第31話
あずき先輩のことを積極的に知ろうと思ったことはないけど、それでも共同生活……そう、あくまで共同生活をしていれば多少は見えてくるものがある。
なのにあの先輩ときたら、新しいことが分かると余計先輩のことが分からなくなる。得るものが断片的過ぎるってのもあるんだろうけど。
クラスの子が先生の発問に答えるのをぼんやりと聞きながら、あずき先輩のことについて考えていた。
どうして弟くんのためにお店を建てたんだろう。
ふとした時に見せる、あの感情の抜け落ちた表情はなんなんだろう。
目の前に分からないものがあれば知りたくなるのが人間で、不躾に聞けばある程度はあずき先輩でも答えてくれるのかもしれないけど。
考えて、やめた。それを私が知る必要がないから。無闇に踏み込んで、自分と他人との境界線を超えてしまいたくない。
所詮私とあの人との関係は、身体だけのものでしかない。
それ以上にも以下にもなり得ない。してはいけないんだ。
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