俺の買った高級媚薬が消えた件
ゆずリンゴ
俺の買った高級惚れ薬が消えた
『ふんふふ〜ん』
とある一人の遊び人が鼻歌を歌い、右手に何かを持ちながら自分のパーティメンバー達が滞在している宿屋へと帰宅すると───
『ちょっと遊び人!帰宅が遅い……ってあんたそれ何持ってるのよ?』
鎧を身に纏った黒髪ロングの女―――「勇者♀」が帰宅した遊び人に声をかける。
『ん?それはひ・み・つ♡』
それに遊び人は気色の悪い返事を返していると───部屋の角から大きな三角帽を被った少女がひょいっと姿を現す。
『これ遊び人、ちゃんと我が頼んだマンドラゴラの尻尾は買ってきたのか?』
『あ、ごめん忘れてちゃった』
彼女は「魔法使い♀」。赤髪をしたロリ。
『じゃあ我が渡したお金はどうしたのじゃ!』
『……使っちゃった♪』
遊び人は気さくな返事を返す。
『このアホんだらのバカ!自分の金で買い直してこい!』
そうすると怒った魔法使いが風の魔法を遊び人にお見舞いして外に追い出す。
『いててぇ……魔法使いたら見た目は可愛いのに乱暴なんだから───っと』
身体を起き上がらせ再び魔法使いから攻撃を貰わないために遊び人はご所望の「マンドラゴラの尻尾」 を買いに再び町へと向かう。
『おっ、さっきの
気さくな何でも取り扱っているお店の店主が話しかけてくる。
『それがまだ使えてなくって……あ、マンドラゴラの尻尾ください』
『あいよ!ちょっと待っててねぇ』
『ギャイイイィィィィァァアアァァア』
店主から直接尻尾を切り取ってもらいマンドラゴラの尻尾を渡される。
『そういえば兄ちゃんに言い忘れてたが媚薬は薄めて使わないとヤバいから気をつけろよ!』
店主からの言葉に遊び人は頭にハテナを浮かべる。
『あれ俺が調合して作ったんだけどよぉ、
家の嫁さんに薄めず使ったら一日中ハッスルすることになっちまったから気をつけてくれよな』
『そうなんすね!気をつけます』
そんな店主とのやり取りを終え遊び人は再び宿屋へと帰宅する。
『おーい魔法使いマンドラゴラの尻尾買ってきたぞ!』
遊び人の大きな声に反応し魔法使いが近寄ってくる。
『うぬ、確かにマンドラゴラの尻尾じゃな。遊び人にしてはよくやった褒めてやる』
身長の低い魔法使いが背伸びをして遊び人の頭を撫でようとするが届かない。
『あい、光栄です』
そんなことを言いながら遊び人は媚薬を置いた机の元に向かうと───
『ん?あれ、無い!俺のアレがない!!』
先程間違いなく机に置いたはずの媚薬の瓶がなく無くなっていた。
『ふぁ〜 ちょっと、遊び人うるさいよ。そんな大声出してどうしたの?』
恐らく先程まで眠っていたのか欠伸をしながら部屋の奥の部屋から「僧侶♂」がでてくる。
『僧侶ちゃん!ここに置いてあった瓶知らない?』
だいぶ焦った様子で遊び人が問いかける。なにせ、お金使いの荒い遊び人が大事なヘソクリ全額をかけて買おうとしたものなのだ。
(なお、マンドラゴラの尻尾と高級媚薬は同じ値段とする。)
『瓶?僕は今起きてきたばかりだから知らないけど……っていうか、ちゃん呼びするのやめてキモイ』
青髪をした僧侶の容姿は、一見男と判別出来ないものである。
『あぁ、なんてこった!俺のアレが……無くなっちまったよ!』
そうして遊び人は頭を抱えながら1度自分の部屋へと戻った。
『はぁぁぁあ……どうしよう』
遊び人は無くなってしまった惚れ薬について頭を悩ませる。
『もし、他の皆が使ったら……ヤバイよなぁ?でも誰か使いそうな奴いたかなぁ?』
遊び人は自分の無いに等しい脳みそを回転させ考える。
『勇者ちゃんは……まぁ人のもの勝手に触らないよねぇ。やっぱり薬大好きな魔法使いが1番怪しいかな』
遊び人は自分の出した結論を信じ魔法使いの部屋へと向かう。
『魔法使いー、今部屋入ってもいい?』
部屋の奥にいるであろう魔法使いへと声をかける。
『………』
が返事はない。
すると遊び人は少し扉を開けて中を覗く───
『ンギヤァァァァ-』『モゴゴゴゴゴ』『アビィアビィ』
『ビャァァァァウマイイィイィ』
中からは恐らく先程のマンドラゴラの尻尾を含む魔物らの悲鳴が聞こえ、その部屋の中心には大きな鍋がある。
(……なにあれ?絶対ヤバいやつじゃん。
ってかマンドラゴラの尻尾って完全に死んでるのになんで悲鳴が……)
遊び人はそこで考えるのを辞め再び自分の部屋へと戻る。
『やっぱ魔法使い怖いわ〜。まぁ忙しそうにしてたし多分違うっしょ。じゃあ次は僧侶ちゃんのとこ行こうかな?やっぱあのなりでも僧侶ちゃん男だし、
そうして僧侶の部屋へと向かうが……
『ありゃ、いないか。起きたばっかりだしご飯中かな?』
そうして調理場の方へと向かうと予想は的中。僧侶が食事の調理を行っていた。
『そ、う、りょ、ちゃん♪』
後ろから遊び人が包丁を持った僧侶を抱きしめる。
『うわぁぁ!ちょっとこの
僧侶のもっともな指摘である。
『ん?それは包丁使ってなかったら抱きついてもいいってことカナ?』
遊び人は遊び
『…………』
遊び人は包丁を片手に僧侶から
『アハハ僧侶さん冗談ですってば〜。あの、実は聞きたいことがあってぇ』
遊び人は猫なで声で返答する。
『それなら早く要件を言えこの変態野郎』
僧侶の見下すような視線と言葉に遊び人は何かか目覚めそうになるも要件を伝える。
『は?瓶なんて知らないけど……いやそういえばさっき会った剣士が瓶を持ってたな』
「剣士♀」はパーティの中で最も筋肉質な身体をしており
『マジ?僧侶ちゃん情報ありがとね〜』
そうして遊び人は颯爽と剣士がいるであろう場所を思い浮かべる。
『剣士ちゃんが媚薬飲んでたらヤバイよねぇ?発情でもして暴れちゃったら誰も手がつけられないや』
そんな事を呟きとりあえず剣士の部屋をノックしてみる。
『剣士ちゃんいるかい?』
声をかえると───
『その声は……遊び人か?入ってもよいぞ』
場所が的中したようで部屋へと入る。
『よーす、剣士ちゃん。瓶もってるって聞いたんだけど……』
確かに剣士は瓶を持っていた。ただし白色の物が入った瓶である。
媚薬はピンク色をしているのでどうやら期待は外れたらしい。
『うぬ。我の力の
そんな剣士からの誘いから逃げる様に遊び人は部屋から逃げていく。
『はぁぁぁ……剣士のトレーニングは俺信じまうよ。でも媚薬どこいったんだ?』
残るは勇者のみになったので遊び人は勇者を探すことにした。
『あれぇ?勇者ちゃんどこにもいねぇや』
宿屋を回るが勇者の姿は見当たらない。 なので遊び人は勇者と1番仲の良い僧侶の元へと向かい居場所を聞こうと調理場へと向かう───
『あ、話をしてたら遊び人じゃない』
なんと調理場には勇者、いや遊び人を除く全員が集まっていた。
『な、なんでお前らみんな揃ってここに───』
目を見開いた遊び人がそう問いかける。
『なんでって、それは遊び人がボクらに聞き回ってたからだよ』
呆れた声で僧侶が答えた。
『ん?あぁ……ちょっと野暮用がな?』
遊び人が苦し紛れの言い訳をする。
『どうせこいつのことじゃ。バカみたいな物でも買ってそれを無くしたんじゃろ』
魔法使いが辛辣な言葉をかける。
『バカみたいなものって!あの媚薬高かったんだからな?……あ』
やはり遊び人は
『遊び人よ……媚薬とはなんの事だ?』
剣士から圧がかかる。
『いやぁ、その』
だが遊び人は言えない、言えないのだ。
『なんの事だ?』
より強い圧が遊び人を襲う。
『わかったよぉ。言えばいいんだろぉぉ?』
遊び人は負けた。遊び人は弱かった。
『───で、行きつけのバニーちゃん達がいるお店で使おうと思って……』
遊び人は真実を話した。
『このバカ!変態!信じらんない!』
『正真正銘のバカじゃな』
見下すような目線で魔法使いが遊び人を見る。
『ボクの勇者になんてこと教えてんだこの変態野郎!』
僧侶が遊び人の頭をポコポコ叩く。
『男ともあろうものが薬に頼るとは情けない。これは心身共に鍛えねばならぬようだな?』
剣士が部屋が自室から様々な器具を取り出す。
『あの……皆さん一旦落ち着いてこの縄を解きませんか?』
遊び人は柱に縄で縛られていた。
『『『『ダメ!』』』
◇
『はぁ、酷い目にあったわ……剣士ちゃんまじ鬼だわ』
遊び人は剣士に騎士道を身体に叩き込まれボロボロになっていた。
『でも……惚れ薬どこいったんだろうな?
まぁ少なくとも誰もおかしくなった様子はなかったしどっかの猫が持ってたのか?』
結局分からなかった惚れ薬の行方に頭を悩ませていると───
『ようやく剣士の特訓から戻ってんじゃな』
魔法使いが何かを持って現れた。
『ん?魔法使いどしたん』
遊び人は魔法使いに問う。
『いや、お前が疲れているだろうと飲み物をだな』
魔法使いの手には液体の入ったカップが握られていた。
『魔法使いは気が利くねぇ』
(ごくごく)。遊び人が 手渡されたものを口にする。
『ん!これ美味しいな?なんだろ』
すると魔法使いが口を開く。
『我が改良した惚れ薬じゃ』
───なんとそれは惚れ薬だったものであった。
『ん!ゴホッゴホッ、魔法使いお前なんても…………』
遊び人がその場で意識を失い倒れる。
『お前が悪いのじゃぞ?我というものがありながら他の女に目を向けたのが悪いんじゃ。
でも……これからは我のことしか見えなくするから安心するのじゃ。
なぁ、愛しとるぞ遊び人……』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます