File4 記念日
これは、純一がまだ9歳だったときの、4月5日の話。この日になるまで、同じ小学校に真美たちがいたということは、純一と純平は知らなかった。
「ふー、終わった終わった!」
帰りの会が終わり、教室からはどんどん生徒たちが出て行く。
9歳(小学3年生)の純一は自分の席でのびをした。
「せっかく5時間目の学活で席替えしたのに、またすみっこかよ」
教室の右(廊下側)のすみにある自分の机の上にある黒いランドセルを背負いながら、純一は文句を言った。
「兄さん」
教室の入り口に立つ純一と同じランドセルを背負った純平が言った。
「純平!またすみっこになっちゃったよ」
廊下に行った純一は純平に言った。
「良いじゃん。目立たないし」
「でも、もう3回目だよ、この席になったの」
「つまり、飽きたってこと?」
「そうそう、そういう事!」
純一は歩きながら給食袋を蹴った。
「次は違う席になると良いね、兄さん」
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「ただいまー」
純一は茂木探偵事務所のドアを開けた。
「おかえり、2人とも」
夏が言う。
机の上にランドセルを置いた2人は、公園へ遊びに行った。
「良し、遊ぶぞ!」
純一は公園にある芝生広場で、ボールを蹴った。
「兄さん、もしかしてサッカー?」
純平が聞いた。
「外遊びといったらコレだろ?」
「まあ、人によって異なるけどね」
その時、純一は思いっきりボールを蹴った。
「兄さん、遠くに飛ばしすぎ!」
この公園は大きく、園内に道がある。
純一は、ボールを向こうの方へ蹴っていたのだ。
その方向には、龍太、麗央、真美、こころの4人が歩いていた。
ボールは龍太たちの方へまっすぐ進んでいく。純一は焦った。「やばい、ぶつけたらどうしよう!」と内心思ったが、ボールが彼らに当たる前に、真美が素早くそのボールをキャッチした。
「おおっ!すごい反射神経!」
純一は驚き、思わず拍手を送った。
「おい、これお前のボール?ちゃんとしろよ!」
龍太が笑いながら言った。
「ご、ごめん!」
純一が謝ると、真美は笑顔でボールを返してくれた。
「これ、すごくよく飛ぶね。もっと遠くに蹴れそう!」
「うん、でももう少し注意しないと」
純平が心配そうに言った。
「大丈夫だよ。あの子のおかげでボールは無事だし、次はもっと上手に蹴るから!」
純一は自信を持って答えた。
「ああ、そうそう。名前、いうの忘れてた。私はこころ。こっちが龍太くん、麗央くん、真美ちゃん」
「オレ、純一っていうんだ。こっちが双子の弟の純平」
こころが自己紹介したのに続いて、純一も自己紹介をした。
その後、6人は広場の中央に集まって、サッカーを始めることになった。
純一と純平、そして龍太と麗央はチームを組み、真美とこころが対戦相手になった。
「さあ、行くぞ!」
龍太が叫ぶと、ゲームがスタートした。
最初はみんなでボールを追いかけながら楽しく遊んでいたが、だんだんと競争心が芽生えてきた。
ゴールを決めると大歓声が上がり、友達同士でハイタッチを交わして盛り上がった。
「兄さん、シュート!」
純平が応援する横で、純一は思い切ってボールを蹴り、これが見事にゴールに決まった。
「やったー!!」
純一は叫び、高らかにガッツポーズをした。
試合は続き、陽が沈みかける頃、疲れたけれども満足感に包まれた純一たちは、公園のベンチに腰を下ろした。
「いいな、サッカー。もっとやりたいな」
純一は息を切らしながら言った。
「うん、もっとみんなで遊べばいいんじゃない?」
純平も同意した。
その日は、友達との楽しい時間とともに特別な記念日として心に残るものになった。
次の日の朝。
純一と純平は昇降口で、見たことのあるような顔を見かけた。
「あの、もしかして・・・」
「あれ、純一くん?同じ学校だったんだ!」
真美が答えた。
これが、真美たちとの出会いだった。
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