スマホの通知音が鳴ってから2分以内に写真を投稿しないと死ぬ世界で、不眠能力持ちの俺は咽び泣く
@kamokira
プロローグ
ポロピロン! と携帯の着信音が鳴った。
アイフォンを取り出すとホーム画面には連絡が一件
ビ○リアルの通知だった。
カシャ!! とシャッターを押す。
インカメにして自分の顔を入れて、
バックの遺跡の全体像を入れながらーー
「ちょっとぉ..! 何してるの..!?」
遺跡の前を先ほどから右往左往し、俺の名を呼ぶ女性の声
「少し待ってろ!! 今あれしてるから!」
「りょうかーい!!」
俺はぶっきらぼうに返事をした後、急いでスマホに視線を落とす。
さっき撮った写真を早急に送らなければならない。残り時間は約10秒ーー
送信した。
「はぁ..」
「もう大丈夫ー??」
「大丈夫だよ」
♢
申し遅れた。俺の名前は黒田薫くろたかおるーー
年の頃は17歳、18の誕生日を翌日に控えた黒髪天パヘアーの醜男だ。
頬骨の浮き出た丸顔に、漫画のデフォルトで横一本線にされそうな程に
細く長く、それでいてつぶらな瞳にニキビだらけの肌
こんな最悪な外見的特徴を持った思春期真っ盛りの猿ではあるが、
なんと3週間前、剣と魔法の存在する男のロマン。”異世界”に転移した。
しかし肝心の見た目は変わらず誰にも相手にされない悲惨な状況下で
一人街をふらつき空腹で昏倒しかけていたそんな矢先ーー
「かおる!! とっとと動きなさい!」
永遠の17歳を自称する実年齢の程は定かではない、この金髪の
お姉様の慈悲深い御心によって救い出された俺は以来、彼女と
行動を共にしている。
のだが、、実の所俺の役回りといえば、ダンジョン内で単騎攻略も
難なくこなす彼女の重い荷物を持ち歩くくらい。
いや待てよw 異世界転移の特典で貰えるチート能力は?
と聞かれたらあるにはあると答えよう。ただ俺のは能力というより
負債で、役に立つどころか寧ろ生命を脅かす凶悪極まりないものだった。
それがこの、転移前も愛用していた何の変哲もないスマホーー
勿論異世界にウィーフィーは飛んでいないから扱える代物ではないのだが、
それでも何故かビ○リアルだけは起動する。
さて、このビ○リアルというアプリ。問題はこいつだ。
このアプリ。元々入れていたわけではなかったが、最初に異変に気付いたのは
ここに転移して初日の事。あれは確か、薄暗い路地裏の壁にもたれかかっていた
時だったかーー
ポロピロン
妙に重量感があるなと感じていた
ズボンのポケットに入っていたスマホの通知音
そしてそれが鳴った瞬間、俺は歓喜した。
チート能力が使える! 無双展開来たこれ!!
「ビ○リアル..」
しかしホーム画面に映ったのは見慣れぬ黒いアイコン。
そこに書かれていた文言を見るや否や、歓喜は絶望に置き換わった。
2分以内に写真を投稿しなさい。
さもないと貴方は死にますーー
どうやらこのアプリは、通知音が鳴った時点で2分のタイマーも同時に
作動し、その制限時間内に近くの風景、ないし自撮りを最低一枚保存、
送信しないといけないようだったーー
また厄介なのは、通知は定時刻にくるのではなく、
不定期にくること。今の所深夜はないが、早朝、夕方、昼間と
その時間帯はまちまちな手前、俺は自身のスマホを常備しないといけないのだ。
そしてもう一点。
この世界に転移して、俺はまだ一度も寝ていない。
正確に言えば、眠くならないだけだがともかく、これが俺の異世界転移の
初回特典(チート能力)だった。
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