第47話 魔力移し

討伐が終わり、フェロシアス・ウルフの遺体を教会まで運ぶことになりました。討伐隊は慎重に遺体を運び、教会の大聖堂に辿り着きました。教会では、特別な儀式が行われ、フェロシアス・ウルフの遺体から魔石を取り出す作業が始まります。


儀式は厳粛に進められ、聖なる光がウルフの遺体を包み込むと、次第にその姿は消え、遺体は小さな魔石に変わっていきました。この魔石は強力な魔力を秘めており、冒険者や魔法使いにとって貴重な資源となります。しかし、今回の魔石は一つしか作られず、討伐隊はその扱いに慎重になります。


魔法使いが魔石を手に取り、一時的にその魔力を体内に吸収する方法について説明しました。「一時的に魔力を吸収すれば、必要な時に力を発揮できます。また、魔石の魔力を他の何かに移し替えることも可能です。」と彼は言います。


これでなら一つしかない魔石でも魔力を報酬として分散させることができるのです。


一馬はその提案を聞き、一時的に魔石の魔力を自分の体に吸収し、家に帰った後にナビィに魔力を渡すことを決めました。彼は慎重に魔石を手に取り、その力を感じつつ、家への道を急ぎました。ナビィに魔石の魔力を渡すことが、どのような結果をもたらすのか、一馬は期待と不安が入り混じった気持ちで胸を高鳴らせながら、家路を辿ります。


一馬は、魔石の魔力を体内に吸収した状態で家に戻りました。彼の心臓は緊張で高鳴っており、体内に宿った強力な魔力を慎重に制御しながら、ナビィの元へと急ぎます。家に到着すると、一馬はすぐにナビィを呼び、魔石について説明しました。


「ナビィ、魔石の魔力を一時的に吸収したんだ。今から君にこの魔力を渡したいんだけど、大丈夫かな?」


ナビィは少し驚いた表情を浮かべましたが、すぐに真剣な顔つきになり、一馬の申し出を受け入れました。「大丈夫よ、一馬。私がうまく魔力を引き受けて、しっかりと管理するわ。」


一馬はナビィに手を差し出し、彼女はその手をそっと握りました。二人の手が触れると、魔力が一馬からナビィへと流れ込みます。まるで温かい光が流れるような感覚が一馬の体を駆け巡り、次第に魔力はナビィの体内に吸収されていきました。


魔力の移行が完了すると、一馬はほっと息をつきました。「これで一安心だね、ナビィ。魔力を上手く活用して、この農場や町のために役立ててくれ。」


ナビィはにっこりと笑い、「ありがとう、一馬。この魔力を使って、もっとたくさんの魔法をかけて、私たちの生活をより良くしていくわ」と答えました。


一馬はナビィの笑顔を見て、自分の決断が正しかったことを確信しました。そして、これからの生活にさらなる期待を抱きながら、また新たな一日を迎える準備を進めるのでした。

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