14 地下(刀京駅)

 丸目、朝倉、追われながらやってくる。


丸目 きゃー!死んじゃうぅー!

朝倉 いいから走ってください!


 香川、秋葉、伊達、反対側から追われてくる。


香川 いくら何でも数が多いんですけど!?

秋葉 ねえ、もうみんな斬っちゃおうよ!

伊達 きりがないので却下で。


 両者、出会う。


丸目 きゃー!みなさん!ご無事で何よりです!

伊達 あなたは…。

朝倉 あれ、何でお前いんの?

香川 何でって、俺は若を助けに…。

秋葉 感動の再会のとこ悪いんだけど、これってもしかしなくても詰んでない?


 五人、囲まれる。


伊達 手を組むべきだと思いますが。

朝倉 そうですね。

秋葉 共闘だね♡楽しめそう!

香川 ってか、若、その刀…。

朝倉 これ?めっちゃ使いやすい。

香川 ちょっとそれ家宝!?

伊達 これあなたのですけど使います?

朝倉 え、いいよ。あげる。俺こっち使うから。

香川 家宝は使うもんじゃないの!

秋葉 刀は使うものだよ。

朝倉 だそうです。

香川 え、俺が悪いの?

丸目 私も戦いますよ!

伊達 あなたは隠れててください。

丸目 はーい!

秋葉 緊張感の欠片もないね。そういうの、嫌いじゃないよ♡


 乱闘。

 いかんせん敵の数が多いので苦戦する。


朝倉 邪魔!

香川 若!無茶しないでください!

秋葉 あはっ、弱い弱い!もっと楽しませてよ!

伊達 下がって!

丸目 ひゃー!死んじゃうぅー!


 武田、後ろから活路を開く。


武田 派手にやってんなあ!おいセンセイ、オウサマ!受け取れ!


 武田、秋葉と伊達に刀を渡す。


秋葉 わあ☆救世主みたい!

伊達 感謝します。

武田 さっさと片付けてこっから出んぞ。


 共闘。

 手傷を負うが何とか全員斬り伏せる。


香川 お、終わった…?

朝倉 …はぁ。

秋葉 ねえちょっと物足りないんだけど~。

伊達 増援はもうないですよね。

武田 ねえだろ。

丸目 はぁ~怖かった。


 拍手の音。

 海人が現れる。


海人 素晴らしいよ!君たち!面白いものを見せてもらった!


 全員の視線が海人に集まる。


朝倉 …何であなたがいるんですか。

香川 海人さん…。

伊達 …朝倉海人。

武田 …。

秋葉 君、誰?

海人 初めまして、久しぶり。この場を借りて名乗らせていただくなら、どの肩書が相応しいかな?

丸目 み、みなさん…?

海人 しっかり記事にしておくれよ、キャスターの君。俺は朝倉海人。朝倉家の、正真正銘の長男であり、後継ぎでもある。水海を取られた間抜けな弟が、今は家長として居座ってるけどね。

香川 なぜです、海人さん!朝倉家の栄華を奪った帝都に、なぜあなたが!

海人 香川くん、君は少し純粋すぎる。今の朝倉家は酷い有り様じゃないか。出来損ないの次男のお陰で。君だって、何も思わないわけじゃないだろう?

香川 それは…。

朝倉 くだらな。

海人 そう言えるのはお前が恵まれてるからだ、愚弟。でも安心して。俺が全部なかったことにしてあげる。あの町ごと。そして新たに作り直すんだ。今度こそ、朝倉家の栄華を取り戻すために。

伊達 …殲滅作戦の実行は、お前の指示か。朝倉海人。

海人 やあ、参謀くん。今は神父になったんだっけ?

伊達 またしてもお前は、罪なき人々を傷つけるつもりか。

海人 強い者が生き残るべきだ。ノアの箱舟も全員は乗せられない。乗れなかった人は、そこまでの運命だったんだよ。

武田 …。

秋葉 誰だか知らないけどさぁ、ボクたちに勝てると思ってるんだ?そんなに強いの?自信があるの?

海人 もちろん。君たちは強いけど、俺より弱いもの。

丸目 み、みなさん…?落ち着いてくださいね…?

朝倉 あなたは危ないから下がっててください。

丸目 はいぃ…。


 丸目以外の五人、戦闘態勢。


海人 やる気は十分、でも体力は限界。どこまで遊べるかな?


 殺陣。

 海人は薙刀。

 五人は先ほどよりも動きが連携している。

 海人、武田を蹴り飛ばす。

 武田、蹲って動けなくなる。


香川 考え直してください、海人さん!

海人 考えた結果だよ、香川くん。


 海人、香川の刀を弾く。

 香川の刀は海人を狙っていた朝倉に向く。

 香川、咄嗟に刀の軌道を変えるが間に合わず、朝倉の左腕を斬る。


香川 潮!

朝倉 …。

海人 あと二人。


 香川、朝倉、戦線離脱。

 海人、薙刀を変形させ二刀になる。


海人 意外と耐えるねぇ、神父くん?

伊達 軍人上がりを舐めるな。

海人 別に舐めてるわけじゃないけど、さ。


 海人、伊達を執拗に攻める。

 伊達の動きが徐々に鈍くなる。


海人 やっぱり。

伊達 …。

海人 左足。


 海人、伊達と鍔迫り合いになった刀を無理やり押し込む。

 伊達、押し負けて転び、立ち上がれない。

 秋葉、二人の間に割って入る。


秋葉 今は助けてあげる♡

海人 君は一番厄介そうだな。


 海人、秋葉の一対一。


秋葉 君からは歪んだ愛の匂いがする。神父様の甘ったるいのとも、武田の苦くて食べられないのとも違う、一番ボクの口に合いそうな匂い。ねえ、君の愛を教えてくれる?

海人 愛、ね。俺のこれを君は愛と呼ぶのか。

秋葉 それ以外に何があるの?


 秋葉、海人の刀を一振りはじき落とす。


海人 おっと…。

秋葉 君が守りたいものは家?それとも歴史?伝統?ボクにはどれも違うように見えるんだけど?

海人 初対面相手に好き勝手言うねぇ。

秋葉 ボクにはわかるよ。酔っ払いそうになるほど心地良い、愛の匂い。ボクが一番ほしいもの。どんなに頑張っても手が届かない、お月様みたいに輝いてる、お菓子を買ってもらえない子供みたい。

海人 …。


 アナウンスが流れる。


車掌 まもなく、一番ホームに、地上行きの電車が参ります。お乗りのお客様は、一番ホームまでお進みください。

丸目 大変です!みなさん!


 武田、煙幕を張る。


武田 …駅はこっちだ。着いてこい。

秋葉 ざーんねん。時間切れ。

海人 …早く行きな。どうせまたすぐにやりあえる。

秋葉 本当?楽しみにしてるね♪


 海人を残して全員去る。


海人 愛、ねぇ。


 海人の姿は煙に飲まれる。

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