やんごとなき血筋チートで全属性魔法と時空魔法を自在に操る僕は後の覇王となる

イ尹口欠

序章

1.早速、旅の荷造りを始めた。

 新連載です。まずは序章からのんびり進めます。


 ◆


 父が亡くなった。

 男手ひとつで僕を育ててくれた父は、優秀な魔術師でもあった。


 ――俺に何かあれば、この人を頼れ。


 そう言って残していた封筒には、少なくない路銀と手紙、そして紹介状が入っていた。

 紹介状の宛先はクレイグ・アレクシスとなっている。

 残念ながら辺境の村の外れに住む僕は、その名前に心当たりはなかった。

 ともあれクレイグ・アレクシスの居所は、同封されていた手紙に書いてあったが。


 手紙は遺書だった。

 我が息子マシューへ、この手紙を読んでいるということは、俺になにかあったということだろう、という書き出しから始まる遺書には、青春時代を過ごした王都に無二の親友であるクレイグ・アレクシスという男がいるから頼れ、とあった。


 王都への道のり……それは今の僕には険しいものだ。

 辺境のこの村から幾つもの街を経なければ辿り着けない。

 季節ひとつ分は見ておかなければならないだろう。


 早速、旅の荷造りを始めた。




 まずは地下の書庫だ。

 危険な魔導書もある書庫を放置するのは村にとって危険である。

 知らずに子供が入り込んで開けたりしたら大惨事、間違いなし。

 僕は本棚ごと〈ストレージ〉の魔術に収めていく。


 空間魔術〈ストレージ〉は亜空間に物品を収納する魔術だ。

 僕は時空属性の魔術に高い適性があり、普通の魔術師が使えないような高等魔術を幾つも使えた。

 ただその反面、普通の魔術師が使えるような一般的な魔術をやや苦手としている。


 あっという間に地下室の書物を本棚ごと〈ストレージ〉に収納した僕は、続いて旅に必要な雑貨類を購入しに村に向かうことにした。

 魔術の訓練は危険を伴う、という言い訳のもと人付き合いが得意ではない父が村はずれに居を構えているため、村までは歩いて30分ほどかかる。

 僕は面倒なのでこっそりと村近くの雑木林に〈テレポート〉で移動するけどね。




 この小さな村にある唯一の店舗であるところの雑貨屋、そこで僕はフード付きのマント、背負い袋、水袋、携帯食料、ナイフ、薄い毛布を購入した。

 店主夫婦には「父の遺言で王都まで行く」と伝えたので、このことは明日には村中に広まっていることだろう。

 狭い村だ、話題はすぐに広まる。

 僕は誰にも会わないように、気をつけながら人気のないところで〈テレポート〉で家に戻った。


 背負い袋に雑貨屋で購入したものを入れる。

 包丁、まな板、鍋、フライパン、などなど調理器具の類は〈ストレージ〉に収納した。

 小麦粉、干し肉、野菜などの食料も〈ストレージ〉に収納する。

 〈ストレージ〉内は時間が停止するので、野菜が傷むことはない。

 便利だが、人前で気軽に使えないのが難点だ。


 時空魔法が使える子供だとバレたら最悪、奴隷商人に売り飛ばされたりすることだろう。

 トラブルの種にしかならないから、村の人々にも秘密にしているのだ。

 だから僕はまだ半人前の魔術師、ということで通っている。


 朝に焼いておいたパンとありあわせのソーセージで軽く夕食を済ませたら、〈クレンリネス〉の魔術で全身を綺麗にする。

 生活魔法に分類されるが〈クレンリネス〉は難易度が高く、水属性と光属性の複合魔術だ。

 使えると使えないとでは生活の質に直結するため、頑張って習得した。

 ひとりでも生きていけるように、魔術を仕込んでくれた父には感謝しかない。


 ベッドに入る。

 明日は早速、村を出て麓の街に向かおうと思う。

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