないし狭い。だから家賃も安い。コトワリには金がないのだ。生活に困ることはないが常に金欠。ご覧の通り資材はあるが、売れなければ金にはならないのだから。

 しかし金が無いのは客も同じ。

「頼むよ、君くらいしか買ってくれる人なんていないんだ」

 午前中。開店から小一時間経って現れたその日最初の客が、顔の前で手を合わせる。コトワリは見慣れた光景にため息を吐き、読んでいた本を閉じて指先でカウンターを叩いた。

「唐突なガラクタの押し付け、いつになったらやめてくださるんですか?お客様」

「ガラクタだなんて。一応ダンジョン産だよ?君ならほら、スキルでなんとかできるだろう?」

「こんなもの、精製したこともありませんよ」

 笑顔が交わされているとは思えぬ空気が漂う。と、いうのも客が持ってきたのが《古のポーション群》だったから。瓶は風化や石化の影響で曇りきり、中の色がほんのり透けて見える程度。薄ピンク色の何かが入ったそれらは苔や蔦や土が張り付き、見た目は化石と大差ない。

「したことないなら、してみたらいいじゃないか。いいだろう?ほら、頼むよ…今日の飯代もないんだ」

 押し出すついでに男が栓を開けてみると、中身はすっかり固形化していた。なんだか不思議な香りすらする。慌てて栓を閉め直す男をじっと見据え、コトワリは無言の圧をかけた。

「……」

「………だめかな?」

 対して男は愛らしく小首をかしげて見せる。おっさんらしからぬ仕草だが、コトワリごときの圧を吹き飛ばすには十分すぎた。

「はぁ…分かりましたよ。その代わり、次はありません。それと」

「それと?」

「無用の長物が完成してしまった場合には、わかりますよね?それなりの覚悟をしておいてください、お客様」

 念をおして金を握らせると、男は礼を言って満足そうに駆けていった。その背中に小さなハロを背負って。



 ハロとは、スキルを行使するために必要な力で、持って生まれた者は体のどこかに魔法陣のようなものが顕現する。コトワリの場合は右手首。桃色に輝く、◯の中に□を描いた光の輪がそうだ。

 今しがた訪れた客と大差ない、小さく淡い光。

 ハロのサイズは力の大きさと比例する。目に見えて小さければ当然なめられる。

 勿論、彼やコトワリよりハロが小さい者もいる。自分より力の小さい者を見下すか哀れむか庇護するか、それこそ対応は様々だ。

 ダンジョンに潜るにも、仕事をするにも、食べていくのにも、スキルの使い勝手とハロの大きさはついて回る。どちらにせよ、上手く立ち回らなければ食いっぱぐれることに変わりはないのだが。

「早く職をみつけてくれることを祈るばかりですね」

 独り言がてら、最近クランをリストラされたという彼が残した遺物を脇に追いやっていると、入口の鈴が控えめに音を立てた。

 振り向くコトワリを見て、戸を押した本人は微妙な笑顔になる。

「なんか、機嫌悪そうだな。どうした?話聞こうか?」

 所在悪そうに雑に束ねた後ろ髪をいじるのは、同じクランのイロハだ。コトワリは肩を竦めて苦笑を返す。

「いえなにも、いつも通り金にならないものを押し付けられてしまっただけです」

「あんた、なんだかんだ人がいいから」

「脆弱なもので。圧されると抵抗できないんですよ。無理に断って武力行使されてもたまりませんし」

「そんな時は俺に声かけてくれていいよ。こう見えて用心棒やってたこともあるし」

「それはどうも。ところで用があるのでは?」

「そうそう。矢が足りなくなってきて。そのものじゃなくても、良さげな素材ないかと思って」

 イロハは身を捩って背負った箱を示した。確かに、飛び出た矢羽の数は心もとない。手入れしているところはよく見るし、扱いも丁寧だがどうやっても消耗品だ。減るのは仕方がないだろう。

「あるにはありますが金属製なんですよ。すみませんね。素材でしたらその辺りに。いいのがあれば持っていってください」

「ありがとう。見させてもらうよ」

「どうぞごゆっくり」

 店内を見渡すイロハの背を覆うほどの大きなハロを見ないように、コトワリは本に意識を戻した。コンプレックスもあるが、力の大きな者に自分とは違う種の悩みや苦労がある事を、それなりに理解しているつもりだから。

 首にかけたままだった眼鏡を掛け直し、コトワリは文字を追う。イロハが無意識に気配を殺しているせいか、いつの間にやら没頭してしまった。20分程して厳選し終えたイロハが落とした影で顔を上げる。

「長居してすまない。これにするよ」

「構いませんよ。こちらこそ大したお構いも出来ずにすみませんね」

「いやいや、おかげでいいのが見つかった。また顔出させてもらうから」

「ありがとうございます。ご贔屓にどうぞ」

 嬉しそうな、安心したような笑顔で退出するイロハを見送ると、不思議と店が淋しげに感じる。

 コトワリは栞をどかしながら、矢を作る彼の姿を脳内のクランの庭に配置した。



 午前中の店番はそのまま殆どが読書に費やされる。



 12時から小一時間、軽い昼休憩を終えて眠気タイムも過ぎた頃。前触れもなく軽快に鈴が鳴る。

「こんにちはー」

 明るく間延びした挨拶と共に入ってきたのは、やはり同じクランのアロだ。小脇にドーナツとPIYOが入った篭を抱えている。彼は日々エデンを散策しているらしく、その一環としてよくコトワリの店にも顔を出す。

「ごきげんようアロさん。ちょうどよいところに現れてくれましたね」

「なになにー?なにか液体にするのー?」

「話が早くて助かります。これなんですが…いけますか?」

 脇に置きっぱなしだったポーションのようななにかを示すと、アロは軽く後退した。

「なにこれー、化石ー?」

「一応、ポーションらしいのですが」

「またまたー」

「ぼくも押し付けられただけなのでね…そんな目で見ないで頂けませんか?」

「いやいやー、なんでこんなもの買っちゃうかなぁって、ちょっと疑問だっただけー」

「ちょっとした好奇心ですよ」

「ふーん…まあ、いいよ。任せて」

 アロが羽根のような上着を捲るのを見て、コトワリはガラス製の四角い器(大)を用意する。中身が不明なので下手な容器は使えない。とはいえダンジョンの浅瀬にそこまで不穏なアイテムは落ちていない筈。わざわざ場所を移す程ではないだろう。

 手袋をして、とりあえず1本。1ダースの中から引っこ抜く。ガラス瓶を散らばらないように割ってある程度取り払い、器に入れて蓋をした。その間に、アロが扉を開け放ち換気の準備をしてくれている。

「よし、いいー?いくよーチェーンジ」

 掛け声の後、変化が起きた。化石となったポーションが息を吹き返したように液体になる。これがアロのスキル「状態変化」だ。普段コトワリが手作業でやるべき工程を一瞬で済ますことができるのもそうだが、他にも用途は多岐に渡るらしい。

「何度見ても不思議ですね」

「そうー?氷が溶けるみたいな感じだよー」

「確かに、その通りなんですけれど」

 続けて残りも処理をして、アロに全てを液体に変えてもらった。ふいーと汗を拭う彼に、コトワリはサイダーを手渡す。

「冷えていませんけど、よろしければ」

「大丈夫ー自分で冷やせるしー」

 コトワリが容器からビーカーに液体を移送する間に、アロは(過程は見ていなかったのでわからないが)冷やしたであろうサイダーを美味しそうに飲んだ。

「できたら見せてねー」

「勿論です。その時に相応の対価も支払いますのでご安心ください」

「別にいいのに〜」

「こういうのはきちんとしておいた方が、お互いのためだと思いますので」

「ま、コトワリがそう言うならー。そのかわり、俺もおもしろいの見つけたら持ってくるから、精製してよ」

「ゲテモノでなければいくらでも」

「その時は対価も支払うから安心してー」

「期待しておきます」

 カウンター越しに笑い合う間にも、謎の液体の半分がフラスコに収まる。

 コトワリのスキルは「精製」。主に液体を操り不純物を取り除く性質を持つ。その為魔法で液体を容器から容器に移したり、一滴だけ宙に浮かべるなど簡単な液体操作は可能だ。攻撃魔法にしたりシャワーのように高速移動させたりはできないが、紅茶やコーヒー、カクテルなどを作るときには便利である。

 アロはカウンターに顎をおいて暫くその様子を眺めていたが、サイダーの瓶が空になると軽快に腰を上げた。

「ごちそうさまー。これ、お礼ね」

 空の瓶にドーナツを1つ潜らせて、アロは手を翻す。

「散策続行ですか?」

「そうだねー。でも3時にはクランに戻るよー?おやつの時間だし」

「ご苦労さまですね。ぼくも3時になったら頂きますよ。ありがとうございます」

 コトワリが顎でドーナツを示すと、アロは指で輪作って笑顔で去った。



 数分後。

 やっとのことで液体のフラスコ詰めが終わる。

 手の平大のフラスコに6割程度が適量。それが全部で5つになった。取り急ぎ1つを腰のベルトに据え、精製を始める。

 いつもポーションを作るときには2通り。鉱物や薬草を粉末にして精製水に溶かし、更に精製して純度を上げるか。効力が弱いポーションを精製して濃度を高めるか。

 今回の場合は、混じってしまった泥やガラスを取り除き、新しい瓶に詰め替えて、中身を鑑定してもらう。

 コトワリには自分が精製したものがなにになるか分からない。薬品か毒物かは、鑑定スキルを持つ人に見せてやっと分かるのだが。勿論、専門の店に行って鑑定して貰うには金がかかる。鑑定の結果次第で利益がマイナスになる可能性も十分あるわけだ。

 加えてコトワリのハロは少ない上に、出力が低いので精製に時間がかかる。今回のように少ない不純物を除く程度ならそこまででもないが、毒沼を飲めるようにしろと言われたら倒れる自信がある。

 精製の傍ら、ため息混じりに後片付けをしていると、パタパタと忙しない足音が聞こえてきた。続けて鈴と用件が同時に押し寄せる。

「コトワリぃ、コレ達なにか分かる?分からなくても買い取ってくれる?」

 入店したのは巨大なリュックと荷物…を抱えたティトンだった。彼も同じクランの一員で、クランルームの屋根裏に住んでいる遺跡オタクだ。持ってきたのはダンジョンで得たものの一部だろう。

「また随分と溜め込みましたね…」

「いやぁ…製図に夢中で戦利品のことはすっかり忘れてたよね…早く書いちゃわないと忘れちゃいそうでさぁ」

 なははと笑うティトンに成る程と頷いて、コトワリはサイダーの瓶からドーナツを取りカウンターを空けた。

「同盟のよしみです。とりあえず見せてください」

「やったー助かるよ」

「まだ値が付くとはいっていませんよ」

「それは分かってるけど、見てもらえるだけで助かるは助かるからさ」

 山盛りの効果音と共に積まれたアイテムをドーナツ片手に仕分ける。ティトンはその様子を蒸かし芋(何故かポケットから出てきた)を食べながら見守っていた。

 雑貨屋の店主として、市場での物の価値は勉強している。ドーナツを食べ終えるまでに仕分けたうちの8割をリュックに詰めなおしながら、コトワリは話す。

「この辺りは鑑定が必要ですね。用があるのでついでに見てもらいましょうか」

「ほんと?助かるよ!」

 8割のうち鑑定する1割を手元に寄せ、リュックを返した。中身は買い取り専門業者に回せばそこそこの資金になる筈だ。あのと2割は。

「それと、こちらはガラクタですね」

「ガラクタ」

「ぼくの方で買い取ります。鑑定代と相殺で構いませんか?」

「ガラクタなのに?買い取るの?」

「まあ、手入れすれば使えるものではありますから」

「コトワリって勿体無い病かなにか?」

「失礼な…ただ物を大切にしているだけです」

「ほんとに?無理してない??」

「していませんよ」

 ティトンの言うことは尤もだが、そもそも値のつき難いガラクタを扱うのがコトワリの店だ。とはいえそれを明言したくはないので適当に誤魔化すしかない。不服そうなティトンの眼差しから目を逸らし、コトワリは密かに舌を出す。これ以上口を開けばボロがでそうだ。

「まあいいや、お言葉に甘えて置いていくけど。鑑定代、足が出たらちゃんと請求してよね?」

「承知しました」

 納得していないが引いてくれたティトンに、コトワリは安堵して頭を下げる。ティトンはにっと笑って、別の場所から取り出した蒸かし芋を置いてアイテムを売りに向かった。

 紙袋に収まった芋が冷めないうちに食べてしまいながら、精製を終える。ドーナツも芋も小ぶりだった為、おやつにはちょうどよかった。そもそも昼食も小さいサンドイッチしか食べていなかったから。今度いいおやつを見つけたら多めに仕入れておかなければと、コトワリは思案した。

 考える片手間手早く支度して、カウンターを乗り越える。店頭のものを適当に中に詰め、施錠と「休憩中」の看板をかけ、階段を上った。



 1時間後。3時少し前に戻ると、店の前で小柄な人が待っている。彼はコトワリに気付いて子供らしからぬ笑顔を向けた。

「また物が増えたな」

 背伸びをして店内を覗くのはクランの盟主、梟だ。見た目は愛らしい5歳児くらいだが、中身はきちんと大人らしい。

「珍しいですね。取り立てですか?」

「いやなに、木べらが古くなったので買い換えようと思っただけだ」

「すみませんね、いつも振舞って頂いてばかりで」

 鍵を開けて戸を支えながら言うコトワリを、盟主は下から見上げた。

「まだ気にしているのか?いつまでもいてくれていいと言ったはずだ」

「とはいえ、ずっと居候というわけには…」

「お前には欲しいものがある」

「ええ、まあ」

「クランは止まり木。いつでも帰ってきたらいい」

 いたずらっ子の笑みで諭され、困ったコトワリはまた小さく舌を出す。この盟主には諸々の事情を知られているので逆らえない。そもそも拾って貰った身で逆らえる筈もない。

「これがいいな」

「流石、お目が高い」

 入店するなり小さな掌が掴んだのは、この辺りでは手に入りにくい竹製のヘラだ。丈夫で熱や水分に強く、見た目も良い。

「今夜は豚汁と焼魚だ。ひじきと切り干し大根もあるぞ」

「それは楽しみですね」

 へらを横に振りながらカウンターに代金を乗せた盟主は、「気を付けて帰ってくるがいい」と後ろ手に手を振った。

 コトワリは苦笑して荷物をカウンターに乗せ、合間を縫って飛び越える。

 ティトンの持ってきたものはどれも1級品だったが、精製品の鑑定結果は生憎なものだった為、食事にありつけるとなれば感謝しかない。

 自分が一体何を精製していたのか。答えを聞いて一番がっくりしたのはコトワリ自身だ。馴染の鑑定士曰く「うん、シロップのようだね。カクテルやかき氷に最適」とのこと。ポーションですらなかった。よくある話なのかもわかりやしない。

「………フラスコの予備を埋めておくわけにもいきませんしね」

 結局残りも精製しなければならないのが、なにより惨めだ。精製したところで売れる気がしないのもまた辛い。

 今日の売上はイロハの矢の素材、午前中ふらっと現れた人が買っていった謎の雑貨、アロが来る少し前にポーションが3本、盟主のへら。以上である。

 元より営業時間も決まっておらず、店主がダンジョンに潜っている日は閉まっている謎の雑貨屋に固定客が多いはずもなく。口コミでひっそり広まりつつあるポーションの性能も眉唾扱い。来客数もまちまちで、売上も日によってまちまちで。今日なんかは身内に助けられただけで徒労もいいところだ。

「今月の家賃…払えますかね…」

 帳簿にもなりきらない手帳を前に、内職の検討をするコトワリの元に救世主が現れる。それは乱暴に店の戸を開き、大股2歩でカウンターに取り憑いた。

「おい!噂で聞いた!あるんだろ?ここには、あれが!」

 やって来たのはクエルクスという缶詰マニア(?)……例に漏れず身内である。今日はどうもそういう日らしい。高身長の彼は体を曲げてカウンターに両手をつく。迫力に圧されながら、コトワリはおもむろに眼鏡を外した。

「あれ…ああ、焼き鳥の缶詰……」

「売ってくれ!!」

 食い気味な進言に苦笑したコトワリは、背後の棚から缶詰を3ダース出してカウンターに乗せる。

「勿論構いませんよ。いくら出せます?」

「あ゛?カモろうってのか?」

「はは、冗談ですよ。元々他より少々お高いだけで」

「背に腹は代えられん。よこせ」

「毎度どうも」

 心の内で助かった…と安堵しながら投げられた札を丁寧に数え、まとめて木箱を抱えるクエルクスに問いかけた。

「ところでもう店仕舞いなのですが。クエルクスさん、この後どうされるんです?」

「ん、そうだな。このままクランに帰るつもりだ。コレも積みたいし」

「ではご一緒に。今夜は豚汁だそうですよ」

「ほう…また腹はち切れるほど食わされるのか」

「楽しみでしょう?」

 精製前のシロップをカバンに押し込み簡単に片付けて、コトワリはクエルクスの抱える木箱を1つ請け負う。クエルクスは「落としてくれるなよ」と礼を述べつつ話を繋げた。

「まあ…正直お手柔らかに頼みたいがな」

「あれだけ筋トレしているんです。お腹もすきませんか?」

「限度があるだろ限度がっ!大体お前があんまり食べないから、こっちが余計に…」

「お腹、はち切れたら困りますし」

「あ゛??」

 戸締まりしている間に夕日も沈んでしまった。処々に灯る街灯を頼りに、2人はやいやいクランを目指す。

「まあまあ、盟主がおかずを作りすぎないうちに、止めに帰りましょう。イロハさん達が歯止めをかけてくれている事を祈りながら」

「そういう問題か?そもそもなんであいつはそんなに大量に作りたがるんだ…」

「畑、収穫期ですから」

「あー…もういっそ売りさばけばいい。あんたの店で」

「それもいいですね」

「いいのかよ!あんた何屋だ!」

 ヤケクソにきちんとツッコミが飛んできたことに安心しながら、コトワリは当然のように回答する。

「雑貨屋ですよ」

 見栄で雑貨屋と言い張ってはいるが、元はただのポーション屋だったことは、墓まで持っていくつもりのコトワリであった。

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