第36話 冷蔵庫がないの

一馬は余った鹿肉を大きな包みに詰め、町へ向かいました。鹿肉はすぐに傷んでしまうため、できるだけ早く売り切らなければなりません。市場に着くと、一馬は人々が行き交う通りの一角で売り台を設け、鹿肉を並べました。


「鹿肉、安くなってまーす! 新鮮な鹿肉いかがですかー!」と、一馬は声を張り上げました。


彼は肉が早く売れるように価格を少し安めに設定していました。「すぐに売り切ってしまわないと」と思いながら、次々と訪れる客に対応しました。通りを歩く人々も、珍しい鹿肉に興味を持ち、一馬の売り台の前で立ち止まりました。肉の質が良いこともあって、買い求める人は少なくなく、彼の予想通り、鹿肉はすぐに売り切れてしまいました。


一馬は「良かった、無事に売り切れた」とホッと胸をなでおろしながら、町の喧騒を後にして家へと戻る準備をしました。


一馬が鹿肉を売り終えて家に帰ると、ナビィが満面の笑みで迎えてくれました。「おかえりなさい! 鹿肉を売ってきたんですね。これでお金も手に入ったし、今日は美味しいものが食べられそうです」とナビィが喜んでいるのを見て、一馬もほっとしました。


その後、ナビィが中世での肉の保存方法について話し始めました。「でも、鹿肉は生鮮食品だから、すぐに傷んじゃうでしょ? だから、これからは保存方法を工夫しないとね。中世の時代では、いくつかの方法で肉を保存していたんだよ。」


「例えば、まず一つ目は『塩漬け』。これは肉を塩で覆って水分を抜く方法で、長期保存に適しているの。塩が肉の水分を引き出して、細菌の繁殖を防いでくれるんだよ。それから、干すことでさらに保存期間が延びるよ。」


「二つ目は『燻製』。これもよく使われた方法で、肉を煙で燻して乾燥させるの。煙の成分が肉に浸透して、保存期間を延ばしてくれるだけでなく、独特の風味もつくのが魅力的なんだ。」


「そして最後は『脂で保存』。これは、肉を焼いたり、揚げたりして、脂で覆って保存する方法。特に冬場に向けて、肉を長期間保存するのに適しているの。脂が酸化を防いでくれるから、肉が長持ちするのよ。」


一馬はナビィの話を興味深く聞きながら、「なるほど、これからは肉が余ったときには、そんな方法で保存してみるといいかもしれないな」と考えました。ナビィがこんなにも色々な知識を持っていることに感心しながら、次に鹿肉が手に入ったときには、早速試してみようと決意しました。

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