第116話 混乱

帝国の後方基地では緊張が張り詰める中、一人の帝国兵士が命からがら帰還しました。彼の顔は血の気が引いており、息は乱れ、恐怖に満ちた表情をしていました。上官の前に立ち、震える声で報告を始めます。


「ほ、報告します。最前線の基地は敵の奇襲により…破壊されました!」


その言葉を聞いた瞬間、上官の顔に驚愕の色が広がります。信じられないという表情を浮かべ、激しく問い詰めました。


「なんだと!?どうしてそんなことが起こったのか説明しろ!」


兵士は必死に状況を説明しようとしますが、恐怖でうまく言葉が出てきません。それでもなんとか続けます。


「食料も、通信機器も…すべて破壊されました。」


上官は怒りと焦りを抑えながらも、もう少し冷静に詳細を求めます。


「もう少し状況を詳しく知りたい。最初にどのような奇襲にあったのか説明してくれ。」


兵士は深呼吸をしてから、できるだけ正確に答えようと努めました。


「はっ、最初に鶏型のクレストンの新型兵器が…」


その言葉を聞いた上官は、思わず兵士の言葉を遮り、困惑した表情で尋ねました。


「すまない、真面目に話してくれないか?」


兵士は震えながらも、そのまま正面を見据え、必死に訴えます。


「私は至って真面目であります!」


その真剣な表情と震える声に、上官は思わずため息をつき、理解を示そうと努めます。


「そ、そうか、すまない。話を続けてくれ。」


兵士は緊張を少しだけ解き、続けて報告を再開しました。


「はい、前方でクレストンの新型兵器が暴れて…それに気を取られているうちに後方から襲撃を受けた模様です。さらに、敵は我々の防御魔法を貫通する魔道具を所持しており、対応が遅れて部隊が壊滅しました。」


上官の顔は次第に青ざめ、絶望感が押し寄せてきました。次に気になるのは、すでにクレストンに入り込んでいる部隊との連絡状況です。


「クレストンに入った部隊との連絡はつかないのか?」


兵士は首を横に振り、無力感をにじませます。


「はい、通信機で呼びかけているのですが…うんとも、すんとも反応がありません。」


その報告を受け、上官は冷静を装いながらも、心の中では焦燥感が募っていました。彼は部下を静かに下がらせ、感謝の言葉をかけました。


「そうか、ありがとう、君も疲れただろう。下がってくれたまえ。」


部下が退出した後、上官は一人取り残され、椅子に深く座り込んで頭を抱えました。彼の心には、絶望と恐怖が渦巻いていました。


「30万の部隊だぞ…上にどう報告したらいいんだ…」


彼の声はもはやかすかに震えており、未来の見えない状況に圧倒されていました。クレストンの奇襲によって帝国の強大な軍が一瞬にして瓦解しつつある現実に、彼はただただ呆然とするばかりでした。

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