第11話 さささと私

私とは何かを一言で表すことはできないが


私は確かに存在する


私は大地と共に生きて


空を見上げて息をしていた


私は私


私よ私


家族と火を囲み 友と歩いた


年長者の言葉に耳を傾け 年少者に語った


どれほどのものを受け取り


どれほどのものを返すか


永遠に豊か


それが私の世界だった



私とは何かを一言で表そうとして


私は私を分解した


私は細切れに分類されて


数えきれないほどのラベルを貼られた


のりの痛みや痒みは酷いが


いつしかそれにも慣れてしまった



私とは何かを一言で表すことはできないが


私は確かに存在した


私は売ったり買ったりできるもので


どちらが良いとか悪いとか


品定めできるものである


朝になれば憂鬱で


昼になれば怒りが増して


夜になれば悲しみが襲う


私の魂を受け止めてくれる大地はもうない

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