刀京事変

チヌ

第一章

00 刀京

 四人がお互いの首に切っ先を突きつけている。

 誰も何も言わない。

 間。

 暗くなると同時に街の雑踏。

 巨大なテレビのスクリーンに映っている丸目。

 それを見ている四人の影。


丸目 こんばんにゃー!刀の都、刀京にお住まいのみなさーん!夜の刀京ニュースのお時間です!さて今夜は刀京特集第九弾!過去に発せられた「廃刀令」の影響が及ばなかったこの街に住む方々に、私、丸目が直接インタビューして参ります!その前に、天気予報のお時間です!東の地区、炎獄は晴れ。最高気温は過ごしやすいくらいでしょう!西の地区、朝倉家も晴れ。最低気温は過ごしやすいくらいでしょう!南の地区、ゴールデンパレスも、もちろん晴れ。いつも通りの熱気で最高気温は上がる見込みです!北の地区、斎庭も晴れております!全部晴れですね!素晴らしいです! 明日はとってもいい一日になりますよ!さて、そろそろインタビューのお時間ですね!今夜は誰にお話を聞こうかなー。


 丸目、マイクを持って一人に近づく。


丸目 あっ!まずはあそこの派手な服を着たお兄さんにお話を聞いてみましょう!こんばんは!

秋葉 あはっ、見つかっちゃった?

丸目 お兄さん、派手ですねー!あっ、もしや南の地区「ゴールデンパレス」の!

秋葉 王様でーす♡

丸目 今日は女の子たちと一緒じゃないんですか?

秋葉 オシノビ、だからね。

丸目 そうなんですね!みなさん、ゴールデンパレスがどんな場所か覚えてますか?そう、お酒とお金と女の子の街ですよ!なんて自堕落!ではではお兄さん、テレビの前にいるみなさんに一言お願いします!

秋葉 みんなやっほー、退屈な毎日に潤いが欲しくなったら、ボクのとこに遊びに来てね♡

丸目 ありがとうございます!さて、次は、あっ!そこの眼鏡のお兄さんに聞いてみましょう!こんばんは!

朝倉 え。

丸目 素敵な袴ですねー。もしかしてお兄さん、西の「朝倉家」の?

朝倉 まぁ、はい。

丸目 やっぱりそうなんですね!みなさん、これは永久保存版ですよ!今すぐに録画ボタンを押すべきです!朝倉家は格式高いおうちで、先祖代々、日本の伝統と剣術をずーっと守り続けてるので、地区の外には滅多に出てきてくれないんですよ!ラッキーですね!テレビの前のみなさんに一言お願いします!


 朝倉、ピースする。


丸目 ありがとうございます!


 香川、走って出てくる。


香川 若!こんなところで何やってるんですか!

朝倉 え、駄目?

香川 駄目ですよ!眼鏡じゃ変装になりませんから!ほら!


 香川、朝倉を引っ張って去って行く。


丸目 いやー、とっても貴重な時間でしたねー!私も感動しております!では続いて…あっ、あそこのガラの悪いお兄さんにお話を聞いてみましょう!こんばんは!

武田 あ?

丸目 その返り血がよく似合いそうな軍服!お兄さんはもしかしなくても、東の「炎獄」の方ですね!みなさん、炎獄は政府直属の軍隊なんですよ!正式名称は、何でしたっけ?

武田 政府直属第九護衛隊。

丸目 ありがとうございます!…あっ正しくは政府直属軍援護第九部隊だそうでーす!お兄さんはそこの所属なんですか?名前間違えられてましたけど。あー!まさか本部の方とかですか?

武田 援護班の方です。

丸目 なーんだ、やっぱり炎獄の方じゃないですかぁー!あっ、というかお兄さん、部隊長さんですよね!?駄目ですよー、自分の隊の名前間違えちゃ!

武田 よく似てるっていわれます。

丸目 またまたぁ。この私の目は誤魔化せませんよー!その飢えた獣のような鋭い目つき!その見た人たち満場一致のガラの悪さ!まごうことなき隊長さんです!

武田 うるせぇな!うぜぇんだよさっきから!さっさと消えろ!

丸目 あーっ!ご覧になりましたかみなさん!本性現しましたよー!これぞ炎獄魂です!いいですねー、熱いですねー! 


 武田大きく溜息をついて去る。


丸目 あっ!ありがとうございましたー!さて、お次は…あっ、そこの素敵な杖をついたお兄さん?にお話を聞いてみましょう!こんばんは!

伊達 こんばんは。

丸目 ご挨拶ありがとうございます!お兄さんは、朝倉家とは違うみたいですね。あっ、もしかして北の?

伊達 ええ、斎庭の者です。

丸目 みなさん!頭の良いところですよ!斎庭はいろんな知識と情報が一挙に集まる学術都市なんです!お兄さんは何を勉強しているんですか?

伊達 私は神の教えを広めているのですよ。

丸目 あっ、児童養護施設の神父様だったんですね!ということは、斎庭で一番頭が良い方ですね!テレビの前のみなさんに一言お願いします!

伊達 神のご加護がありますように。

丸目 ありがとうございます!今日のインタビューは図らずも、四つの地区を治める頂点の方々にお話を伺うことができましたね!いやー、運が良かったです!さて、そろそろお別れの時間になってしまいました。報道員は私、丸目がお送りいたしました!それではみなさん、またお会いしましょう!さよならにゃー!


 丸目、手を振りながら去って行く。

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