殺し屋のツンデレ幼馴染がヤンデレ化して困ってます! この激重感情、受け止めきれません!
あばら🦴
第1話 幼馴染の栄美ちゃん
出会いは小学一年生の頃。そして仲良くなったのは一度目の席替えの時以降。私の前の席が
算数の授業で分からないところがあって、それで栄美ちゃんに話しかけたのが、私たちの関係の始まり。同じ女の子同士だから話しやすかったんだと思う。
……ここまで覚えてるのは、たまに栄美ちゃんがその時の話をするおかげ。
小学生ながらに栄美ちゃんは大人びていると感じてた。私はそんな栄美ちゃんと一緒にいることが多くて、私の他の友達と比べても栄美ちゃんとは特別に仲が良かったと思う。先生はそれを見てたのか六年通して同じクラスだった。
ただ、栄美ちゃんは私を少し小馬鹿にした話し方をよくしてて、そしていつも私より栄美ちゃんが上の関係のようだった。
例えば小学六年生の頃、私が栄美ちゃんを家に呼んで一緒に宿題をしている最中に、栄美ちゃんに分からない部分を聞いた時。
「
「うん。分数のかけ算のやり方分かんなくなっちゃって。教えてくれない?」
「しょうがないな、もう。私の勉強が全然進まないんだから。早く見せてよ」
──────
「───それでこうなるから、かけ算したら答えが出るでしょ」
「あ、ほんとだ! ありがとう!」
「全く、晴香はとろいよ。こんなところ教えてもらうくらいじゃ、今度のテスト危ないんじゃないの?」
「そ、そうだよね。ごめん」
「……でも私のおかげで助かったよね。分かんないとこ教えてもらったんだから。私がいてよかったでしょ?」
「え? うん! 栄美ちゃんと友達でよかった!」
「はいはい。私にとっちゃ晴香は手間がかかって大変だよ」
栄美ちゃんがこんな風に話すのは私相手にだけだった。他の人に対しては基本的に当たり障りなく、落ち着き払っていて大人びた風に接していた。
勉強も運動もそつなくこなしちゃう栄美ちゃんは人気者でモテてたっけ。クラスの中心人物ではないけど、憧れの部分で惹かれる子が多かったんだ。だけど栄美ちゃんはよく私とつるんでくれていた。
あんな口調だけど栄美ちゃんはいい子なんだ。なんだかんだ私の頼みは聞いてくれるし、なんだかんだ私を気遣ってくれる。
中学に上がって数ヶ月経ったある日、栄美ちゃんは驚くべき告白をしてきた。一緒に歩いていた帰り道でのこと。話の中で急に喋るものだから、驚きというよりは思考がフリーズしてしまった。
「───私、実は殺し屋の家系なの。だから私も殺しの訓練を受けてるんだよね」
「……え? ……どういうこと?」
「なによその顔は。本当のことだよ」
到底信じられない話だったし、栄美ちゃん以外の人が言っていたら冗談かアニメの影響みたいなものだって思っただろう。
だけど栄美ちゃんがそんな冗談を言うとは思えない。だけどその話を信じるのは難しい。
私は冗談めかして笑うのか、それとも受け入れていいのか分からず、「あ、あはは」と中途半端な反応をしてしまった。
「気になるの? どんなことしてるか」
「もちろんだよ。というかごめん、本当かも分かんないし……」
すると栄美ちゃんは「アホな晴香にも分かる証拠見せるから」と言って私を栄美ちゃんの家に誘ってくれた。家には度々遊びに来てたけど、いつもは栄美ちゃんの部屋以外にはあまり足を運んでいなくて、地下室があるって聞いた時はなんだか非日常感のワクワクを味わった。
コンクリートの壁と柱が目立つ地下室は家の敷地と同じ広さがあった。隅には木製の棚がいくつかあって、なんとそこには大小様々な刃物や銃が置かれていた。
「えっ、なっなにこれ!? 銃は本物なの?」
「銃は練習用のエアガンだよ。だけど重さは本物に似せてある。本物の銃で訓練するのはたまに、山奥とかでやるんだよ」
「へぇ……! これの訓練とかもしてるの?」
言いながら私が手に取ったのは短剣だった。
「してるけど、使ってるとこ見たいの?」
「うん。できれば」
「はぁ? 見世物じゃないんだけど」
「あ、ごめん。嫌ならいいんだよ」
「またそんな顔しちゃって。はいはい、分かりましたよ見せればいいんでしょ見せれば。晴香サマのためにお見せしますよ」
「えっ? いいの!?」
「特別なんだからね」
栄美ちゃんは地下室の中央で、まるで舞のような体術の数々を披露した。腕や脚のしなやかな動作と攻撃のキレは、それだけでも相当な鍛錬があることが分かり、栄美ちゃんが殺し屋としての訓練を受けている話も説得力があって受け入れられた。
もっと言えば栄美ちゃんは全く呼吸が乱れないのだ。あれほどの動きをしてブレのない無表情を貫いていた。……けど終わった後、肩は結構上下に動いてたような?
五分くらいの一通りの動きが終わった後で、私は自然と拍手をした。
「わ、すごい! かっこいい!」
「ふぅ。こんなのなんでもないよ。驚きすぎ」
「なんでもなくないよ。……でも殺し屋の訓練ってことは、栄美ちゃんも誰かを殺しちゃうの?」
「いつかはね。まだ任務はやってない」
「そんなっ、ダメだよ! 危ないし、栄美ちゃん捕まっちゃうよ!」
「世間知らずのお子様だね。晴香が思ってるほど単純じゃないんだよ。この家に産まれた時点で、私はそうしなきゃいけないって決められてるの」
「だからって、栄美ちゃんが人殺しなんて!」
「じゃあ晴香がなんとかしてみる?」
そう言われて私は言葉に詰まってしまった。それでもなんとかひねり出した言葉は、あんまり固まってないあやふやなものだった。
「それは……、できないけど……。でもそんなのって……。栄美ちゃんいい子なのに、かわいそうだよ」
「はぁ……。ずっと晴香の頼みとかわがままとか聞いてきたけどこればっかりは無理だよ。無理。本当は私が殺し屋だって知られるのもマズいんだから」
「えっ、私はいいの?」
「どうしてもって言うから仕方なく、本当に特別に連れてきたんだよ。分かってると思うけど、他の人には絶対言っちゃダメだからね。晴香死ぬかもしれないよ」
その言葉に恐れおののいた私は「も、もちろんもちろん」と首を縦にぶんぶんと振った。
するとおもむろに栄美ちゃんが「と、ところでさ」と話を切り出してきた。……かと思えばなにやらもじもじし初めて一向に口を開いてくれない。
「どうしたの?」と私は聞いた。
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