第4話【T子さんの文章】

「先生、超イケメンですね!!

彼女居るんですか?」


無邪気な質問に心の中で苦笑する。


ストレートな質問をする生徒、嫌いではな い。


積極的で何より。


賑やかな校内を、静かな気持ちで歩く。

余計な雑音は耳に入らない。



別れた妻は、自分の事を冷淡だと言い放っ た。


いつも冷静沈着で、感情が表に出ないから何 を考えているか分からない。


生徒に接している時は、別人のように、にこ やかなのにと。


元妻は、勉が新米教師の頃、教頭をしてい て、年上のしっかりした女性だった。


彼女の猛アタックに押し切られる形で、交 際・結婚に至ったのだが。


結婚生活は2年足らずで破綻した。


以来、結婚はこりごりと、気ままな独身生活 を満喫して今に至る。



恋愛もそれなりにしてきたけれど、深い仲に なりそうになると、躊躇する癖がついた。


友達には、呆れられるが、もう恋愛沙汰とは 無関係に生きていきたいと思う。


勉は、窓から校庭を走り回る元気な十代を眺 めていた。


自分に送られる、数多くの熱視線に気付く事 もなく。


彼にとって、学校は好きな事をしながら賃金 を得る場所。


それ以上でも以下でもなかった。


そして、その割り切った考え方だからこそ、 眼前の事、つまり勉強を考え、生徒を導く日々に集中できた。







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