プリースト オブ デストロイヤー

盛り塩

プロローグ 

 その出会いは最悪だった。


 ピュール教会の見習いシスター『エマ』

 彼女はいま大蛇に巻きつかれ身動きがとれないでいた。

 教会の修練として一人旅に出されていた最中の出来事だった。


 鬱蒼うっそうと茂る森の中。

 救けどころか光さえも満足に届かないこの辺境の地で、自分はこのまま一人寂しく魔物の餌になっていくのだろうか……。


 これも神様がお定めになった運命というのならば……仕方がない……。


 地面に這いつくばりつつ、そう諦めかけたとき、森の奥に人の気配を感じた。

 エマはその奇跡に目をうるませ、心の中で手を合わせた。


「ああ、神様……あなたのお慈悲に感謝いたします」


 エマは必死にその気配に向かって救けを求めた。

 気配はとくに驚く様子もなく平静にこちらへと歩いてくる。

 やがて葉の間から差し込む僅かな光に、その者の顔が照らし出された。


 黒い肌、黒い長髪、そして長い耳。

 見惚れてしまいそうなほど整った顔立ちは、彼がダークエルフと呼ばれる森の種族だと言うことを語っていた。

 長寿種エルフ族の中でも少数派といわれる有色種。

 魔力が高く、高度な魔法を使いこなすらしいが、普通のエルフ族と比べあまり良い評判は聞かない。

 そもそもほとんど世に出てこないというのもあるが、素行が悪く、多種に対して友好的ではないらしいのだ。


 しかしいまはそんなことも言っていられない。


 大蛇は締めつけを強くしてきた。

 ギリギリと身体が悲鳴を上げる。

 まずは獲物の骨を細かくへし折り、そこからゆっくりと丸呑みにする。

 これが彼らの捕食術。


 全身の骨がきしみはじめる。

 その痛みにエマの意識は薄れかかる。

 ダークエルフの男はそんな危機的な彼女を冷静に見下ろして、信じられない一言を発した。


「……救けてやっても構わないが、先に乳を揉ませてもらおうか?」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」


 もう一度言おう。

 その出会いは最悪だった。




 ダークエルフの男(主人公)キャライメージです。

 https://kakuyomu.jp/my/news/16818093084807475834


 エマ(ヒロイン)キャライメージです。

 https://kakuyomu.jp/my/news/16818093084937399884

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