海岸線の唄

八重櫻影人

前編 出会いの唄と海辺の唄

あの日、僕は海が近いおばあちゃんの家に帰省していた。

あの女の子は今でも歌い続けている。

あの場所で。



懐かしい景色が広がる。

観光客賑わう砂浜には、まさに天国のような世界が広がっていた。

都会民の僕たちはいつでも夢の光景だ。


「うわーーーー!! やっぱ海はでっけーーー!」

青春の風吹く海岸にやってきた!

「はっはっは この景色は変わらんな!いい風だ」

故郷に久しぶりに帰ってきた父さんの目は星のような輝きだった。


「お兄ちゃーーん!海入ろー!」

妹も満喫しているみたいだ。

僕らは水着になり、はしゃぎまくった。

「ウヒョーー!最高!綺麗だし、冷たいし」

「つめたっ でも気持ちいー!」

「いやーーー最高だーー!みんな海を堪能してけよ!」


楽しすぎる!

しかしこういう楽しい時間は一瞬だ。


「さあもう行くぞ!おばあちゃんに会おう!」

「ええーもう?」

「いつでも海に行けるから。また来ればいい」

「はーーい」




こうして僕らは東京の表面張力した世界から自然あふれる開放的な

世界へやってきた。

車の中は夏ソングで盛り上がり、夏休み独特の空気を堪能していた。



「久しぶりだな日向、そして夏海も!」

「おばあちゃーーん!」

おばあちゃんとは数年ぶりなのでもう涙目だ。

二人は同時におばあちゃんに抱きつき、お日様のような温もりを実感していた。

「よく来たねぇ さあご飯にしよ」

時計を見るともう5時をすぎていた。


「ちょっと遅くなった すまん」

「あら大介おかえり」

「ああ母さん ただいま」


親子の再会に立ち会い、気分は晴れやかに夕食をいただいた。

今日のご飯はお魚中心だ。(というかいつも)

「うめーー!」

「お刺身美味しい」

「くうーこの味、ビールによく合うぜー」


本当に絶品だった。

今日は疲れたのでお風呂に入り、すぐに寝た。

「おやすみーー」




その夜。ただ僕には一つの問題があった。

そうあんま慣れてない部屋とか枕じゃ寝れない問題が勃発していた。

そうこうしてるともう朝日が登っていきた。


「あら早いわね?どうしたの?」

おばあちゃんが心配そうに聞いてきた。

「ちょっと寝れなかったんだ」

おばあちゃんは少し考えながら。

「じゃあ海へ散歩してきたら?気持ちいいわよ」


ということで海にやってきた。

海の波音は僕をリラックスさせる。

あれだんだん眠くなってきた。

うとうと。



ああああああああ

何か唄が聞こえる。

天国かな?

その声は綺麗だった。もう全て投げ出していい。

そんな声で囁くように。


はっ!! 

目が覚めるとそこにはギターを持つ少女が。


不思議な空気を纏う女の子は幼く見えた。


「あ、あの。えっと。」

「あれ起きたんですね。よく寝てましたから」


ふふっと少し笑みを浮かべる。

「さっきまでギター弾いて歌ってましたよね?」

「あれ?聞かれてたか〜」


この子何者だ?赤の他人だが、なぜか興味を惹かれる。


「君の名前は?地元の人?」

「私は風歌。ここ生まれここ育ちだよ。」


「唄歌うの好きなんですか?」

「うん。ここで海を見ながら歌うのはやっぱ特別」

彼女はなぜか俯きながら答える。


「特別?」

「ここ私の死んだ場所だもん」










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る