第二章

09 ラジオ

 無駄に豪華な部屋。

 壁には何かの賞状や勲章が飾られており、棚にはトロフィーやメダルが飾られている。

 書類が山積みの机と椅子があり、武田が机に足を乗せて座っている。

 机の上にラジオがある。

 放送が聞こえる。


丸目 刀の都、刀京にお住まいのみなさーん!こんばんにゃー!さてさて、今日は趣向を変えて、ラジオでお送りしていきまーす!今の刀京は危ないですからね!みなさんも、刀をお持ちでない方は特に、お外には出ない方がいいですよー!それでは、皆さんお待ちかね、政府の動向についてお知らせしまーす。先日行われた、刀京制圧作戦、それによってゴールデンパレス、朝倉家、斎庭の三つの地区は指導者を奪われ、炎獄は解散命令を出され、ほぼ壊滅状態になっているわけですが!なんと!嬉しいニュースです!いいですかみなさん、彼らはまだ生きています!ということはですよ!今の政府から派遣された指導者がのさばって…もとい、クソ野郎どもに好き勝手されているこの状況を、打開できるかもしれないということです!…え?そんなおおっぴらに悪口を言っても大丈夫かって?心配ご無用、この周波数をご存じなのは刀京に住んでいるみなさんだけですので!とはいえ、私も命が惜しいので、しばらくは放送をお休みしたいと思います!今度みなさんとお会いするときは、もっと嬉しいニュースをお届けしたいですね!それまでは、不本意だと思いますが、帝都が放送してる面白くも何ともない偏見たらたらのニュース番組で、情報を収集してくださいねー!それでは、みなさん、またお会いしましょう!さよならにゃー!


 武田はラジオの周波数を変える。


総理 えー、わたくしとしましては、この地域にですね、戦国時代に豊臣秀吉公から発令されました廃刀令がですね、未だに及んではいないと、まあ、そこには必然性のある歴史的背景があったわけでございますが、平和な世の中になったこの現代においてもですね、刀の所持を許しているのはいかがなものかと、ここにお住まいのみなさまもですね、日々、刀という恐怖にですね、怯えて暮らす生活とは、縁を切るべきであると…。


 足音がする。

 武田はラジオを切り、机から足を下ろす。

 扉を開け、総司令が入ってくる。


総司令 おや…部屋を間違えたかと。

 武田 安心しな。正真正銘、あんたの部屋だ。

総司令 随分とご不満のようだね?

 武田 当然だろ。


 武田、立ち上がり総司令に詰め寄る。


 武田 何で俺らまで謹慎処分なんだ?

総司令 気を悪くしないでくれ。刀、もとい武力を放棄するという建前上、君たちも同等に扱わねばならない。

 武田 刀京制圧を機に軍隊も解体しますってか?寝言は寝て言え。

総司令 解体ももちろん建前だ。軍は名称を変えて残る。君もその中に入っているよ。

 武田 …そりゃ、ありがたいこって。

総司令 だが、このままでは一部隊の隊長を任せることはできない。

 武田 信用できねえってことだろ。いや、むしろ反乱因子ぐれえに思ってんのか?

総司令 君は、どうやらあの古い神社に執着しているようだからな。

 武田 どいつもこいつも、他人の趣味に首突っ込むのが好きだな。

総司令 いやいや、私は何とも思っていないが、良く思わない連中もいるということだ。知っての通り、組織とはそういうものだ。


 総司令、椅子に座る。


 武田 …で?俺に何をさせる気だ?

総司令 元、政府軍の参謀を殺せ。一度はしくじった仕事だ。二度目はない。

 武田 はっ、あんたならいつでも適当な犯罪作って殺せんだろ?

総司令 それを上回る頭を持っているから厄介なんじゃないか。

 武田 あのセンセイは頭だけじゃなく腕も立つぞ。

総司令 君が負けると?

 武田 …まさか。

総司令 彼は南の地下牢だ。武器庫から好きなものを使って好きにやるといい。あぁ、あの妖刀なんかお似合いじゃないか?

 武田 銀家の家宝か。

総司令 幽霊だのあやかしだのを信じるわけではないが、そんな噂が立つほどの刀、ということだろう?

 武田 そうかもな。

総司令 気をつけたまえ、武田君。君はもう誰かに出し抜かれる立場にいる。飼い犬に手を噛まれないようにな。良い結果を期待しているよ。


 武田、刀を担いで部屋を出る。


武田 手ぇ噛まれんのはお前だよ。


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