八百屋勤めの聖女様

RINFAM

第1話

 こんにちは!!

私はとあるスーパーの青果店に勤める前向あかり!!20歳です!!


 私は地元の高校を卒業後、お婆ちゃんの知人がやってる青果店へ就職!!もともと、お野菜や果物が大好きで、家でも家庭菜園で野菜育ててたりするので、この仕事は実に天職だと思っております!!

 就職して2年。今や計量器無しでインゲン200グラムが計れたり、イモ1個の重量がなんとなく解ったりします!!…いっそ農家に勤めれば良かったかなぁ??とも思う今日この頃ですが……まあ、今の職場気に入ってるので良いかな??

 なによりここで働いていると、野菜や果物を手に取って喜ぶお客様の姿を直に見れるので、それがなにより嬉しかったりします!!


 そんな平々凡々の日々を過ごしている私ですが、実は前世は大聖女だったのです!!


 ……………あ、引かれた。


 まあ、そうだよねぇ。


 こんな夢みたいなこと言って、引かれない方がどうかしてるわ。


 自分で言っててちょっと吹いたし。


 しかしこれは真実なのです。前世の記憶が甦った時、自分でもちょっと信じられなかったけど。


 実は、前世で『大聖女』と呼ばれていたことを、私はほんのつい最近、思い出したばかりだったりする。前世の記憶を思い出しただけなら、頭でも打って現実とファンタジーがごっちゃにってるかも??と疑うところだけど、ついでに大聖女の持つ力を発現してしまったので、信じられなくても信じるほかなかった。


 その力とは、大いなる癒しの力。


 怪我はもちろん、病気すら癒してしまう、いわゆる超能力みたいなもの??いや、どちらかというと魔法かな??しかも、大聖女と呼ばれただけあって、その力はチート過ぎる威力で。


 まず、怪我なら擦り傷はもちろん、欠損すら治してしまうレベル。

 そして病気は、老衰以外で治せないものはないレベルだったりした。

 つまり、寿命でもない限り、治療できない怪我や病気はない、という冗談みたいな威力なのだ。


 しかもどうやら、魔力が無限に近い。


 ちょっと笑ってしまうチートさだ。


 この力と記憶とが甦ったのは、今世で唯一の肉親であるお婆ちゃんが、痴呆で私の名前を忘れてしまった時。

「どなたですか??」

 大好きなお婆ちゃんにそう言われた時、哀しくて怖くて私は泣きながらお婆ちゃんに縋りついた。

「やだ…忘れちゃやだぁ……!!」

 縋りついてそう願った時、癒しの力が発現した。前世の記憶と共に。

 そしてお婆ちゃんは、どうなったかというと──


「あかり~!!ちょっとお買い物に行ってくるわね~!!」

「あ~うん、気を付けてね」

 ぼんやり回想していた私の背後を、軽快に走って出て行ったのが、現在の私のお婆ちゃんの光代(82歳)の雄姿だ。

「………う~ん…元気になって良かった…けど」

 力の加減が出来なかったせいか、ちょっと若返った気がしないでもない。

 なにせ、以前は軽くボケも始まっていたし、腰は曲がって杖無しでは歩けなかったし、目も白内障でよく見えていなかった。神経痛他に持病もあれこれ持ってたし、365日、病院へ通わずに済む日は無かったくらいだ。

 なのに、大聖女の力で癒した途端、90度近く曲がっていた腰は真っ直ぐになって、白内障も痴呆も神経痛も完治し、ばかりか、入れ歯になってた歯すらも元通りになっていた。

 とはいえもちろん、大聖女と言えどさすがに若返りの力なんて持っていないから、治せたのは病気と名の付くものに限るけども。

 でも、老齢による病をすべて治癒したら、人間ってこんなに若々しくなるんだ??と、今のお婆ちゃんを見てしみじみ思ったよね。まあ、やり過ぎの感は否めないけども。何度も言うけど、仕方ないよね??発現したばかりで制御効かなかったんだからさ。


 おかげで今、お婆ちゃんはめちゃくちゃ元気だ。

 健康になって第二の人生を歩み始めたと言っても過言じゃなかった。


 もちろん、すべての病を失くしても、寿命が延びた訳ではない。

 だからいつか、お婆ちゃんとの別れの日は来るだろう。

 それは痛いほど分っていた。

 でも、どうせならこうして、人生の最後の時まで、元気でいてくれれば良いと思う。


 そのためなら私は、何度でもお婆ちゃんを癒す。

 病の苦しみから遠ざけてやりたい。

 私の身勝手な願いかも知れないけれど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る