2 初めて、でした。
第8話
先輩に連れられたのはさすがというべきか、四十階はあろうという高級マンション。
やっぱり最上階とかに住むもの?
さっさと中に入る先輩のあとを追う。頭の隅で、今逃げちゃえばいいのに、と考えながら。
紅先輩はエレベーターの五階のボタンを押した。
「五階……」
「一番上に住んでるとか思った?」
思わず漏れた呟きを拾われ、先輩の問いに目で肯定する。
「毎回上から下までってだるいじゃん? 無難だろ」
少し笑いながら先輩が言った。
さすが高級マンション。部屋の広さは想像以上。
思った以上に生活感の無い部屋だからってのもあるかもしれないけど。
それでどうすればいいのかと紅先輩を振り返れば、ちょうど電話がかかってきて先輩は面倒臭そうな顔をする。
「シャワーでも浴びてて」
バスルームを指してそれだけ言うと、隣の部屋に入ってしまう。
「浴びててって、適当な……」
家主がそう言ったんだからありがたくそうさせてもらうけど。
そしてバスルームに来たはいいけれど。向こうが連れてきたんだから、タオルとかは勝手に借りてもいいよね。
問題は上がった後よ。お風呂から上がったら私は何を着ればいいの?
学校帰りにそのままバイトに行ってたから、今着てる服以外制服しか持ってない。
下着は? 絶対無いでしょ。あったとしてどう考えたってここに来る女の人の物なわけで、勝手に借りれるわけない。
今しがた入ったばかりのバスルームを出て、鞄からメモ帳とペンを取り出す。
先輩が入った部屋の扉をノックすると、扉が開いた。紅先輩が「何?」と表情だけで言ってくる。
『お風呂上がったら私何着ればいいんですか?』
電話中だからとメモ帳に書いた文を見せれば、先輩は耳からスマホを離し。
「どうせ脱ぐから着なくてよくね?」
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