第18話 今は重荷、されど仲間

その日、一馬が農場で作業をしていると、どこからともなく一匹の猫が現れました。猫は痩せ細っていて、足取りも頼りない様子です。ナビィがすぐに気づき、一馬に知らせました。


「この猫、『おなかがすいた。助けて』って言ってるよ!」ナビィは心配そうに猫を見つめます。


一馬は困惑しながら、「米って食べるかな?それとも虫?」とナビィに尋ねました。


ナビィは即座に首を横に振ります。「どちらもお勧めしないわ。猫は肉を食べる動物だから、ちゃんとした肉をあげたほうがいいわ。」


一馬は一瞬考えましたが、決心して言いました。「じゃあ、米を売って肉を買ってくるよ。ナビィ、留守番をお願いできる?それと、猫の面倒も見てくれると助かる。」


ナビィは元気よく頷きました。「もちろん、任せて!」


こうして、一馬は米を売るために町へと向かい、迷い猫のために新鮮な肉を買うことを決意しました。


町に向かう道すがら、一馬はふと足を止め、先ほど目にした肉の値段を思い出していた。新鮮な肉を買うために米を売ることはできたが、その高価さに少しため息をつかざるを得なかった。


「やっぱり肉は高いな…」一馬はぼそりと呟いた。「毎回こうやって肉を買いに来るのは大変だし、いつまでも持続できるわけじゃない。いずれは自分で牛や豚を育ててみるのもいいかもしれないな。」


異世界での農業生活が軌道に乗り始めている今、一馬は将来的な自給自足の可能性を考え始めていた。牛や豚を飼育すれば、自分の手で肉を生産することができ、今のように高価な肉を買いに行く手間も省けるだろう。また、それにより農場の自立性も高まるはずだ。


「動物の世話も簡単じゃないだろうけど、今の俺ならやれるかもしれない。」一馬は決意を固め、さらに自分の農場を発展させるアイデアを頭に描きながら、再び町へと足を進めた。


一馬が肉を持ち帰り、猫に与えると、猫は目を輝かせて肉に飛びつき、夢中で食べ始めました。ほんの少し前まで衰弱していた猫が、あっという間に元気を取り戻していく様子は見ていて微笑ましいものでした。


「よかったな、元気になって。」一馬が声をかけると、猫は彼を見上げ、満足げに小さく鳴きました。その瞬間から、猫は一馬にすっかり懐き、彼の後をついて回るようになりました。


一方で、ナビィも猫に懐かれたようで、猫の顔のあたりでナビィが楽しそうに飛び回っていました。しかし、猫の方もナビィに興味津々で、小さな体にじゃれつこうとするたびに、ナビィはふわっとかわしながら「ちょっと、落ち着いてよ!」と困り顔を見せつつも、どこか楽しそうな様子でした。


「ナビィ、お前もなかなか大変だな。」一馬が笑いながら言うと、ナビィは一瞬、困った表情を浮かべたものの、すぐに笑顔に戻りました。「でも、楽しいから大丈夫!この子、かわいいもん。」


こうして、猫は新しい家族のように一馬とナビィのもとで過ごし始め、穏やかな日々にさらに温かさが加わったのでした。

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