第88話 託す

一馬は、日中の忙しい仕事の中で太刀を持て余してしまうことに気付きました。この名刀「讃岐守藤原安綱」を適切に扱うには、彼自身が時間を割くことが難しいと感じたのです。そこで、一馬は冒険者ギルドで「太刀を振るうに相応しい人間」を選ぶための身体テストを実施することにしました。


このテストで試されるのは単なる腕力ではなく、刀を振るう際に重要となる器用さと素早さです。数々の冒険者たちがテストに参加しましたが、最終的に選ばれたのは一人のウォーウルフでした。


ウォーウルフは、狼と人間の特徴を併せ持つ獣人で、通常の人間よりも優れた感覚と敏捷性を備えています。彼らは夜間の戦闘や隠密行動に特に優れており、強靭な肉体と鋭い爪を武器に戦うことができます。選ばれたウォーウルフの名前は「ラグナール」。彼はギルド内でそこそこ名の知れた戦士で、冷静な判断力と優れた戦闘技術で仲間から信頼されていました。


一馬はラグナールに太刀を手渡す際、こう言いました。「この太刀を決して悪事に使わないこと。もし、この切れ味に酔いしれ、太刀の力に溺れそうになった時は、滝に打たれて身を清めることを忘れないでくれ。」


ラグナールはその言葉を真剣に受け止め、深く頷きました。そして彼はこの太刀を守り抜くことを誓い、今後も一馬の町を支えるために力を尽くすことを約束しました。

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