第55話 温泉

一馬は、完成したコテージを見渡しながら、何かが足りないことに気づきました。それは、お風呂場でした。彼はふと、温泉があればコテージがさらに魅力的になるのではないかと思いつきました。


しかし、温泉を見つけるのは簡単なことではありません。一馬は思案を重ねた末、女強盗を警察に引き渡した際に得た魔石二つを使う賭けに出ることにしました。彼は、ナビィの力を借りて温泉を探し当てることができるかもしれないと考えたのです。


「ナビィ、この魔石を使って温泉を探せないか?」一馬は真剣な顔で問いかけました。


ナビィは魔石を手に取り、しばらく考え込みました。「温泉を探す魔法は難しいけど、やってみる価値はあるわ。魔石の力があれば、地下深くに眠る温泉を見つけ出すことができるかもしれない」


一馬はナビィに魔石を渡し、彼女が慎重に魔法を唱えるのを見守りました。ナビィの手元で魔石が輝き始め、彼女は目を閉じて集中しました。しばらくして、地面から微かな震動が感じられました。


「一馬、ここから少し離れた場所に、温泉の兆候があるわ!」ナビィは目を輝かせて叫びました。


一馬はその知らせを聞いて胸が高鳴りました。「本当に温泉が見つかったのか…!」


ナビィはさらに魔法を使い、温泉が湧き出すように地面を掘り進めました。すると、温かい蒸気が立ち上り、ついに温泉の源を発見することができました。


「やった…!これでお風呂場も整った!」一馬は喜びの声を上げました。これで、コテージは温泉付きの贅沢な安らぎの空間となり、一層魅力的な場所へと生まれ変わったのです。


温泉を利用できるようにするためには、さらに設備を整える必要がありますが、一馬はこの成功に満足し、次の作業に取り掛かる気力が湧いてきました。


一馬は温泉付きのコテージを完成させるため、必要な資金を調達することを決意しました。だが、手元の資金では設備を整えるのに十分ではありません。そこで彼は銀行に行き、融資を募ることにしました。


緊張しながら銀行の窓口に向かった一馬は、担当者にコテージと温泉プロジェクトについて情熱を込めて説明しました。「このプロジェクトは、ただの宿泊施設ではありません。温泉がもたらす安らぎを提供する場所として、地域に貢献できるものです」と彼は力強く語り、事業計画の詳細を説明しました。


しかし、担当者は慎重な様子で一馬の話を聞いていました。資金が必要な理由、そしてその返済計画についても問われ、一馬は正直に自分の計画と目標を伝えました。


担当者はしばらく考え込みましたが、「実際に温泉を見せてもらえますか?」と提案しました。一馬はすぐにその提案を受け入れ、担当者をコテージへと案内しました。


温泉の湯気が立ち昇る様子を目の当たりにした担当者は、驚きと感心の表情を浮かべました。「これは素晴らしいですね。この温泉を活かせば、地域の人々にも喜ばれることでしょう」と彼は言い、一馬のプロジェクトに対する理解を深めた様子でした。


「融資を承認します。ただし条件があります。コテージを利用しない人でも、温泉の利用料を払えば温泉に入れるようにすること。この条件を受け入れていただけますか?」担当者は真剣な表情で一馬に問いかけました。


一馬は少し考えましたが、この条件が地域の人々との絆を深め、温泉の利用価値を高めると考え、承諾しました。「もちろん、その条件で問題ありません」と答え、担当者とがっちりと握手を交わしました。


こうして、一馬は新たな資金を手に入れ、温泉施設を整備するプロジェクトに全力で取り組むことになりました。温泉は、コテージを利用する宿泊客だけでなく、地域の人々にも開放されることとなり、さらに多くの人々に愛される場所へと成長していくでしょう。

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